理由は後程説明いたしますが、結論から言うとアルコール依存症は死に至る病です。ですから積極的に治療をしなければいけません。しかし「自分はアルコール依存症ではないか」と心配してこのページにたどり着いたのであれば、安心してください。あなたは依存症ではありません。もしくは依存症だとしても治療のきっかけは十分につかめています。アルコール依存症の患者さんは「自分は病気ではない」と言い、そのため治療が開始されることなく、放置されてしまうからです。自分はアルコール依存症であると認めることが治療の第1歩であり、肝となります。

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「精神科医に聞くアルコール依存症~治療のために、患者と家族が知っておきたいこと」はこちら>

アルコール依存症の症状

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「昨日は記憶をなくしちゃった」

「酒が抜けきらなくって、どうも仕事に集中できない」

「気が大きくなって友人を傷つけてしまった」

お酒をたしなまれる方であれば、このようなエピソードは少なからずあるのではないでしょうか。しかし、たまにある程度では片づけられないほどに頻回に繰り返すようであれば、アルコール依存症の可能性を考えなければいけません。

症状は大きく5つに分けられます。

1.依存症状

「好きで飲んでるんだからいいじゃないか」「俺はやめようと思えばいつでも止められるんだ」など言いアルコールを手放しません。それでいて「俺は依存症なんかじゃない」と自分が病気であることを認めません(否認)。

2.離脱症状

不眠、イライラ、手の震え、頭痛、けいれん発作、幻覚などアルコールが体から抜けた時にこのような様々な症状が出現することがあります。これらの症状を出ないようにするため、アルコールを切らさないようになります。

3.身体症状

肝障害は有名なところですが、そのほかにも膵炎、高血圧糖尿病、高脂血症、心筋炎、悪性腫瘍などの病気を引き起こす危険性があります。

4.精神症状

アルコール依存症の人はそうでない人と比べてうつ病を併発する危険性が高いことが知られています。その他にも認知症不安障害、意識障害、暴言暴力が目立つようになる性格変化、被害妄想などあらゆる精神症状をきたすことがあります。

5.社会的問題

飲酒運転で刑事罰を受ける、仕事がまともに行えなくなり失職する、多額の借金を抱える、などから社会的地位を失い、更にはドメスティックバイオレンス、育児放棄といった家庭内の問題から家族を失い孤立が深まります。

これらの症状が出現したり、問題を起こしたりするが、それでも飲酒が止められない。さらには離脱症状を起こさないようにするためアルコールを切らさないようにする、気分を紛らわせるため、現実から逃げるためにアルコールにおぼれるようになる。このことから更に症状や問題が悪化し、またアルコールに走る。このような悪循環から抜け出せなくなるのがアルコール依存症です。

この悪循環から抜け出せずにいると、肝硬変や悪性腫瘍、全身の衰弱などの身体症状から命を落とす危険性が高まります。また、気分障害、社会的問題などをきっかけとした自殺に至ることがあります。アルコール依存症の人が自殺する危険性は依存症でない人の6倍と言われています。更には飲酒が原因の事故(交通事故、転倒転落、溺水など)で命を落とすことも多々あります。

冒頭でアルコール依存症は死に至る病だと書きましたが、こういう理屈です。

診断

聴診器

このような症状が見られた場合アルコール依存症の可能性を考えます。

診断項目は噛み砕いて説明すると次のようになります。

  • 飲みたい、飲まなきゃいられない
  • この一杯でおしまい、ができない
  • シラフでいられない
  • 同じ量では酔えない
  • 飲むことが生活の中心になってしまう
  • 危険を承知で飲んでしまう

 

これら6つの診断項目のうち1年以内に3つ以上を繰り返すとき、アルコール依存症と診断します。

その他KAST(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト)と呼ばれる自記式テストなどを診断の補助として行うこともあります。

予防

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予防は適量飲酒を心がけるしかありません。厚生労働省は日本人の適量を1日平均純アルコール20g程度としました。この純アルコール20gというのは具体的に言うとビール中瓶1本、日本酒1合、缶チューハイ350ml1缶、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯、焼酎100ml程度です。ただし、ここで挙げた具体例はあくまで一例と考えてください。アルコールを分解する力は個人差があります。女性、高齢者、すぐ赤くなる人は、これよりも少ない量が推奨されています。また適量飲酒に加えて休肝日を設けることも予防効果があると言われています。週2日の休肝日を心がけましょう。

寝付きをよくするために寝酒をされる人もいるのではないでしょうか?寝酒はアルコール依存症への入り口です。寝付けないためアルコールを摂取するのですが、アルコールに体が慣れて同じ量では酔わなくなります。同じ量では酔えなくなるので、どんどん量が増えていきます。量が増えるので翌朝は二日酔い状態です。それでも眠れないという不安を打ち消すために寝酒をします。このような流れで寝酒をする人はアルコール依存症に陥ってしまう可能性があります。

そもそもアルコールを摂ることによって眠ることはできますが、睡眠の質が悪くなります。また、アルコールの影響で睡眠中に尿意を強く催し、中途半端な時間にトイレに行くはめになり、その後全く眠れない、というのがお決まりのパターンです。アルコール依存にならないためにも、寝酒は控えましょう。

精神科医に聞くアルコール依存症~治療のために、患者と家族が知っておきたいこと」では、アルコール依存症の治療法について解説します。