排便のたびに痛みと出血がみられる切れ痔(裂肛)。便意を感じても、また肛門が切れて出血してしまうと思うと、つい我慢してしまいますよね。

女性は特に、生理や妊娠・出産などによってホルモンバランスに影響を受けやすい他、育児や家事で忙しくしていると便意を我慢し、便秘になってしまいがちです。そして、便秘は切れ痔の大きな原因の一つなので注意する必要があります。

この記事では、切れ痔の原因と治療法、そして切れ痔にならないための予防法などを解説します。

目次

切れ痔の原因は「便秘」や「硬い便」

肛門の内側の皮膚が切れる痔のことを切れ痔(裂肛:れっこう)といいます。多くの方が「硬い便を出そうといきんだ時に痛みを感じ、紙で肛門を拭いたら血が付着していた」という経験をお持ちではないでしょうか。

切れ痔は、硬くていきまないと出ないような便が原因であったり、便秘や下痢などの便通異常により起きたりと、身近なことが原因で起こりやすいです。すぐに治る場合もある一方、何度も繰り返すと慢性化することもあります。

便は、直腸から肛門を通って体外へと排泄されます。直腸と肛門の境目を歯状線(しじょうせん)といい、この歯状線より内側(直腸側)は粘膜であるため痛みを感じません。しかし、歯状線より外側(肛門上皮)は皮膚なので、傷ができると痛みを感じるのです。

何度も肛門が切れる症状を繰り返していると、傷を負った部分が徐々に硬くなることで肛門が狭くなっていき、便が通りづらくなってしまいます(肛門狭窄)。するとさらに肛門が切れやすくなるという悪循環を引き起こしてしまうのです。

切れ痔にならないためのポイントは?

女性に多い切れ痔の最大の原因は、便秘や下痢といった便通異常です。ですから、まずは便通を整えることが切れ痔を予防する最大のポイントといえます。

下記のように、生活習慣を改善することが便通を整えるための最大のポイントです。

  • 水分や食物繊維をしっかりと摂る
  • 朝食を食べて排便を促し、毎朝排便をするように心がける
  • 刺激物やアルコールの多飲は避ける
  • シャワーだけで済ませず湯船につかり肛門を温め、血行を良くする
  • 発酵食品を多く摂るよう心がける(ヨーグルト・納豆・チーズなど)
  • お腹のマッサージを行う
  • 運動不足にならないように適度に動く
  • 睡眠不足やストレスをためない
  • 過度な食事制限をしない(便の量が減り便秘になりやすくなる)

切れ痔で病院に行くべき目安

痔は、以前は外科での手術が勧められがちな病気でした。しかし現在は、手術に至るケースはかなり減っています。というのも、切れ痔は便通さえ改善すれば良くなる場合が多いのです。

とはいえ、下記のような症状が見られた場合は医療機関で相談してください。

  • 出血が止まらない(ポタポタと続く)
  • 痛みがひどい、耐えられない
  • 出血がひどくて貧血になった
  • 便が全く出ない
  • 下痢が続いて、切れ痔が治らない
  • 下痢や出血の他に、倦怠感や体重減少、貧血や発熱などがみられる(クローン病などの全身疾患)

下痢・出血以外の症状がみられる場合、クローン病などの全身疾患が疑われます。クローン病は原因不明の難病で、口から肛門までの消化管に炎症が起こり、腹痛や下痢、血便、嘔吐などの症状がみられます。

病院でうける治療とは?

トイレ

病院での治療は「保存的治療」「外科的治療」があり、症状や裂肛の状態により、医師よりどちらが良いのか説明があります。

保存的治療

薬による治療です。座薬軟膏を用いて炎症を抑えたり、出血を止めたりします(軟膏は、表面に塗るのではなく肛門内部に注入します)。加えて、便の排泄がズムーズになるように便を柔らかくする薬(軟便剤)を処方することで、肛門が繰り返し切れるのを防ぎます。

外科的治療

手術による治療です。

狭くなった肛門を医師が指で広げる方法や、肛門の皮膚を切開して広げる方法など、肛門狭窄の程度によって手術方法は変わってきます。担当医とよく相談して決めましょう。

まとめ

一度、切れ痔になってしまうと、その強い痛みから便意を我慢するようになりがちです。しかし、そうしているうちにさらに便が硬くなると、肛門への負担もどんどん大きくなっていきます。慢性化しないよう、早目に生活習慣を見直してみてください。

また、あまりにも症状がひどかったり、長く続いたりするようであれば、肛門外科や消化器科で相談することをおすすめします。