女性特有のがんである「乳がん」。40代~50代の女性に多く、女性のがんでは胃がんを抜いて罹患率第1位と非常に多いがんです(日本医師会より)。また、乳がんは死亡率も第5位と高く、決して侮ることができません。今回は女性の皆さんに是非知っておいていただきたい乳がんの3つの原因と3つの初期症状について紹介します。

国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター|最新がん統計もあわせてご覧ください。

目次

実は知られていない!?乳がんの実際

実は、乳がんは進行度によって2種類に大きく分類することができます。

1つは非浸潤がんと呼ばれており、もう1つは浸潤がんと呼ばれています。

前者はがん細胞が基底膜という膜に包まれており、その膜を破って出てきていない状態で、がん細胞は上皮の中にとどまります。この場合早期がんであり他の臓器に転移している可能性はかなり低いです。

一方、浸潤がんはがん細胞が基底膜から破れて出てきている状態で、がん細胞は上皮から間質へ浸潤し、血管やリンパに流入し全身に転移する可能性があります。

乳がんの診断はマンモグラフィーと超音波検査が中心となります。日本では浸潤がんで発見されることが多く、がん細胞が他の臓器へ転移することがあります。転移した場合には肺への転移は33%、骨への転移は26みられます(「病気がみえる」P.205)。

乳がん治療法の選択としては、手術可能であれば手術療法が基本となります。

その他の治療としては、ホルモン感受性乳がんはホルモン療法、ハーセプチン感受性乳がんはハーセプチン療法(ハーセプチンがんを兵糧攻めにし、がん細胞を殺したり増殖を抑えたりする薬です)、両者に感受性がない場合は化学療法、放射線療法がおこなわれます。悪性度によってはホルモン、ハーセプチン療法に加えて化学療法、放射線療法がおこなわれることもあります。

※「感受性」とは、病原体や薬物などに対する生体反応をさします。「感受性がある」とは、薬物がその病気に対して効果を持つことを指します。

乳がんを招く3つの原因

乳がんを招く要因として大きく関与しているといわれているのが、女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)です。このホルモンは乳管の発達や女性生殖器の発達を促すホルモンであり、月経リズムによって量が変化します。

近年このホルモンが過剰に分泌されたり、長い間エストロゲンにさらされることで乳がんの発症リスクが上昇することがわかってきました。特に乳がん組織での、つまり局所でのエストロゲンレベル(エストロゲンの血中濃度)が発症に重要であるとされます。このエストロゲンが関与するものとして、下記の3つが挙げられます。

1.肥満

食生活の欧米化に伴う高脂肪・高タンパク質の食生活はホルモンバランスを崩す原因になります。脂肪細胞はエストロゲン産生に関係するため、肥満の方ではエストロゲンレベルが高くなります。国立がん研究センターによる研究でも、肥満女性はそうでない女性に比べ乳がんを発症する確率が高いということがわかりました。

詳しくは、国立がん研究センターがん対策情報センター|国立がん研究センター「閉経前・後ともに肥満は乳がんのリスクに」をご覧ください。

2.出産経験の有無

出産経験がある女性とそうでない女性とでは、後者の方が乳がんを発症する確率が高くなります。出産経験が無いと妊娠中に多量に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が相対的に減少し、エストロゲンにさらされる期間が長くなることが理由の一つといわれています。また、初産年齢が低いほど乳がんのリスクは低く、初産年齢が高い女性(30歳以上)では乳がんのリスクが高くなることもいわれています。

3.授乳経験の有無

授乳経験のない女性は授乳経験のある女性と比較して乳がんのリスクは増加します。また、授乳期間が長くなるほど乳がんのリスクが低下します。授乳を頑張って続けることは、赤ちゃんのためだけではなく、お母さんにとっての乳がんになりにくい体作りともいえるかもしれません。

乳がんの3つの初期症状

女性の胸部

1.しこり

乳がんで代表的な症状です。感触としては、こんにゃくの下に豆を置いて触ったような感触に似ています。お風呂で石鹸をつけて片手を軽く挙げ、指で滑らすように探すと見つけやすいです。月に1回自己検診の日を定め、さっそく始めてみましょう。

2.血性の分泌物

乳頭を絞ると乳管内にできたがんにより、血性の分泌物が乳頭から出てくることがあります。このような場合、必ず乳腺外科を受診しましょう。

3.乳房のひきつれ

手を挙げた時に、乳房や乳腺にひきつれる感じを自覚したら、それは大切なサインです。しこりだけではなく、このひきつれも十分にチェックしてください。しこりがありひきつれを自覚する場合には、乳がん検診へ行くのではなく、乳腺外科を受診するとよいでしょう。

以上の3つが特徴的な症状です。乳がんは自分でチェックすることもできるので、定期的にセルフチェックをするといいでしょう。

上記に加えて、定期的に乳がん検診を受けることが早期発見に繋がります。乳がんは、初期の段階で発見すれば早い段階で治療を始めることができ、治癒する可能性もかなり上がるのです。まずは一度検診を受けてみようと思った方は、ぜひレディースドックを予約してみてください(人間ドックのここカラダのページが開きます)。

まとめ

女性にとって、女性らしさを象徴する乳房。時には命を落とす程恐ろしいがんですが、原因や特徴的な症状を自分で把握し、早期発見しましょう!