煙草をはじめとして、乳幼児から3歳までの誤飲事故は後を絶ちません。ベビーベットに寝ている赤ちゃんでも、物を握り始める3、4か月、さらには、口になんでも入れ始める5、6カ月からは要注意です。ここでは、いざという時の対応について考えてみましょう。

目次

誤飲による2つの危険性「窒息」と「中毒」

物を掴んで口に入れるようになる5、6か月の頃から、誤飲の危険性が急激に高まります。誤飲の際に怖いのは、乳幼児の気管と食道の弁が未発達なことによる「窒息」と、誤飲してしまった物の成分による「中毒」です。

特に、窒息は乳児の死亡原因の不慮の事故の中で8割以上を占めるものです(厚生労働省より)。親の注意によって防いでいかなくてはいけない事故の中で、最も重要なものといえるでしょう。

まずは吐かせる?間違っている!その応急処置!

煙草や洗剤等の異物を飲み込んでしまった時、まずは「水を飲ませる」「吐かせる」というのが、最初に思いつく応急処置ではないでしょうか。しかし、その応急処置は間違っているかもしれません。

例えば、煙草を飲み込んでしまった際は、水や牛乳を飲ませてはいけません。飲み物を飲ませると、ニコチンを胃の中で溶かしだしてしまい、吸収が早まり、中毒症状を引き起こしやすくしてしまいます。

また、洗剤については、特に酸性・アルカリ性のものは粘膜に触れると熱傷を引き起こします。吐かせることによって再度粘膜を通すことになり、再熱傷の危険が高まりますので、吐かせてはいけません。

よく聞く「牛乳を飲ませる」という応急処置も、ナフタレンのような脂溶性物質を含む場合には、吸収を促してしまうため厳禁です。

良かれと思って行った応急処置が悲劇を招かないよう、正しい対処について確認していきましょう。

飲んだもの別応急処置

下記に、早急な応急処置と受診が必要なものについてまとめます。

 

飲んだ
もの
  飲ませ
るもの
病院への搬送
中毒を
起こす
危険
煙草 吐か
せる
何も
飲ませ
ない
煙草は2センチ以上であれば
受診。
煙草の灰皿の水であれば
少量でも受診
医薬品 水・
牛乳
医薬品では、誤飲したものの
容器や包装・吐いた物を
病院へ持参
漂白剤 吐かせ
ない
水・
牛乳
再度、化学的熱傷を引き起こ
す可能性があるため、吐かせ
ない。
口中をよく洗浄してから水・
牛乳を飲ませて受診
※大量に飲ませると吐く危険
があるので、小児なら12ml以
下にし、飲める程度にする
石灰乾燥
材・除湿
酸性・ア
ルカリ性
洗剤
防虫剤
(しょう
のう・ナ
フタレ
ン)

牛乳は
飲ませ
ない
舐めた程度なら水を飲ませて
様子をみる
飲み込んだ場合はすぐに受診
ベンジン 何も
飲ませ
ない
揮発性のものが食道を逆流し、
肺に入り障害を起こす危険性
があるので吐かせない。
飲んでしまったものがわかる
よう、容器を持参し、できる
だけ早く受診する
ライター
燃料
液体蚊取
マニキュ
ア除光液
窒息・
穿孔の
危険
ボタン電
同じ電池の種類があれば持参
して、できる限り早く受診す
突起状の
異物・
針・くぎ
画鋲、針、釘、ガラス、10ミ
リ以上
のプラスチック破片で
何もせずできるだけ早く受
診する。
出血していれば救急車で
ゴム、ビ
ニール等
柔らかい
異物
吐きだす際、気管に詰まる
恐れがあるため、何もせず、
できるだけ早く受診する

※上記の異物に関わらず、「けいれんを起こしている時」「意識がない時」には、誤嚥(ごえん:吐き戻したものが誤って気管に入ってしまうこと)を起こす危険があるため、吐かせないでください。

6か月未満の赤ちゃんでは、誤嚥の危険があるので、吐かせずに受診してください。

※基本的に、家庭で吐かせるという応急処置は吐物が気管に入ってしまう危険性や受診を遅らせる可能性等から積極的には勧められていません。誤飲が明らかで、処置に自信がない際、誤飲したものが上記の表に当てはまるかどうかわからない際は、近くの医療機関や中毒センターに電話にて確認してみましょう。

  • 大阪中毒110番  :072-727-2499
  • つくば中毒110番 :029-852-9999

一刻を争うのはこんな時

蚊取り線香や化粧品(口紅、化粧水)、子どもの遊び道具であるのり・クレヨン・チョーク・粘土、石鹸・土・石、紙やティッシュペーパーなどは自宅で様子を見ていただけます。

しかし、上記の表のようなものが口に入り、確実に飲みこんでしまっていることが明らかな場合には、早急な対応が必要です。特に、次のような際は緊急を要しますので、救急車の要請を検討しましょう。

  • 意識がない(肩を叩いたり、呼びかけたりしても目を開けない)
  • けいれんを起こしている
  • 呼吸が早い(あるいは止まっている)、脈や顔色がおかしい

病院に行く際、救急車を呼ぶ際には

いざ救急車を呼ぶとなると、何を準備し、救急車到着まで何をしたらいいのか分からないものです。救急車で搬送する際には、落ち着いて、次の準備をしましょう。

1.原因物質の確認

「何を」「いつ」「どのくらい」飲んだのか確認しましょう。

原因物質や量が良く分からない時は、包装や残った異物、吐物等を医療機関に持参します。

2.子どもの様子を確認しましょう

「いつから」「どんな症状」があるか、吐いた場合は何回吐いたのか確認しておいてください。

3.受診グッズに忘れ物がないか確認しましょう

  • 健康保険証
  • 母子健康手帳
  • 着替え・おむつ
  • お薬手帳
  • 体温表など健康についての経過が分かるもの(保育園に持参する健康手帳等)
  • 医療補助券など

最後に

赤ちゃんにとって身近な事故である誤飲ですが、応急処置について、知らないことも多くあったのではないでしょうか。いざという時、すばやく対処できるよう、救急対応について一度シミュレーションしてみるのも良いかもしれません。