最近ニュースで度々耳にする病名、「MERS(マーズ)」。致死率が高い、感染力が強いなどと話題になっていますが、そもそもどういう病気なのかご存知でしょうか。どんな病気なのか知らないと、対策を立てることもできませんよね。まずは、MERSについての正しい知識を身につけましょう。

目次

そもそも、MERSって何?

MERS(Middle East respiratory syndrome)は、日本語では「中東呼吸器症候群」といいます。その名の通り、アラビア半島をはじめとする中東地域でみられる病気です。2012年にはじめて確認されました。

日本では2015年6月3日現在、MERSの患者が発生したことはありません。しかし、中東地域に滞在中に感染した人が帰国してから発症する例がアメリカ・ヨーロッパ・アジア・北アフリカなどで見られています。

MERSは、法律で二類感染症に指定されています。国内で患者が発生した場合は、医師による患者の届け出および適切な医療の提供が法律で義務付けられています。

MERSの原因となるコロナウイルスとは

らくだ

MERSの原因となるウイルスは、MERSコロナウイルス(MERS-CoVといいます。

このウイルスの感染経路は正確には分かっていませんが、ヒトコブラクダが感染源の一つだと考えられています。ヒトコブラクダとの接触歴がない人への感染も多くみられますが、人から人への感染は患者から医療従事者・患者の家族内など限定的だと考えられています。現在韓国でMERSの感染が拡大していますが、WHO報道官は現時点では感染力に変化はないとしています。

ところで、「MERS」という名前を聞いて、2003年に世界中で大流行した「SARS(サーズ)(重症急性呼吸器症候群)」を思い浮かべた人がいるのではないでしょうか。実は、SARSの原因となった病原体は、MERSと同じコロナウイルスの仲間なのです。

ただし、この2つはあくまでも違う病気です。遠縁のようなもの、と考えると良いでしょう。

MERSの症状って?

検温

MERSの患者さんにあらわれる主な症状は、発熱、せき、息切れなど急性かつ重症な呼吸器症状です。下痢など消化器の症状を伴う患者も多くいます。また、腎不全を来たす場合もあります。

MERSコロナウイルスに感染しても、軽症ですむ・症状が現れないという人もいます。一方で、高齢者や基礎疾患(糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全など)のある人は重症化しやすい傾向があります。

MERSに感染し、症状が悪化した場合の死亡率は約40%です。亡くなった方の約90%には何らかの基礎疾患があったとの報告もあります(厚生労働省より)。

MERSの治療法

MERSに対する特別な治療方法は見つかっていません。予防のためのワクチンなども、まだありません。それぞれの症状に応じて対症療法を行うことになります。そのため、早めの治療がとても重要です。

MERSの感染を防ぐためにできること

MERSは治療法が確立されていない以上、予防が何よりも大切です。ここでは、中東に渡航する時に気をつけるべきことを紹介します。

1.基本的な衛生対策を怠らない

海外渡航中は、日本にいる時以上に衛生対策に気を配ってください。例えば、

  • 加熱していない肉は食べない
  • 不衛生な環境で用意された食品の摂取を避ける
  • 野菜・果実は料理する前に清潔な水で洗う
  • 野生動物や農場の動物に不用意に触れない
  • ラクダとの接触を避け、ラクダの周辺に近寄ったら石鹸と水でしっかり手を洗う
  • 未殺菌のラクダ乳は飲まない

などに気をつけましょう。

ラクダは、威嚇行動でつばを吐きます。接触がなくても、近くに行った後には手を洗うか消毒するようにしてください。1つ1つの行動が、MERSの予防につながります。

2.症状のある人との濃厚接触を避ける

上記のとおり、MERSはウイルスの正確な感染源が分かっていません。しかし、家族や医療従事者など、濃厚な接触のある相手には感染することがあります。呼吸器感染を防ぐためにも、やくしゃみなどの症状がある人との接触はできるだけ避けるようにしましょう。

3.体調不良がみられたらすぐに医療機関へ

中東地域への滞在中に咳や発熱などの症状が表れた場合、他の人との接触をできるだけ避け、以下の咳エチケットを守ってください。

  • マスクを着用する
  • 咳やくしゃみをする時はティッシュペーパーでおさえ、他の人から顔をそむける
  • 使用済みのティッシュペーパーはゴミ箱に捨て、必ず手を洗う

また、帰国後に何らかの症状がみられたら、すぐに空港内などの検疫所に相談しましょう。帰国後14日以内に症状があらわれた場合、受診する医療機関に事前に連絡を入れた上、中東地域に滞在していたということを必ず伝えましょう。症状のある間は、上記の咳エチケットを守ることも忘れずに。

最後に

現在、世界で1000人を超える感染者が確認されているMERS。韓国での感染が拡大していることもあり、不安に感じている人も多いと思います。ただ不安になるのではなくて、正しい知識を身につけましょう。その上で、どうしたら感染を防げるか考えることが大切です。