目がかゆい、涙が出る、鼻がかゆい、皮膚がかゆい…特定の場所に行く、同じものを食べるといつもこのような症状が出る、という人はもしかしたらアレルギーかもしれません。20世紀以降、屋内外の環境が急速に変化し、人にとって異物と認識されるものが増加したことから、世界的にアレルギー患者は増加しています。今回はアレルギーのメカニズムから対処法までをご紹介します。

目次

アレルギーのメカニズム

免疫という言葉を聞いたことはありますか?アレルギーは、この免疫の反応が過剰になって体に悪影響を与えてしまうことです。

そもそも免疫とはなんでしょうか?免疫が過剰になるとなぜ体に悪い影響が起こるのでしょうか?なぜ、目のかゆみ・鼻のかゆみ・くしゃみ・鼻水…といった症状が出るのでしょうか?

免疫ってなに?

人間の体は「免疫」と呼ばれる機能があります。免疫は、外から侵入しようとする敵を排除するシステム(外来の異物に対する免疫)と侵入してきた敵に感染した細胞を排除するシステム(自己由来の異物に対する免疫)の2つのシステムからなります。

この2つのシステムは、働きが足りない場合も働きすぎる場合も、私たちの体に悪い影響を及ぼします。

このうちアレルギーは、「外来の異物に対する免疫」が働きすぎた場合をいいます。逆に働きが不足すると、免疫低下・免疫不全と呼ばれる状態になり、色々な感染症にかかりやすくなります。

体中が助け合って体を守る!

この「免疫」と呼ばれる機能は一か所の器官や細胞が担当しているのではなく、いろいろな細胞・物質・器官が助け合って担当します。

  • 免疫細胞:リンパ球、食細胞など
  • 物質:抗体、補体、サイトカインなど
  • 器官:胸腺、骨髄、リンパ節など

これらの働きは大きく「異物に対して直接攻撃するもの」と「間接的に異物に対する攻撃を助けるもの」の2つに分けられます。

アレルギーはこうして起こる

外からやってきた異物を排除するはたらきが過剰になった場合、いわゆる「アレルギー」と呼ばれる状態になります。このとき、外からやってくる異物のことをアレルゲン(抗原)といいます。

アレルゲン(抗原)を直接攻撃するのは、マスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる細胞です。しかし、マスト細胞は自分で敵を見分けることができません。そこで手助けをするのが、Th2細胞B細胞です。B細胞は、マスト細胞に代わって敵を見極めるIgE抗体という物質を作る役割を、Th2細胞は、アレルゲン(抗原)を察知してB細胞に対してIgE抗体を作るよう指令を出す役割をそれぞれ担います。

作られたIgE抗体は「こいつが敵だ!」とマスト細胞に知らせることで、マスト細胞はアレルゲンを攻撃します。そして、マスト細胞が攻撃したときに放出されるヒスタミンという物質が、目や鼻のかゆみ、くしゃみや鼻水といったアレルギー反応を引き起こします。

アレルギー反応の原因、アレルゲン

アレルゲンは様々で主要なものとしては、

  • 吸入性アレルゲン:ハウスダスト、ペットの毛、花粉、カビなど
  • 食餌性アレルゲン:卵、牛乳、小麦粉、大豆など
  • 薬剤性アレルゲン:ペニシリンなど
  • 刺咬性アレルゲン:蜂に刺されるなど

などが挙げられます。アレルゲンの種類は人によって異なっているため、同じものを食べてもアレルギー症状が出る人と出ない人がいます。また、同じ人でも年齢によってアレルゲンが異なることがあります。赤ちゃんに多いのは、食べ物のアレルギーですが、3~4歳ぐらいになると吸入性のアレルギーが多くなってきます。

「アレルギー体質」ってなに?

アレルギーには、遺伝性があると考えられているものがあります。このようにアレルギーになりやすい遺伝的要素をアレルギー体質といいます。

通常であればIgE抗体は微量しか作られません。しかし、アレルギー体質の人は、ある特定の物質に対するIgE抗体が沢山作られやすい状態にあります。IgE抗体が沢山作られると、マスト細胞が過剰に働きヒスタミンも多く放出され、その結果、ひどいアレルギー反応が起きるのです。

IgE抗体が沢山作られてしまうのは、指令係のTh2細胞の働きを制御する機能がきちんと働いていないことが原因です。

かつては、Th2細胞の働きを制御するのはTh1細胞から作られる物質で、アレルギーのなりやすさは、このTh1細胞とTh2細胞の働きのバランスが悪いことが原因と考えられていました。しかし現在では、Th2細胞の働きを制御する物質を作る細胞として、レギュラトリーT細胞Th17細胞なども発見されています。

なお、Th2細胞を制御するシステムの不備の原因は、いまだ分かっていません。

アレルギーの症状は?

ハチ

アレルギーの症状は様々ですが、基本的には比較的軽い症状のものが多いです。アレルギー性の病気は「かゆい」という症状が特徴的です。また、それ以外の症状としては、目がかゆい、涙が出る、鼻がかゆい、皮膚がかゆい、口の周りがかゆい、お尻の周りがかゆいなどです。これらの症状は、アレルギー反応で分泌されるヒスタミンなどの物質によって、神経が刺激されるために起こります。

一方で、アレルギー反応で重篤な症状が起こる場合もあります。アナフィラキシーショック重症気管支ぜんそく発作がこれにあたり生命に関わる場合もあります。アナフィラキシーショックはハチの毒や食べ物、薬物が原因になることが多いです。

アレルギーの対策

それではアレルギーの症状が現れた場合はどのように対処すればいいのでしょうか?対処法は大きく分けて2つあります。

1.アレルゲンからの回避

吸入性のアレルゲンに関してはできるだけ回避し、回避できない場合はマスクなどを着用し、アレルゲンへの暴露を軽減しましょう。

2.免疫療法による体質改善

アレルゲンを避けきれないような場合に、希釈したアレルゲンを皮下などから体内に取り込み、徐々に濃度を上げていくことでアレルギー反応が起こらないようにする治療法です。例えば近年では、花粉症に対して舌下にアレルゲンをとどめて行う免疫療法(舌下免疫療法)が開発されています。

まとめ

つらい目のかゆみや鼻のかゆみの原因、アレルギー。まずはアレルゲンを回避すること、アレルゲンへの暴露を減らすことが重要です。それでも症状が治まらない場合、あるいは、アレルゲンを避けられない場合は医師に相談し免疫療法を行うのも良いかもしれません。