毎年、寒くなると流行し始めるインフルエンザ。日頃健康な若い人であっても、高熱や全身倦怠感などの症状はとても辛いものです。体力の低下した高齢者がインフルエンザに感染すると、症状が重篤なだけでなく、様々な合併症を起こすことも。今回は、高齢者がインフルエンザに感染した場合の注意点をご紹介します。

目次

インフルエンザとは

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる感染症です。

高熱全身倦怠感関節の痛みや息苦しさなどの呼吸器症状が見られ、咳やくしゃみなどを介して人から人に感染していきます。

うがいや手洗いマスクの着用により感染のリスクを減らすことと、予防接種により発症のリスクと重症化を予防することが推奨されています。

インフルエンザの予防については「【インフルエンザ】早めの予防をこころがけよう!」をご参照ください。

高齢者が感染すると

インフルエンザの発症とその症状には個人差があります。体力や免疫力が低下している高齢者や糖尿病、心臓や呼吸器などに持病があると、症状が重篤化しやすく、様々な合併症を起こしやすくなります。

肺炎(二次性細菌性肺炎)

高齢者がインフルエンザに感染した際に、最も注意しなければならない合併症は肺炎です。

インフルエンザウイルス自体が肺炎を起こすことは稀ですが、インフルエンザに感染したことによって免疫力が低下し、ほかの細菌や常在菌による肺炎を起こしやすくなります

脱水

高熱により体内の水分が失われると身体は脱水状態になります。積極的に水分を摂ることが必要ですが、高齢者は脱水の症状を自覚にしくく、加えてトイレを気にして水分を控える傾向にあります。

また、高熱や倦怠感があると、スムーズに嚥下できず、水分でもむせてしまい誤嚥しやすくなります。こうした誤嚥による肺炎のほか、尿量が減少することで、引きおこしやすくなる尿路感染症など、脱水はさまざまな合併症のリスクとなります。

認知症状の悪化

インフルエンザそのものが認知症を起こすことはありませんが、高熱や全身倦怠感などの症状は高齢者にとっては非常にストレスが大きく、理解力や判断力を混乱させることがあります。

多くは一時的な症状として回復しますが、徐々に進行していた認知症が入院治療をきっかけに急速に悪化することがあります。

高齢者のケア

ベッドに寝ている老女

食事や水分、服薬はトロミをつける

インフルエンザにより高熱や倦怠感があると食欲も低下し、水分摂取も苦痛になります。

いつもどおりに嚥下できないことも多く、食事や水分を与えるときには注意が必要です。

固いものやお餅などの飲み込みにくいものだけでなく、口の中でバラバラになるもの(芋、ゆで卵、細かく刻んだ野菜など)や、口の中に貼りつきやすいもの(レタスなどの葉物の生野菜、海苔など)、酢の物などののどを刺激するもの誤嚥の原因となります。

食事や水分にトロミをつける市販のトロミ剤服薬ゼリーを使用し、誤嚥を予防しながら食事や水分、服薬を行いましょう。

快適で安全な環境を整える

インフルエンザの諸症状により、いつもどおりに動作や歩行ができなくなるため、ベッドからの起き上がりやトイレへの歩行に介助が必要となることもあります。一時的な認知症状の低下から、夜中に一人で動き出すこともあるため、室内の足元は整理し、薄明かりをつけておき、転倒を予防しましょう。

また、過度の保温は脱水の悪化となるため、適切な室温と湿度に調整しましょう。

高齢者のストレスを理解する

症状が重篤になると入院を余儀なくされることがあります。食事や水分が摂取できず点滴治療を必要としたり、呼吸状態が悪化した場合は酸素吸入を必要とすることがあります。

こうした治療処置は高齢者にとって非常にストレスとなります

また自宅で療養する場合も、インフルエンザの症状やいつもどおりに行動できないことは強いストレスとなります。家族が心配に思うあまり、過剰に世話をしたり安静を強いたりすることはさらに混乱を悪化させます。

病気の症状や治療に伴うストレスを家族や介護者が軽減することは容易なことではありません。認識や判断が混乱していることを理解し、注意が及ばない部分をサポートしながら、いつもどおりに接することも必要でしょう。

まとめ

高齢者は体力や免疫力が低下していることから、インフルエンザに感染しやすく、症状も重篤化しやすくなっています。様々な合併症は治療を長引かせ、高齢者の生活に大きな影響を及ぼします。

インフルエンザは予防接種により発症と重篤化のリスクを軽減できます。持病がある人は、流行シーズンには必ず主治医に相談し、予防と健康管理に注意しましょう。