MERS(中東呼吸器症候群)の患者数がどんどん増えているというニュースを度々耳にします。韓国での患者数が急増しているとのことで、隣の国で生活している私達にとっても不安な日々が続いています。今後MERSが日本に上陸することはあるのでしょうか?私たちはどのように自分の健康を守るべきなのでしょうか。

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MERSはどんな病気?

咳き込む医師

MERSは、中東地域を中心にみられる感染症です。MERSコロナウイルス(MERS-CoV)というウイルスが原因となります。主な症状としては発熱、せき、息切れなど急性かつ重症な呼吸器症状です。感染経路はまだ全て解明されたわけではありませんが、人から人への感染は患者から医療従事者・患者の家族内など、濃厚な接触がある相手に限られるとされています。

MERSがどのような病気か、どんな症状が出るのかもっと知りたい方は「MERS(中東呼吸器症候群)とはどんな病気?症状と治療法は?」の記事をご参照ください。

なぜ韓国で大流行しているの?

韓国

では、中東地域で発生する病気が、どうして韓国で猛威を振るっているのでしょうか。

今回韓国で最初の患者が確認され、WHOに報告されたのは5月20日。中東4ヶ国に最近渡航した経験があった、68歳の男性に症状が表れました。彼が韓国に帰国したのは5月11日でしたが、この時には何も症状がありませんでした。その後彼は5月11日に発症し、診療所・病院あわせて4ヶ所を受診しました。しかし受診の際に、旅行中にウイルスと接触した可能性があることを伝えなかったのです。そのため、MERSに感染していると疑われることはなく、隔離されることもありませんでした。したがって、MERSであると確認されるまでの9日間、多くの医療従事者や他の患者と接触してしまったと考えられます。実際、新たに感染が確認された患者のうちの何人かは最初の患者と同じ病室でした。

MERSの症状は、風邪とよく似ています。そのため、症状が出ても、ウイルスとの接触の可能性への言及がなければMERSだという疑いを持つことができないのです。今回のケースでは、MERSであるという診断が遅れたため患者が隔離されず、多くの人への二次感染を招いてしまったと考えられます。

厚生労働省が行っている対策は?

空港

2015年1月から、MERSは結核や鳥インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)などと同じ二類感染症に指定されています。このため、日本国内でMERS患者が発生した場合、医師による患者の届け出患者への適切な医療の提供が法律で義務づけられています。

また、MERSに感染した疑いのある患者が見つかった場合はすぐに検査を行い、本当に感染しているかどうか確認できるような体制が整っています。加えて、空港などの検疫所でMERS発生国から入国・帰国する人でMERSの感染疑いがある人には、MERSウイルスの検査や健康監視を行っています。

現在、厚生労働省はMERSの検疫を強化しています。韓国からの入国者に対し、以下のような対応を行うようになりました。

MERS疑似症患者

発熱や呼吸器の症状(軽症の場合も含む)があり、発症前14日以内にMERS患者との濃厚な接触(診察、看護、介護、同居など)があった人をさします。申告や聞き取りでこれらの状況が確認できた場合、ウイルス検査を実施します。

健康監視対象者

症状がなくても、MERSの疑いがある患者と14日以内に濃厚な接触があった人をさします。該当者には1日2回の検温など健康状態の報告を最大で14日間求め、健康状態を報告してもらいます

もしも日本に入ってきたら?どう防ぐ?

手洗い

では、MERSが万が一日本に上陸した場合、私たちはどのように自分の健康を守れば良いのでしょうか?

WHOはMERS予防に対して、以下の点に気をつけるよう呼びかけています。

  • 石鹸で手をしっかりと、20秒以上洗いましょう。もし水や石鹸がなければ、アルコール消毒を行ってください。
  • やくしゃみをするときは、ティッシュで鼻と口を覆いましょう。使用済みのティッシュはゴミ箱に捨ててください。
  • 洗っていない手で目・鼻・口を触らないようにしましょう。
  • 体調の悪い人との濃厚な接触(同じコップを使う、キスをするなど)は避けましょう
  • ドアノブなど、多くの人がよく触るところはこまめに清掃・消毒を行うようにしましょう。

MERSの感染経路としては、飛沫感染(咳やくしゃみなど)と接触感染(病原体の付着した手や物品などとの接触による感染)が考えられています。しかし基本的には、MERSコロナウイルスの人から人への感染力はそれほど強くはありません。いたずらに焦るのではなくて、風邪やインフルエンザを予防するのと同じように、普段と同じ健康管理を欠かさないことが大切です。

まとめ

今回の感染拡大は、2012年にMERSが初めて確認されて以来、発生国であるサウジアラビア以外での最大規模となっています。しかし、パニックを起こしてしまっては防げるものも防げなくなってしまいます。検疫による水際対策への協力や一人ひとりの健康管理をしっかりと行い、感染拡大を防ぎましょう。