現在、日本では喫煙者の数が年々減少傾向にあります。でも、大幅に減っているのは男性だけで、女性の喫煙者数は横ばい状態が続いているというのをご存知でしたか?実は、タバコは女性の身体に様々な影響を及ぼします。女性こそ、タバコを吸うのをやめるべきなのです。 今回は、女性とタバコの関係について解説します。

目次

女性の喫煙率は横ばい状態

以下のグラフは、日本における喫煙率の変化です。

日本の男女喫煙者数の推移

出典:厚生労働省|成人喫煙率(厚生労働省国民健康栄養調査)をもとにいしゃまち作成

男性の喫煙率はどんどん減ってきているのに、女性が喫煙している率はほぼ横ばい状態です。

女性の喫煙率が変わらない理由として考えられるのが、女性向けブランドや「軽いタバコ」の増加です。オシャレなパッケージやメンソールなどによる爽快感を打ち出すことで、女性やタバコ初心者にも取っ付きやすい雰囲気を持ったタバコが多く発売されています。しかし、こうした「軽いタバコ」を選んだとしても、深く吸うことで結果的にはタールもニコチンもしっかりと体内に取り入れられています。「軽いから依存症にはならない」というわけではないのです。

喫煙が女性の身体に与える影響とは

それではここから、タバコが女性の身体にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。

見た目への影響

スモーカーズ・フェイス

1.スモーカーズ・フェイス

若い女性にとって気になるのは、美容面での影響です。長年タバコを吸い続けると、肌がくすんでカサカサになり、しみやしわが目立つようになります。特に目尻のしわが深くなったり、唇が茶色くなったりします。これは、ニコチンが皮膚の血行を悪くするために起こるものです。これらの特徴がみられる様子をスモーカーズ・フェイスといいます。

2.歯や口臭にも影響が

歯の表面にもヤニやニコチンが着きます。さらに、色素沈着によって歯肉の汚れも目立つようになります。

見た目だけでなく、口臭にも注意が必要です。ニコチンのニオイは、多くにとっては心地良いものではありません。タバコくさい息は、周囲の人を不快にさせることもあるのです。

生理・妊娠への影響

妊娠

3.生理への影響

女性だからこそ注意したいのが、生理や妊娠への影響です。

まず、若い女性にとって気になるのが生理への影響です。ニコチンは、生理不順月経困難症を招きます。閉経が平均で2年ほど早まり、老化が早まる原因ともなります。赤ちゃんがほしいと思っても、なかなか妊娠できないことも多いです。

4.妊娠中のトラブルのリスクが高まる

妊娠中の喫煙はお腹の赤ちゃんに大きな影響を及ぼします。タバコを吸うと胎盤から胎児への血流が悪くなるほか、一酸化炭素によって血液中の酸素が不足してしまいます。その結果、以下のようなトラブルのリスクを高めてしまいます。

  • 早産(2倍)・死産
  • 低体重出生児(2,500g未満で生まれる確率が22%増)
  • 早期破水(1.5~2.1倍)
  • 前置胎盤(胎盤が子宮口をふさいでしまう状態)(2倍)

このほか、子宮外妊娠や流産、先天異常(口唇・口蓋裂や心臓の先天異常など)との関連も報告されています。妊婦さんの喫煙は、赤ちゃんに非常に大きなダメージを与えてしまうのです。

育児への影響

眠っている赤ちゃん

5.母乳の出が悪くなる

授乳中にタバコを吸うと、母乳の分泌を促すプロラクチンというホルモンの血中濃度が低くなります。その結果、母乳の出が悪くなり、母乳が出る期間も短くなります。

6.赤ちゃんのニコチン中毒

母乳中にもニコチンが含まれてしまうことを忘れないでください。母乳を飲んだ赤ちゃんがニコチン中毒になってしまうことがあるのです。お母さんがタバコを吸っていて、赤ちゃんにぐずぐずする・よく眠れない・下痢などが見られたら、それはニコチン中毒の症状かもしれません。

7.乳幼児突然死症候群(SIDS)

乳幼児突然死症候群(SIDS)は生後2~4ヶ月の間に起こりやすく、それまで元気だった赤ちゃんが眠っている間に突然死亡してしまう病気です。

SIDSのはっきりとした原因は分かっていませんが、両親が喫煙する場合、両親が喫煙しない場合の約4.7倍発症率が高くなるという報告があります。最低限、赤ちゃんのそばでの喫煙は控えた方が良いでしょう。

8.誤飲の危険性

小さな子供は、何でも口に入れようとします。本来口に入れてはいけないものを飲み込んでしまう誤飲事故のうち、全体の30.2%と一番多いのがタバコによるものです。また、目を離した隙にライターで遊んでやけどをするという事故が起こる場合もあります。

この他にも、子供が小児喘息や生活習慣病になるリスクを高めることがあります。

その他健康への影響

9.がんの増加

特に子宮頸がんについて、タバコの影響が明らかになっています。タバコに含まれる成分は膣内常在菌を攻撃するため、感染への抵抗力を弱めてしまいます。そのため、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスに感染しやすくなってしまうのです。喫煙者が子宮頸がんに罹る確率は、非喫煙者の2~3倍になるという報告もあります。

また、喫煙することでがんに罹患した場合の死亡率も上がります。女性の場合、肺がんで4倍、子宮頸がん、口唇・口腔・咽頭がんで2倍以上、食道がんも1.9倍となっています。

詳しくは、国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「喫煙とがん」をご覧ください。

10.骨粗しょう症への影響

タバコは胃腸の働きをおさえ、食欲をなくし、カルシウムを吸収されにくくします。さらに女性では、骨から血液中へカルシウムが流出するのを防ぐ女性ホルモンの分泌を妨げます。そのため、骨に含まれるカルシウムが減り、骨粗しょう症になりやすくなってしまうのです。

禁煙するきっかけを見つけよう

ここまで、喫煙が女性の身体に与える影響について見てきました。

女性が禁煙するために必要なのは、このようにタバコの恐ろしさについてしっかり知ることだといいます。妊娠・出産を経験する年齢の女性にとっては、「がん」「骨粗しょう症」を身近な問題としてとらえるのは難しいかもしれません。しかし、お子さんがニコチン中毒になってしまうことや突然死してしまうリスクを考えると、「タバコをやめよう」という決意に繋がりやすいのではないでしょうか。

また、若い女性にとって、美容の問題は自分のこととして考えやすいと思います。しわのない綺麗な肌を目指すために禁煙する、と考えれば、モチベーションも上がることでしょう。

喫煙することを決めたら、禁煙外来に足を運んでみるのも一つの方法です。詳しくは、「禁煙外来とは!?禁煙する3つのメリットと効果は」をご覧ください。

最後に

喫煙が女性の体に与える様々な影響について、分かっていただけたでしょうか。タバコは、百害あって一利なしです。自分の身体のことや子供の身体のことを考えると、今吸っていない方は今後も喫煙しない方が良いでしょう。また、現在はヘビー・スモーカーだという女性は、タバコによる様々な健康リスクをきちんと知った上で禁煙を検討してみてはいかがでしょうか。