この季節、風邪などが原因で咳が長引くことがありますよね。加湿したり、市販薬を飲んだり、いろんな方法を試してみたけれど咳が止まらない……それって、本当に風邪ですか?3週間以上咳が止まらない場合、呼吸器に何か別の病気が発生しているかもしれません。今回はそんな呼吸器系の病気の中から「肺がん」について解説します。

目次

最も死亡率の高いがん、肺がん

肺がんとは名前のとおり肺にできるがんで、近年患者数が増加しています。

国立がん研究センターがん対策情報センターの調査によると、2010年の肺がん患者数は107,241人、死亡者数は69,813人。2013年のデータではさらに死亡者数が増えており、男女合わせて72,734人に上りました。特に男性では、がんによる死亡のうち4分の1近くが肺がんによるものです。

肺がんの初期症状とは?

肺がんの初期症状には咳が出る以外に、息切れ胸が痛む喀痰、血痰、発熱などがあります。特に8週間以上咳が続く場合、肺がんを含めた何らかの病気である可能性が高くなります。この他、多くのがんに共通する初期症状である全身の倦怠感、食欲低下、体重減少なども見られます。

しかし、日本人の肺がんの多くは、初期には何の症状も見られません。健康診断の際にオプションで肺がん検診を受けるなど、早期発見できるように心掛けが必要です。

CT撮影以外にも色々。肺がんの検査って何をするの?

検査2

がんは早期発見することで完治の可能性が高まる病気です。そして、早期発見のためにはがん検診を受けることが非常に重要です。

少しでも肺がんの疑いのある人や肺がんにかかった家族がいる方は、是非がん検診の重要性が分かる高山先生(医学博士)の記事「医師の検診を受けてほしい理由。健診やがん検診を受けようか迷っている方へ」をご覧ください。

代表的な肺がんの検査には、以下の3種類があります。

1.喀痰細胞診

喀痰細胞診では、患者の痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを調べます。痰の中には呼吸器からはがれた細胞が含まれているため、がんが生じている場合は痰に異常が見られます。特に、肺の入口(肺門)のがんを発見する時に有効です。

2.血液検査(腫瘍マーカー)

体内の正常な反応とがん細胞が反応すると、腫瘍マーカーと呼ばれる物質が体内のあちこち(血液・尿・身体組織中)から検知されます。

血液を採取し、その中に含まれる腫瘍マーカーを測定した時に高い数値が示されれば、体内にがん細胞が存在している恐れがあるということです。ただし、腫瘍マーカーにはいくつか確実でない面があります。

  • 良性の腫瘍(がんではない)でも陽性を示すことがある
  • ある程度がんが進行していないと陽性を示さないことがある
  • 進行していても陽性を示さないことがある
  • 多くの場合、どこの臓器にがんが発生しているか特定できない

腫瘍マーカーは、あくまでも補助診断材料として使われます。確定診断は、生体検査によってつけられることになります。

3.胸部CT検査

CTとは、「Computed Tomography」の略。コンピュータを使ってデータの処理と画像の再構成を行い、体の断層写真を撮影できる装置のことです。胸部X線検査よりも約14倍近い確率で病気を発見することが可能です。

肺に腫瘍がある場合、CTには白くはっきりとした影が映ります。CTを確認することで、腫瘍の大きさや場所、そして悪性か良性かを診断することができます。

ただしCT検査にはデメリットもあり、被ばく量は胸部レントゲンの100倍以上ともいわれます。そのため、非喫煙者の若年者に対して健診として行うCT検査はメリットより不利益の方が高いと考えられます。一方55-74歳の一定以上の重度喫煙者の方に対してのCT健診は肺がんを発見するのに効果的であり、結果的に肺がんによる死亡率を低下させたと報告されています。

咳や痰が止まらない場合は病院へ

肺がん以外にも、肺炎や結核など、咳は様々な病気のサインとして機能します。

市販薬などによる治療を行っても咳が3週間以上止まらなかったら、風邪ではなく他の病気にかかっている恐れがあります。この場合は、病院へ行って医師に相談しましょう。

咳の原因となるその他の疾患については、「咳が止まらない時の原因は!? 考えられる病気の3つの見分け方」の記事も参考にしてください。

最後に

肺がんは、非常に進行が早い病気です。そのため、発生したら一刻も早く治療を開始する必要があります。しかし、初期症状はほとんど見られないため、少しでも気になることがあったらすぐに検査を受けること、また普段からタバコは吸わないなど予防に務めることが重要です。

早期発見さえできれば、肺がんは手術によって完治させることができます。咳が長引くなど、気になる症状が出た場合にはすぐに医師に相談しましょう。