肝臓がんは治療を行っても再発することが多く、がんの中でも予後の悪いがんとされています。多くの肝臓がんは肝炎や肝硬変が悪化したことによって発症します。つまり、がんになる前の肝炎、肝硬変の段階で適切に治療を行えば予防できるケースも多いのです。肝臓がんの特徴については「肝臓がんってどんな病気?他のがんにはないその特徴とは」をご覧になってください。 ここでは肝臓がんにならないための予防法、そして、肝臓がんになってしまったときの治療法について見ていきましょう。

目次

肝炎ウイルスへの感染を調べる血液検査

肝臓がんの約9割はB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの感染が原因です。そのため、肝臓がんを防ぐには肝炎ウイルスに感染していないかを血液検査で確認し、リスクを把握しておくことが大切です。

B型肝炎ウイルスへの感染は性交渉などによっても起きますが、そのほとんどは母子間感染によるものでした。過去のC型肝炎ウイルスへの感染は、輸血や血液製剤を通じての感染がほとんどです。B型、C型ともに現在では感染防止の対策がとられているため、新たな感染は非常に少ないとされています。注意が必要なのは、肝炎ウイルスに感染したまま長年気づかないで過ごしている人です。

肝炎、肝硬変、肝臓がんの検査と治療は消化器科で受けることができます。

肝臓がんのリスクを軽減するためにはコーヒーが良い?

コーヒー

肝炎ウイルスの他にも、飲酒や喫煙も肝臓がん発症のリスクを高めます。特に、肝炎によって肝機能が低下し始めている場合は、すぐに生活習慣を見直すことが大切です。

また、肝臓がんはコーヒーをよく飲む人の発症率が低いというデータがあります。コーヒーをほとんど飲まない人のリスクを1とした場合、週に1~2日飲む人で0.75、1日1~2杯飲む人で0.52、1日3杯以上飲む人で0.24というようにリスクが低下しています(多目的コホート研究より)。

ただし、どうしてコーヒーをよく飲む人の肝臓がんの発症率が低いのかは、まだ分かっていません。コーヒーに含まれるカフェインや抗酸化物質に予防効果があるのではないかという推察もありますが、更なる研究が待たれています。

肝臓がん予防のためには、飲酒、喫煙はマイナスに働きますが、コーヒーはプラスに働きます。

肝臓がんの治療方法は?

医師と患者と

次に肝臓がんを発症してしまった場合にどのような治療が行われるのか、代表的なケースを見ておきましょう。

第一選択となる肝切除術

肝臓は生命活動にとって非常に重要な働きを担っているため、治療によって肝機能を損なわないように注意が必要です。

治療法の第一選択は、外科手術によって肝臓がんを取り除く「肝切除術」です。肝臓の働きが比較的良好で、がんの数が少ないなど、手術後も肝機能を温存できることが条件となります。

体への負担を抑えられるラジオ波焼灼療法

近年、積極的に行われているのがラジオ波焼灼療法です。この治療では、肝臓がんの細胞に直接針を刺し、針の先端から出るラジオ波の熱でがん細胞を焼くことで死滅させます。通常の外科手術がお腹を大きく切開する必要があるのに対して、ラジオ波焼灼療法では針を刺すだけで済みます。

出血も抑えられ、周辺の組織への影響も少なく、体への負担が少ないという意味で低侵襲治療(ていしんしゅうちりょう)といわれています。ただし、大きさや個数、血管の巻き込みなどによって治療困難な場合もあります。

がんを兵糧攻めにする肝動脈塞栓療法

最後に、肝機能が良好でない場合の治療についても触れておきましょう。肝動脈塞栓療法は、肝臓がんを言わば兵糧攻めにする方法です。

治療には狭心症心筋梗塞の治療などに使用するカテーテルを用います。カテーテルは管状をしており、血管を通じて目的の臓器に送り込むことができます。肝動脈塞栓療法は、がん細胞が栄養や酸素を得ている「肝動脈」にカテーテルを通じて抗がん剤やゼラチンなどの薬液を注入し、血流を止めることができます。がん細胞は栄養と酸素不足で死滅しますが、正常な肝細胞については「門脈」から血液が供給されるので受けるダメージは少なくて済みます。

まとめ

肝臓がんを防ぐには、他のがんの場合と同じように、飲酒や喫煙を控えて規則正しい生活を送ることが重要です。一方、肝臓がんには、9割が肝炎ウイルスによって発症するという大きな特徴があります。そのため予防においては、肝炎ウイルスへの感染を調べることが何より重要です。肝臓がんを発症してしまった場合でも、早期に発見できれば負担の少ない治療を選択できます。肝臓がんの予防と治療は、適切な医療機関の受診が鍵を握るのです。