糖尿病は成人病、生活習慣病の1つだから、大人がなるものと思っていませんか?糖尿病は大人だけでなく、子どもも発症することがある病気です。
糖尿病には2種類ある!1型糖尿病と2型糖尿病の違いとは」で1型糖尿病について述べていますが、1型糖尿病は主に幼少時期に発症することの多い糖尿病です。また近年は1型だけではなく、2型糖尿病の若年化も問題となってきています。
子どもの糖尿病について、解説しています。

目次

どのくらいいるの?小児糖尿病

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類がありますが、子供の糖尿病患者数はどれくらいいるのでしょうか。

1型糖尿病

日本人の1型糖尿病の発症率は白人に比べ非常に少ないのが特徴です。1年間で10万人に1.4~2.2人の割合で発症します(白人は10万人に20人の割合で発症)。小児慢性特定疾患治療研究事業の調査によると、1年間に500~600人が新たに1型糖尿病を発症し、患者数は約5000人でした。

診断年齢は幼児期と10~13に診断されるケースが多いです。

2型糖尿病

小児の2型糖尿病の70~80%は、肥満を伴っています。小児慢性特定疾患治療研究事業に登録された小児糖尿病の約20%(1,100人)が2型糖尿病でした。年間に200~250人が新たに2型糖尿病を発症していますが、2000年以降は小児の肥満頻度の増加が頭打ちとなり、2型糖尿病の発症率も増加は落ち着いているようです。

診断年齢は8~9歳から発症が増加し、13~14歳で診断されるケースが一番多くみられました。

小児糖尿病の原因

 横になる子供

1型糖尿病と2型糖尿病では原因が異なります。それぞれの原因についてご紹介します。

1型糖尿病

ほとんどの場合は自己免疫反応によって、膵臓のβ細胞が破壊されることによってインスリンの産生能力が失われます。インスリンが不足し、インスリン欠乏状態となります。糖尿病発症時にはほとんどのβ細胞は破壊されてしまっているため、免疫反応を抑える治療(免疫抑制治療)は効果がなく、インスリンを補ってやる対症療法が治療の基本となります。

2型糖尿病

日本人の小児2型糖尿病の70~80%が肥満を伴うことは先に述べましたが、肥満に伴い内蔵脂肪が貯まり、そのためインスリンへの抵抗性が高まり、さらにインスリン分泌の低下が起こり2型糖尿病を発症すると考えられています。

脂肪細胞から分泌される物質が、インスリン抵抗性、高血圧、動脈硬化を引き起こします。

肥満は食習慣や運動不足で起こりますが、遺伝も関与していると考えられます。

小児糖尿病の治療

微笑む看護士

1型糖尿病と2型糖尿病では治療方針は異なります。

1型糖尿病

インスリン療法

インスリンには色々な種類があります。超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型などです。それぞれの薬の特徴を活かし、組み合わせて使用します。

多く使われているのは、超速効型インスリンを食事のたびに3回注射し、持効型インスリンを1~2回注射する方法です。1日にインスリンを4~5回注射することになります。幼稚園や小学校低学年の子供では自分で昼食時の注射ができないため、朝食前に超速効型と中間型のプレミックスタイプを使う方法もあります。

その他、近年では持続皮下インスリン注入療法という方法も有効な治療法として使用が増えてきています。いずれにしても、可能な限り健康体と同じようなインスリン量にコントロールできるよう、専門医と相談しながらインスリンの種類や、注射の回数を選択していく必要があります。

食事療法

1型糖尿病は肥満を伴わないため、食事制限は必要ありません。小児期の成長に必要な栄養やエネルギーを摂取することは重要です。ただし、急激な血糖上昇を引き起こすアメやジュースなどの砂糖の多い食べ物は注意が必要です。

また、食事内容によって注射する量を調節するタイプのインスリンを使用している場合は、食事内容に注意する必要があります。

インスリン注射と食後血糖の変動は常に意識し、血糖を良い状態でコントロールします。

2型糖尿病

治療の基本は、食事療法運動療法です。肥満の場合は肥満の改善も必要です。食事療法と運動療法で、血糖コントロールができない場合は薬物療法を行います。

食事療法/運動療法

食事のカロリーを計算し、総エネルギー量を標準エネルギー量に抑えます。食物繊維を含む食品を積極的に摂取し、甘いものを避けるようにします。

運動も積極的に取り入れ、部活動やクラブなどで運動することを勧めます。

薬物療法

食事療法、運動療法を行っても血糖コントロールができない場合は、経口の血糖降下薬の服用や、インスリン注射を行うこともあります。経口血糖降下薬にも様々な種類があります。

インスリン抵抗性が主体の場合、食後血糖値のみが問題の場合、インスリン分泌不全が進行している場合、それぞれに適応する薬がありますので、その子の状態によってどの薬が適しているか判断されます。

糖尿病は治るの?

1型糖尿病はインスリン分泌ができない状態なので、治癒は見込めません2型糖尿病についても治癒は難しいのが現状です。食事療法や運動療法、薬物療法で一時的に血糖が正常値になったからといって治療を投げ出すと、後になってかえって重症化することもあるため注意が必要です。

糖尿病治療の要は、血糖コントロールと糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害)を予防することです。小児期から糖尿病を発症すると罹患期間が長期になり、それだけで合併症の発症リスクは高いのです。

成長時期の子供の糖尿病の留意事項

手

病気や治療と付き合いながら成長し大人になって行く小児糖尿病には以下の問題が起こります。起こりやすい問題を十分に理解した上で、問題を回避できるよう専門家のアドバイスを受けながら家族全員で対策をたてましょう。

  • 運動量や食事量の変動が大きく治療後の低血糖を起こしやすい
  • 乳幼児は低血糖が起こっても把握しにくい
  • 学校行事など変化に合わせたインスリン量の調節が必要
  • 幼稚園や学校関係者の協力と理解が必要
  • 子供本人に病気の理解をさせる(自分で血糖コントロールとインスリン調節ができるように)
  • 思春期に多くの患者で血糖コントロールが悪化する

まとめ

小児糖尿病は家族が一丸となって治療に取り組む必要があります。また、子供の周囲への理解や協力なしでは治療がうまくいきません。家族にとっては、大きなストレスとなりますが、信頼できる小児糖尿病の診療経験のある専門医を見つけ、しっかりとしたサポートのもと適正な治療を受けることが重要ですね。更に詳細を調べたい場合は、参考サイト「小児慢性特定疾患情報センター」をご覧ください。