日本は世界でも有数の近視大国と呼ばれています。視力矯正方法と言うと昔は眼鏡しかなかったのですが、コンタクトレンズが普及し、現在ではコンタクトレンズ装用者は1700万人に達するといいます(日本眼科学会より)。身近な存在となっているコンタクトレンズですが、近年ではコンタクトレンズトラブルも問題になっています。コンタクトレンズ使用時の注意点をみていきましょう。

目次

コンタクトレンズの種類

コンタクトレンズにはハードレンズとソフトレンズがあるという事はご存じだと思います。しかしそれぞれの特徴を知っている人は案外少ないのではないでしょうか?ハードレンズとソフトレンズのメリット・デメリットをみていきましょう。

ハードコンタクトレンズ

黒目よりも小さくてかたいコンタクトレンズです。かたい分異物感に慣れるまでに時間がかかるというデメリットがありますが、反対に目にゴミが入ったり傷がついたりすると異物感を感じるために異常に気付きやすい、というメリットもあります。現在使用されているハードレンズは素材そのものが酸素を通す酸素透過性ハードコンタクトレンズがほとんどです。以上のことから、大きなトラブルになりにくいコンタクトレンズです。

ソフトコンタクトレンズ

黒目よりも大きく水分を含んだ、柔らかいレンズです。柔らかいために初心者でも異物感なく装用できるのがメリットです。またズレにくくはずれにくいため、激しいスポーツをしている人にもおすすめのレンズです。しかし目が乾きやすい・装用感が良いためにゴミや軽い傷などに気付きにくいというデメリットもあります。人気の使い捨てコンタクトレンズは、このソフトコンタクトレンズです。

コンタクトのつけっぱなしは危険!

Kontaktlinse

コンタクトレンズの装用時間の長さによるトラブルが多く起こっています。

一部の特殊な場合を除き、コンタクトレンズは、朝はめて夜はずすのが基本です(終日装用)。角膜(黒目)は普段は空気中から酸素を取り入れています。しかし角膜(黒目)の上にコンタクトレンズがのってしまうと、1枚壁を使ったような状態になるため酸素をうまく取り込めず、酸素不足によって感染症を起こしやすくなったり、傷つきやすくなったりするなど様々な目のトラブルを引き起こしてしまったりするのです。

また、レンズをつけたまま寝ると、まぶたを閉じることで更に角膜にフタをしてしまうようなもので酸素不足を悪化させます。

目のトラブルを防ぐためにも、コンタクトレンズは必要なければ外して裸眼の時間を作り、目を休めてあげるようにしましょう。

コンタクトレンズは医療機器

使い捨てレンズなどのコンタクトレンズが普及し生活が便利になった一方で、コンタクトレンズに関する認識が甘くなっている事も懸念されています。知らない人も多いと思いますがコンタクトレンズは医療機器になり、2005年の薬事法改正に伴い医療機器の中でも体に対するリスクが最も高い「高度管理医療機器」に分類されるようになりました。

分 類 概 要
高度管理医療機器 副作用や機能障害を生じた場合、
人の生命・健康に重大な影響を
与えるおそれがある医療機器
コンタクトレンズ・人工骨・心臓ペースメーカー・人工呼吸器・歯科用インプラント材・人工呼吸器など

高度管理医療機器は更に「クラスⅢ」と「クラスⅣ」に分類されます。ペースメーカーなどは最もリスクが高い「クラスⅣ」になり、コンタクトレンズは「クラスⅢ」の分類となります。これは、AED(自動体外式除細動器)と同じ分類です。

体へのリスクが高いということは、万が一の時の危険性が高いということです。つまりコンタクトレンズは正しい取り扱いをすることがとても重要だということになるのです。

コンタクトレンズ使用時の4つの注意点

コンタクトレンズをつける人

「高度管理医療機器」のコンタクトレンズを使用する上での注意点をみてきましょう。

1.装用時間を守る

装用時間は人によって異なると思いますが、夜は必ずはずすようにし少しでも目を休める時間を作りましょう。酸素透過性の高いコンタクトレンズでは連続装用が可能なレンズもありますが、連続装用を行う時は必ず医師による指示のもとで行うようにしましょう。

2.正しい取り扱いとレンズケアを行う

レンズケアは目の健康を守る上でも非常に重要なものとなります。専用のケア用品を使用し、正しい取り扱い方法を守ってコンタクトレンズを使用するようにしましょう。

ハードコンタクトレンズの場合

こすり洗いとつけおき洗浄の2種類がありますが、洗浄力が高いのはこすり洗いです。

こすり洗い

  1. 清潔な手で目からコンタクトレンズを外したら、レンズを水道水または専用のすすぎ液ですすぎます。
  2. まずは、レンズの外側を洗います。利き手の反対側の手のひらの上に、レンズの内側を上にして乗せ、洗浄液を4、5滴垂らします。
  3. 利き手の人差し指の腹をコンタクトレンズの内側に当て、軽くおさえます。レンズを前後左右に動かし、泡立てるように30回ほどこすりましょう。
  4. 続いて、レンズの内側を洗います。利き手の親指・人差し指・中指の3本でコンタクトレンズをはさみ、親指の腹でレンズの内側を30回ほどこすってください。このとき、レンズの内面に爪が当たらないよう十分気をつけましょう。
  5. 汚れが強い場合、手のひらの上にレンズを載せたまま、反対の手の指先でレンズの内側を丁寧にこするようにします。
  6. 水道水または専用のすすぎ液で、洗浄液のぬめりがなくなるまでしっかりとすすぎます。
  7. レンズケースに保存液を満たし、その中でレンズを保存します。
  8. コンタクトレンズをつける際には、もう一度1~6の手順でこすり洗い・すすぎを行いましょう。

つけおき洗浄(こすり洗い併用)

つけおき洗浄では、タンパク質分解酵素脂肪分解酵素を使用します。洗浄中にコンタクトレンズを破損しにくいというメリットがある一方、洗浄効果はこすり洗いと比べると弱いというデメリットもあるため、こすり洗いを併用した方が安心です。

  1. 清潔な手で目からコンタクトレンズを外したら、レンズを水道水または専用のすすぎですすぎます。
  2. 洗浄保存液あるいは保存液を使ってこすり洗いを行い、水道水または専用のすすぎ液でよくすすいでください。
  3. 保存液あるいは洗浄保存液を満たしたレンズケースに液体酵素を1、2滴たらし、コンタクトレンズをつけておきます。汚れを分解するまでには、通常4時間以上のつけ置きが必要です。
  4. コンタクトレンズをつける際には、もう一度こすり洗い・すすぎを行いましょう。

ソフトコンタクトレンズの場合

1日使い捨てのコンタクトレンズは、一度外したら再使用ができません。必ず捨ててください。

2週間交換ソフトコンタクトレンズなど繰り返し使用するものの場合、使用後は必ず洗浄と消毒を行う必要があります。消毒の方法としては、過酸化水素による消毒、ポピドンヨードによる消毒、マルチパーパスソリューション(MPS)による消毒があげられます。

過酸化水素、ポビドンヨードによる消毒は消毒後に中和が必要です。それぞれの中和方法は製品によって異なり、ケアの手順が違ってきますのでよく説明書を確認しましょう。

MPSは必要なケアを1剤で行うため、他の方法に比べてケアが簡単ですが、消毒効果は他の方法と比べると劣ること、シリコンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズとの相性が悪いことがあることに注意が必要です。また、ポピドンヨードはヨードアレルギーのある人は使用できません。

ケア方法

  1. 石鹸でよく洗った清潔な手で目からコンタクトレンズを外します。
  2. コンタクトレンズを利き手と反対の手のひらにのせ、ケア用品を使用しこすり洗いをします。こすり洗い不要と書いてあっても、しっかりこすり洗いをすることが必要です。
  3. 十分なすすぎをします(すすぎは、装脱後・こすり洗いの後・装着直前に行います)。
  4. 消毒については、ケア用品によって方法が異なるので、各製品の説明書にしたがって消毒しましょう。
  5. コンタクトレンズを装着する前にも、すすぎ液で十分にすすぎましょう。

※ソフトコンタクトレンズのケアに水道水は禁物です。特に、MPSはアカントアメーバに無効なため、水道水の使用は危険です。

消毒後は、次の装用までの保管中に微生物が増殖しないように努めましょう。過酸化水素による消毒では、消毒操作終了後は消毒効果がなくなります。24時間以上経過した場合は再度消毒操作を行ってからレンズを使用する必要があります。MPSは保存中に消毒効果を発揮しますが、消毒効果が弱いため、ケース内に微生物が増殖することがあるので、長期の保存は危険です。

そして、コンタクトレンズ装用中はレンズケースの手入れも重要ですコンタクトレンズ装用後、流水でこすり洗いをし、ケースの蓋とともに自然乾燥させましょう。

※MPSとレンズケースは、1ヶ月ごとに交換するようにしてください。

3.定期検査を受ける

使用していて問題がなければ定期検査もさぼってしまいがちですが、ソフトレンズは自覚症状が出にくいために、目に異常があっても気付かない場合が多いです。またコンタクトレンズの汚れなどが原因で目の病気になってしまう場合もあるので、病気の早期発見・コンタクトレンズの異常を見逃さないためにも定期検査は必ず受けるようにしましょう。

4.異常を感じたらすくに眼科医の診察を受ける

目にかゆみがある・充血しているなど目の異常がある場合はコンタクトレンズを中止しましょう。またコンタクトレンズを装用するとゴロゴロする・痛みがあるなど装用時の異常を感じた場合も装用を中止し早いうちに眼科医の診察を受けましょう。

まとめ

目の悪い人にとってはなくてはならない存在のコンタクトレンズですが、何気なく使用していても実は立派な医療機器ということをしっかりと覚えておきましょう。正しい理解と正しい使用方法を守る事が、自分の目を守る事にも繋がっていくのです。