最近の研究ではここ十数年の間に味覚障害を持つ患者数は急激に増えていることが分かっているそうです。人間の三大欲、食欲・性欲・睡眠欲のうちの食欲は味覚を感じることで満足を得られますが、この味覚が感じられなくなると食べる喜びが失われるばかりか、腐ったものや毒物も認識できなくなり生命にとって危険であると言えます。はたしてこの味覚障害、どのようにして起こっているのでしょうか?

目次

味覚障害ってなに?

味覚障害は次のようなものがあります。

  1. 濃い味だとわかるが薄い味がわからない
  2. 味が全く感じられない
  3. 何も口に入っていないのに苦みや渋みなどの変な味がする
  4. ある味のみわからない(甘みは分かるが塩味はわからないなど)
  5. 左右いずれかで味を感じない
  6. 味の錯覚を起こすもの(甘みを苦みとまちがえるなど)

味覚障害が起こる8つの原因

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味覚障害の原因としては以下のものが挙げられます。

1.味蕾の減少委縮

味覚は舌や喉の奥の味蕾(みらい)と呼ばれる約9000個の感覚受容体が、五大基本味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)の情報を受け取り、脳に伝えることによって感じます。老化とともにこの味蕾は減少・委縮することが分かっており、高齢者の味蕾の数は新生児の3分の1にまで減少するといわれています。よって味が感じにくくなることは生理現象であるともいえます。

2.亜鉛の不足

亜鉛が不足すると味蕾細胞の新陳代謝が起こりにくくなり、味蕾の働きが悪くなります。味蕾は体の中でも新陳代謝の活発な部位であり、亜鉛が不足すると一番に影響をうける場所であると言われています。過剰なダイエットやファーストフードの取りすぎなど食生活の乱れがあると起きやすくなります。食品添加物の多い食品は亜鉛の吸収を妨げるものもあるので、ここ最近若者に味覚障害が増えているのはそれも原因として考えられます。

3.唾液分泌の低下

加齢や唾液分泌が低下する疾患(シェーグレン症候群など)によって起こります。唾液は、味の成分を溶解して味蕾へ運ぶ役割を果たしているので、味を感じるには唾液が必要不可欠です。また、唾液は味蕾細胞を保護する役割があります。

4.舌苔(ぜったい)が多量についている、カンジダ症

舌の上についている苔のような物質、舌苔が厚く大量についていたり、舌がカンジダ症で膜に覆われていたりすると味覚を感じにくくなります。

5.味覚の感覚神経がダメージを受けた

舌を支配している神経や脳の味覚をつかさどる部位が障害された場合です。

6.風邪などで鼻がつまっている

これは誰でも経験があると思いますが、鼻がつまると味が分かりにくくなります。

7.薬の副作用

血圧を下げる薬、抗生剤、抗アレルギー剤や向精神薬などの長期服用によって起こされる可能性があります。これらの薬に含まれる成分と食物中の亜鉛がくっついてしまい、亜鉛が吸収されなくなることにより亜鉛不足となってしまうのです。

また、味覚障害は抗がん剤の副作用でも起こります。抗がん剤でがんの治療を行っていると、治療前と比べて食べ物の味や食感が変化したように感じられることがあります。これは、抗がん剤によって舌の味蕾そのものや神経が障害を受けることで起こります。

8.心因性のもの

味覚はあくまで脳が感じているものなので、味覚は心因的な要素に影響を受けやすいといえます。日常生活に支障をきたしている場合はカウンセリングが有効な場合があります。

まとめ

味覚障害は若者であれ、高齢者であれ、自分で気が付いているケースは少なく、家族からの指摘でわかることが多いようです。
自炊しなくてもファーストフードやコンビニなどで手軽に食べ物が食べられるようになった現代社会、また医療の発達で寿命が延び、高齢者が増えてきたことも罹患率を増やしている要因であり、まさに現代病といえるでしょう。味覚が分かりづらく味付けが濃い物を食べると塩分過剰など、違う問題も起きてきます。皆さんもぜひ、味覚障害を引き起こすような食習慣をしていないかこの機会に見直してみてください。