毎年冬になると感染が拡大し、集団感染が問題になるノロウイルス。ノロウイルスに感染すると嘔吐・下痢などつらい症状が現れます。近年は、家庭や飲食店で料理する人や食品製造に関わる人を通じて感染するケースが増えており、これらの人は大切な人をノロウイルスから守るために特に注意が必要です。今回はノロウイルスに感染しないために「ノロウイルスの基礎情報」「感染経路」「予防方法」をご紹介します。

目次

ノロウイルスとは?

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は1年中発生していますが、最も多いのが冬の感染です。牡蠣などの2枚貝を生で食べることによる感染が広く知られています。保育園や幼稚園、小学校や老人ホームなどの施設で人から人へと感染が拡大し、爆発的に流行することがあります。厚生労働省によると、ノロウイルスによる食中毒の感染者数は平成25年度で12,672人、感染事件数は328件とともに食中毒の中で第1位となっています。

ノロウイルスにかかったらどのような初期症状がでるの?

ノロウイルスに感染すると24~48時間ほどの潜伏期間のあと、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの主症状が現れます。多くの場合1~2日程度で治癒し後遺症もなく、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状にとどまる場合もあります。しかし、もともと疾患のある人や体力の衰えている人などは、死亡につながった例もあるので注意が必要です。

感染経路は?どうやって感染する?

ノロウイルスの感染のほとんどは、手指や食品を通じた経口感染(口からウイルスが入ることによる感染)であると考えられています。主な感染経路は次の5つです。

  1. ノロウイルスに感染した人のふん便や吐物に含まれるウイルスが手などを介して感染する場合。
  2. 人同士の接触によって人から人へ飛沫感染する場合
  3. 感染者が製造や調理をすることで、汚染した食べ物を食べた場合
  4. ウイルスを保有している二枚貝を生あるいは十分に加熱せずに食べた場合
  5. ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道などの水を消毒せずに飲んだ場合

この中で近年増加しているのは、3の食品取扱者を介して感染するケースです。食品製造に関わっている人、飲食店で勤務している人、家庭で調理を行う人などは特に注意しましょう。

ノロウイルスに感染したときの対応は?

ノロウイルスの感染が疑われた場合は、直ちに最寄りの保健所やかかりつけの医師に相談してください。現在は、ノロウイルスの抗ウイルス剤はないため、対症療法が行われます。特に、体力のない乳幼児や高齢者は脱水症状や体力を消耗しないように、水分と栄養補給をしっかり行うことが重要です。下痢止め薬は病気の回復を遅らせることがあるので、使用は控えるようにしましょう。

ノロウイルスを予防するには?

ノロウイルスに感染しないために重要なことは大きく分けて3つあります。

手洗いをしっかり行おう

まずは、手洗いを徹底することです。トイレに行った後、ご飯を食べる前、調理をする前などは、以下の手洗いの手順を参考にしっかりと手洗いをしましょう。

  1. 肘から下を水で濡らします。
  2. 手洗い用の石鹸をつけ、よく泡立てます。
  3. てのひらと甲を、それぞれ約5回ずつこすり洗いしましょう。
  4. 指の間や付け根も、約5回ずつ洗います。特に、親指はよく洗ってください。
  5. 手のひらを使い、指先を洗います。
  6. 手首・腕・肘を洗います。
  7. 流水でしっかりすすぎます。
  8. ペーパータオルなどで水分を拭き取ります。できれば、タオルの共有は避けましょう。
  9. アルコールを噴霧して手指を消毒します。このとき水分が残っていると効果がありませんので、前の段階でしっかりと水分を除いておくことが重要です。

手洗いの方法については、「風邪・感染症を予防しよう!正しい手洗い・うがいの方法をご存知ですか?」でも解説しています。こちらもあわせてご覧ください。

食品を加熱処理しよう

2つ目は食品の加熱です。一般的にウイルスは熱に弱く、加熱処理をすることでウイルスの活性を失わせることができます。ウイルス感染の可能性のある牡蠣などの2枚貝や魚介類は中心部が85~90℃になる状態で90秒以上加熱するようにしましょう。

この際、注意していただきたいのは食器の使用です。ウイルスの付着した食器や箸を口に入れてしまい感染した例などもありますので、加熱前の食材と加熱後の食材で使用する食器、箸は必ず分けるようにしましょう。

二次感染を予防しよう

3つ目は二次感染の防止です。

二次感染を防ぐためには感染者が使用したものの消毒と嘔吐物などの処理の2つが重要です。

感染者が使用したものの消毒

  • 感染者が使用したものや嘔吐物が付着したものは他のものと分けて消毒する。
  • 食器などは、使用後すぐに塩素液に浸して消毒する。
  • カーテンや衣類・ドアノブなども塩素液などで消毒する。
  • 洗濯は、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いし十分にすすぐ。

85℃以上のお湯で1分間以上洗浄するか、塩素液を利用して消毒しましょう。殺菌効果を高めるために高温の乾燥機を使用するのも有効です。

塩素消毒の方法などより詳しい情報は厚生労働省の「ノロウイルス食中毒予防対策リーフレット」をご覧ください。

嘔吐物などの処理

  • 使い捨てのマスク、ガウン、手袋などを着用する。
  • ペーパータオルでふき取り、塩素消毒後水拭きする。
  • ふき取った嘔吐物や使用した手袋などは、ビニール袋に密封して廃棄する。
  • 処理の際しぶきなどを吸い込まないように注意し、終了後はよく手洗いをする。

まとめ

毎年冬になると流行するノロウイルス。感染を予防し、二次感染による流行を防ぐには一人ひとりが正しい知識を持ち、感染しないように細心の注意を払うことが重要です。特に、食品に関わる仕事をしている人や家族やそれ以外の人に食事を作る人は、手洗いを徹底し、ノロウイルスの予防に努めましょう。