転倒などで軽く頭をぶつけても、たいていは俗にいう「たんこぶ」ができる程度で済みます。しかし高所から落下する、自動車の追突を受けるなどで頭部を激しく強打した場合、たんこぶだけでは済まず脳挫傷になる恐れがあります。

この記事では脳挫傷について、どんな病気なのかを説明します。

目次

脳挫傷とは

脳挫傷とは、交通事故や高所からの墜落などが原因となり、脳に大きな力が加わることで脳が崩れてしまうことをいいます。

脳挫傷は頭蓋骨にぶつかって起こるため、頭をぶつけた部分と逆側の脳に生じることが多いです。特に前頭葉(脳の前側)側頭葉(脳の横側)に多く発生します。

脳挫傷の箇所から出血し血腫を作ることがあり、また急性硬膜下血腫や外傷性くも膜下出血など、その他の頭蓋内出血が合併することもあります。

脳挫傷の症状

脳の腫れや出血がひどい場合、下記のような症状が現れることがあります。

  • ひどい頭痛
  • めまい
  • 嘔吐
  • 手足の動かしにくさ、麻痺
  • 意識消失
  • 眠気・錯乱
  • けいれん   など

脳挫傷の程度や、脳が損傷を受けた場所によって症状の現れ方は様々です。

また、怪我をした直後には無症状のこともあります
特に高齢者では症状が出るまでに時間がかかることが多いです。
頭に強い衝撃を受けた後、目立った症状がないからと言って放置することは避け、できるだけ早く医療機関を受診し検査をしてもらいましょう

診断にはCT検査を利用

脳挫傷の診断にはまず頭部CT検査を用います。頭の中で何が起きているのかを素早く知るために頭部CT検査は最適です。また、脳の損傷程度を評価するために、状態が落ち着いたところでMRI検査をすることもあります。

CTにて、出血している部位は白く映り、脳が腫れている部分はやや黒く映ります。脳挫傷は出血と脳の腫れが混在しているため、脳挫傷があれば白と黒が混在している部位が見られます(下図参照)。

脳挫傷のCT画像
(監修の田中先生よりご提供につき転載禁止)

脳挫傷と診断された場合には、治療をしていくことになります。

脳挫傷の治療

脳挫傷の程度によって、治療の方法も変わります。

比較的軽度の場合には脳圧降下薬という、脳にかかる圧力(頭蓋内圧)を下げる薬を点滴で投与し、症状の改善を狙います。

大きな血腫が見られる場合には手術によって脳挫傷を起こしている箇所を摘出します。また、脳のむくみが非常に強く意識障害が進行する場合には、点滴治療だけでは不充分で、手術によって頭蓋骨を一旦外した状態にして(外減圧術)、脳の圧力を外に逃がしてあげることもあります。その場合、状態が落ち着いた時点で再手術を行い、滅菌した自分の骨や人工の骨を戻すこともあります(頭蓋形成術)。

脳挫傷の箇所が脳への刺激となっててんかん発作を起こす危険性がありますので、受傷からしばらくの間、カルバマゼピン・フェニトイン・レベチラセタムといった抗てんかん薬を投与されることが多いです。

脳挫傷の予後と後遺症

入院時点での意識がどの程度あるかによって異なりますが、脳挫傷の死亡率は低くありません。

また、治癒したとしても一度崩れてしまった脳を元通りにすることはできないため、回復後に重篤な後遺症が残るケースが多いです。

てんかん発作が薬でなかなかコントロールできない事態に陥ることもしばしばあります(難治性てんかん)。

まとめ

脳挫傷の検査・治療は確立していると言えますが、脳が損傷した状態のため、その予後は悪く、後遺症が残ってしまうことも多いです。

脳挫傷の原因は交通事故など不可抗力的な側面があり、予防することは難しいと思います。ですが、無茶な運転やヘルメットなしでのバイク・自転車の運転など、受傷に繋がりうる行動をとらないことが、脳挫傷を未然に防ぐには重要です。

また、頭を強く打った際には早めに医療機関を受診することを考えましょう。