メタボや糖尿病は中高年の病気だと思っていませんか?実は、現代の生活では20代あるいは10代の人でも糖尿病にかかる人が増加しています。さらに、世界的に見ても糖尿病は増加しており、2030年までに患者の数は倍増し3億5千万人ほどになると推定されています。今回は医師・吉澤 威勇先生による監修記事で、糖尿病の危険性と初期症状を中心として糖尿病への備え方を考えてみましょう。

目次

糖尿病とは

糖尿病とは、インスリンというホルモンの低下によって高血糖が慢性的に続く病気のことです。糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。日本では、男性では約6人に1人、女性では約11人に1人が2型糖尿病にかかっている疑いがあります厚生労働省より)。

1型糖尿病

1型糖尿病(インスリン依存型)は自己免疫疾患などが原因で発症します。インスリン分泌細胞が破壊されインスリンの産生が欠如してしまうため、発症すると継続的にインスリンの自己注射が必要となります。

2型糖尿病

2型糖尿病(インスリン非依存型)は、遺伝的要因や過食・運動不足などの乱れた生活習慣など様々な要因が原因で発症します。発症初期の場合、生活習慣の改善等で軽快することもありますが、悪化するにつれ内服や、インスリン自己注射の治療が必要となります。しかし、日常から生活習慣に気をつければ予防でき得る病気です。

糖尿病の初期症状

手を重ねる老人
では、糖尿病の初期症状を紹介します。

1.異常な喉の渇きと排尿

血糖が高くなると脳は脱水症状であると判断し、水を飲み血糖値を下げるように指令を出します。そのため、激しい喉の渇きを感じるようになります。

それに伴い頻尿、多尿、多飲をもたらします。また、尿中にタンパク質が多く含まれているため、尿に泡が立ちやすくなります

2.食事をとったのに空腹感を感じる

正常の人であれば、経口摂取したブドウ糖は体内に取り込まれます。しかし糖尿病になるとブドウ糖は吸収されにくくなり、尿糖として摂取した栄養分が体外に出るため、カロリー不足になります。その結果、食事をとったにも関わらず空腹感を感じるようになります。

3.食後数時間後にだるさや眠気を感じる

だるさや眠気は高血糖や低血糖の時に現れます。高血糖時のだるさは、インスリン不足で筋肉のエネルギー源であるブドウ糖が取り込めないことによるものです。

特に2型糖尿病の場合初期症状はしばしば無症状です。従って、症状が見られた場合は既にかなり進行した状態のこともあります。そのため、不安だと思う症状があればすぐに受診してください。

また、これらの症状がなかったとしても、健康診断の結果などで受診を勧められることがあります。その場合は、医師の指示に従ってください。

なぜ糖尿病が危険なのか?

スウェーデンで行われた32年間に及ぶ「生活習慣による死亡リスクの調査」によると、糖尿病にかかっている場合死亡のリスクが1.64倍になることが分かっています。これは、喫煙に次ぐ第2位であり、仮に喫煙もしていると死亡のリスクは3倍以上になります。糖尿病が危険な理由は、自覚症状がないまま重篤な合併症を併発する可能性が高いからです。その中でも最も主要な合併症が3つあり、3大合併症と呼ばれています。

糖尿病神経障害

最も早く発症する合併症が神経障害です。症状の現れ方は様々ですが、多く見られる症状の一つとして手足の先の痛みや痺れなどの末梢神経障害です。さらに症状が進行すると徐々に感覚が鈍くなっていき、足に怪我をしても気付かなくなります。その結果、細菌に感染し、最終的には細胞が壊死するため足を切断しなければならないこともあるのです。

その他、起立性低血圧や悪心・嘔吐、便秘下痢といった胃腸障害、さらに勃起不全といった自律神経障害の症状も現れます。

糖尿病網膜症

血糖値が高い状態が長く続くと網膜の血管が損傷し、視力が弱まります。悪化すると失明する場合もあります。また、白内障になることも多いといわれています。日本の成人の失明原因の第1位が糖尿病網膜症です。

糖尿病腎症

糖尿病腎症になると腎臓の毛細血管が損傷し、病態が進行すると尿を作れなくなります。このような状態になると人工透析を行わなければならなくなり、機械を使用して血液中の老廃物を排泄する必要があります。人工透析が必要になると週に2,3回は透析を行わなければならないため、日常生活に大きな影響を及ぼします。透析を行わなければ老廃物による毒素が全身にまわり、尿毒症症状が現れ死に至ります。現在、人工透析が必要になる原因の1位が糖尿病腎症です。

まずは食事を見直してみよう

世界保健機関(WHO)が2014年3月に1日の糖分摂取量を小さじ6杯程度(25g)とするガイドライン案を公開するなど、糖分摂取の制限を推奨しています。炭酸ジュース1缶には約40gの糖分が含まれており、1缶で1日の摂取量を超えてしまいます。糖分の摂りすぎを抑制する試みは先進国を中心に広がっています。イギリスのリバプール大学のケープウェル教授は「砂糖は新たなタバコだ」といい、糖分の取りすぎに警鐘を鳴らしています。

その他、糖尿病を予防するための食事のポイントとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 朝・昼・晩の食事はきちんと取りましょう。間食はできるだけ控えてください。
  • コーヒーや紅茶には、できれば砂糖は入れないようにしましょう。どうしても甘さがほしい場合、人工甘味料を使ってみてください。
  • お昼は、コンビニ弁当よりも手作りの弁当を持参するとよいでしょう。
  • 外食時は、洋食よりも和食を選ぶ機会を増やしてください。
  • 塩やバターを使いすぎないように心掛け、調味料・香辛料・ハーブ類をうまく活用しましょう。
  • 野菜・海藻・玄米・麦ごはん・きのこ類などから食物繊維を積極的に摂ってください。

まとめ

糖尿病の予防には、食生活の改善や定期的な運動などの正しい生活習慣が第一です。それに加え、少しでも異常を感じたら早めに検査を受けるように心掛けましょう。