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日中に何度も強い眠気に襲われ、居眠りをしてしまうナルコレプシー。そのままにしておくと、交通事故や労働災害などを起こす危険があり、早めに治療する必要があります。今のところ完治させる方法はありませんが、適切な治療によって症状をかなり軽減することができます。ここでは、ナルコレプシーの治療法についてまとめました。

ナルコレプシーは治る病気?

ナルコレプシーは、睡眠をコントロールする脳の機能の異常が原因で発症します。

主な症状として、昼から午後にかけて眠気が強くなり、何度も居眠りをしてしまう睡眠発作があります。また、強い感情の動き(驚き、笑い、怒り等)があったときに、全身または身体の一部の力が抜けてしまう情動脱力発作(カタプレキシー)という症状を伴います。

他にも、睡眠に入る際に幻覚や幻聴が起こる入眠時幻覚、睡眠に入る際に起き上がろうとしても体が動かない、声が出ない等の睡眠麻痺(いわゆる金縛り)の症状を示すことがあります。

ナルコレプシーの治療については、睡眠障害に詳しい精神科や、睡眠障害専門の医療機関を受診するようにしますが、今のところ根本的に治療する方法はありません。そのため、ナルコレプシーの治療は眠気による社会生活の不利益(仕事、学業等の能率の低下、運転等の危険性)を最低限に留めることを目的として行われます

具体的には生活のコントロール薬物療法があります。

生活のコントロール

時計

ナルコレプシーの症状が軽い場合には、薬物を用いずに生活をコントロールするだけで症状が改善することがあります。具体的には以下のような点に留意します。

  • 夜間の睡眠を十分にとり、規則正しい生活を心掛ける。
  • 積極的に短時間の昼寝をする。可能であれば、数時間に1回ずつ計画的に午睡を取る。
  • 必要に応じて、コーヒーなどのカフェインを摂取してもよい。

また、車の運転や危険を伴う作業はできるだけ避けるか、眠くなりにくい時間帯を選ぶようにします。

ナルコレプシーの薬物療法

薬による治療が必要な場合でも、生活が乱れると薬の効果が減少しますので、規則正しい生活を心掛けるようにします。その上で、症状に合わせて次のような薬が処方されます。

日中の睡眠発作をおさえる薬

日中に起こる睡眠発作を抑えるために、中枢神経刺激薬が処方されます。依存性が少なく、朝1回の服用で効果が長時間続くモダフィニル(モディオダール)が治療の第1選択となっています。

その他にも、メチルフェニデート(リタリン)ペモリン(ベタナミン)という薬がありますが、様々な副作用があり、依存や乱用が問題視されているため、処方されるのはモダフィニルでも改善しない重症なケースに限られます。

情動脱力発作意、入睡時幻覚、睡眠麻痺をおさえる薬

情動脱力発作意、入睡時幻覚、睡眠麻痺といった症状を抑制する目的で、抗うつ薬が処方されます。少量の三環系抗うつ薬、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIなどがあります。

夜の熟睡を促す薬

ナルコレプシーでは、夜の睡眠が安定せず、途中で何度も目覚めてしまい、日中の睡眠発作を悪化させているケースが多く見られます。途中で目覚めるのを防ぎ、熟睡を促すために、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬などが使われます。

いずれも、医師との相談のもと、症状によって薬を飲む時間帯や量を細かく調整する必要があります。

ナルコレプシーの治療には長い時間が必要

ナルコレプシーは、5年、10年と長期経過中に、症状が軽減していくケースがかなり見られます。ナルコレプシーの症状を改善するには長い時間がかかることをあらかじめ理解して、治療に取り組むことが大切です。

また、薬の服用が長期にわたる場合は、副作用などが心配になることもあると思いますが、自己判断で薬の服用を止めると、症状が悪化する場合があります。心配なときは、医師に自分の症状をしっかりと伝え、なぜその薬が必要なのかを理解して服用するとよいでしょう。

まとめ

ナルコレプシーは、生活をコントロールし、適切に薬を服用することで、症状を改善することができます。ただし、治療には根気が必要。長い時間はかかっても、必ず良くなることを理解し、焦ることなく病気とうまく付き合っていきましょう。