子宮筋腫は誰にでも起こりうる女性特有の病気です。特に妊娠・出産に関係する大切な臓器である子宮の病気となると、治療に踏み切るのも、女性としての生き方を左右する苦渋の選択になることもあります。今回は、子宮筋腫の検査・治療、予後について説明していきます。

子宮筋腫はどのような病気なのか、その原因や症状については「子宮筋腫って何?原因や初期症状とは」の記事をご覧ください。

目次

子宮筋腫の検査ってどんなことをするの?

自覚症状がある場合や健康診断などで指摘され精密検査が必要となれば、婦人科を受診し相談しましょう。

まずは、問診で自覚症状や月経の状態を確認します。
問診の次は、内診です。膣鏡といわれる膣を広げる器具を使用し、指を入れて直接触り、子宮筋腫の有無や位置・大きさを調べます。超音波検査でも筋腫の大きさや数、位置などを知ることができます。
治療が必要な子宮筋腫や超音波検査でも診断が難しい場合は、後日MRI検査を実施することもあります。
また、過多月経で貧血が疑われる際は、採血検査で貧血がないか調べます。

子宮筋腫の治療と予後

手術

子宮筋腫の治療法は、経過観察から薬物療法・手術まで、選択肢はさまざまです。症状がなければ治療を必要としない場合もあります。また、これから妊娠を希望するかどうか、子宮を残すか残さないかなどで治療方法は変わってきます

1.経過観察

子宮筋腫はあるけれど自覚症状がない場合は、経過観察となることが多いです。筋腫の状態によって、3か月から1年ごとの定期検診を受け経過をみます。

また、症状を抑えれば日常生活に支障がない場合は、その症状に対しての治療(対症療法)がすすめられることがあります。月経痛や腹痛等の痛みには鎮痛剤の使用、過多月経による貧血には、鉄剤の内服や注射等が行われます。

また、漢方薬やピル(経口避妊薬)の服用でも子宮筋腫の症状を和らげることができます。
ただし、ピル(経口避妊薬)の使用中は妊娠ができないので、上手く組み合わせて使う必要があります。ピルに関しては、「ピルは本当に安全? ピルによる避妊のメカニズムと正しい飲み方」をご参照ください。

※漢方薬には妊娠を妨げる可能性があるものもありますので、必ず医師に相談の上で使用しましょう。

2.薬物療法

薬物での治療はホルモン療法となります。卵巣ホルモンの影響で子宮筋腫は成長するため、その卵巣ホルモンの分泌を薬剤で抑えることで、子宮筋腫の成長を抑え縮小させるという治療法です。薬には、点鼻薬注射があります。

ただし、人工的に月経を止め、閉経と同じような状態をつくるため、更年期症状が副作用として出現することがあります。

更年期症状に関しては「50歳前後の女性の悩みの種!更年期障害ってどんな病気?」の記事をご覧ください。

長期的に使用すると更年期のつらい症状が起こり、骨粗しょう症を引き起こしてしまう可能性もあるため、治療は最大でも6か月までとされています。また、薬物療法をやめてしまうと縮小した子宮筋腫は徐々にまた大きくなるので、根本的な治療にはなりません。

閉経まで期間が短いと考えられる場合や症状の一時的な緩和、手術までの間に筋腫を縮小させる、という目的で行われます。

3.手術

子宮筋腫の手術は、大きく分けて2つあります。子宮筋腫だけを切除する「子宮筋腫核出術」と子宮ごと摘出する「子宮全摘術」です。

子宮筋腫核出術

「子宮筋腫核出術」は、子宮を残し、筋腫だけを取るので、妊娠の希望や子宮を残す希望の強い人に適しています。最近では開腹ではなく、腹腔鏡下や子宮鏡下などの身体への負担が少ない手術も行われています。筋腫の一つ一つを取り除いていくので「子宮全摘術」に比べ出血が多いことや、核出した傷の部分に癒着が起きて、場所によって卵巣や卵管、小腸や大腸などとくっついてしまうことがあります。

子宮筋腫は複数個できることも多く、小さな筋腫は手術でも取り除くことができません。取り残した筋腫が大きくなってくることもあり、子宮がある限り、再発する可能性があります。

手術後は、約3~6か月後には妊娠は許可されるようですが、手術後の状況にもよります。手術の合併症や手術後の経過も含め、医師からしっかりと説明を受けましょう。

子宮全摘術

「子宮全摘術」は、子宮ごと全部摘出するので、月経がなくなり、妊娠は不可能になりますが、子宮筋腫の症状に悩まされたり筋腫の再発や子宮がんの心配がなくなります。「子宮筋腫核出術」に比べ、出血量も少なく、手術時間も短いです。

年齢が大きなポイントにはなりますが、パートナーともよく話し合い選択しましょう。

その他の治療法としては、子宮を栄養する血管をつめてしまう治療法(子宮動脈塞栓術)や高周波の超音波照射で子宮筋腫の細胞を焼く治療法(集束超音波治療)もあります。

妊娠への影響は

子宮筋腫があることですべての人が不妊になるとは限りませんが、子宮筋腫は不妊の原因になることもあります。実際に、子宮筋腫をもつ不妊症の女性の妊娠率は、その筋腫の大きさが大きいほど低下する傾向にあるとも報告されています(日本産科婦人科学会|不妊)。子宮筋腫が妊娠を妨げる原因は主に以下のことが考えられます。

  • 子宮筋腫があることで、子宮内膜が変形し、精子が卵子のもとへうまく運ばれないことや受精卵の着床がうまく行われない
  • 子宮がうまく収縮できず、精子が卵子のもとへ運ばれない
  • 子宮頚部に子宮筋腫があることで、精子が子宮内に運ばれない
  • 卵管のそばに子宮筋腫があることで、卵子が運ばれなかったり、受精卵を子宮まで運ぶことができない

他に不妊の原因がなく、少しでも妊娠の確率を上げるために、医師から治療をすすめられる場合もありますが、その場合もよく医師と相談しましょう。

まとめ

最近は女性の晩婚化・晩産化もすすんでおり、年齢やこれから控えているライフイベント等によって子宮筋腫の治療法は異なるため、選択肢によっては苦渋の選択を迫られることもあります。納得して治療が受けられるように、医師からしっかりと説明を受け、自分自身の希望を伝えましょう。また、家族とも十分に話し合い、選択に困った場合はセカンドオピニオンを活用するのも一つの手段です。