小さいお子さんのおでこなどに、いちごのようにに盛り上がった赤いデキモノができている…それは「苺状血管腫」と呼ばれるアザかもしれません。

この苺状血管腫は、治療が必要なものなのでしょうか?どんな治療を行うのでしょうか?跡は残らないものなのでしょうか?苺状血管腫について、詳しく見ていきたいと思います。

目次

苺状血管腫ってどんな病気?

苺状血管腫はいわゆる赤アザの一種です。赤アザは医療用語では「血管腫」と呼ばれています。太くなった血管が集まって増えていく性質を持ち、皮膚表面・皮下、臓器などいろいろな場所にできるものです(日本小児外科学会より)。

皮膚に赤い班できたあと急速にに盛り上がって大きくなり、病変が完成するといちごの実のような見た目となります。

発症する部位

顔面・頭頚部が60%、お腹や背中、お尻を含む体幹が25%手足が15%とされています(血管腫・血管奇形診療ガイドラインより)。

年齢、男女差

乳児の1%に見られます。通常は、生後数週から3か月の間に発生し、生後6ヵ月から20カ月までに増殖期1歳6カ月から5歳程度までに消退期あるいは退縮期という経過をたどります(血管腫・血管奇形診療ガイドラインより)。
男女比は1:3と女児に多い病気です。

見た目以外の症状

苺状血管腫にかかるのは、主に乳児や幼児といった症状を上手に訴えることができない年齢なので、本人の自覚症状を把握することは難しいですが、基本的には見た目以外は無症状であると考えられています。

しかし、苺状血管腫に乾燥が伴えば痒みが出現したり、潰瘍が伴えば痛みが出現したりするとされています。また、毛細血管の集まりであることから出血をする可能性があります。

大きい場合はできた部位により視力障害、呼吸困難、開口障害、難聴といった機能障害を起こす可能性があるので、発生した部位によっては注意が必要です。さらに、局所的に潰瘍(皮膚の内部組織にまで欠損した状態)を形成することもあります。

なぜ苺状血管腫ができるの?

はっきりとした原因は不明ですが、未熟な毛細血管の増殖によってできるものと考えられています。

血管腫・血管奇形診療ガイドラインによれば、遺伝子レベルで原因があるのではないかという説や、受精卵が着床後の分化の過程において発症要因を作っているのではないかという説などがありますが、全て仮設で、原因の特定はされていません。

治療はすべき?

つい最近までは、苺状血管腫の治療は「wait and see」、つまり何もしないで経過を見るのが常識でした。多くの場合、1歳6カ月から5歳の頃に消退期(退縮期)があり自然に消えてしまうためです。

しかし実際はこの腫瘍は顔面や露出部に多いのみならず、隆起したしわとなって残る場合が多く、最近は、苺状血管腫の一部は早期から治療すべきという方針に変わってきています。

この理由として、プロプラノロール塩酸塩シロップ(一般名:へマンジオル)が乳児血管腫適応として開発され、有効性が証明されたことが挙げられます。薬で早期に縮小させることにより、後遺症を防ぐことが優先といった考えです。

もちろん、退縮期の年齢を過ぎても腫瘍が小さくならない場合や、目にできている場合、血管腫が骨・気道を強く圧迫して症状が出ている場合、出血を繰り返す場合、あまりにも巨大である場合などは以前から治療対象となっていました。

特に目の周囲である場合は、目が開きにくくなることで視力障害へつながることがあります。また、口や気道にできると摂食障害(食事を摂る行動に対する障害)や気道閉塞を招く可能性があり治療の対象になるのです。

治療を行う場合

手術

 

治療のタイミング

経過観察をしながら、血管腫の大きくなる速さや発生部位などを見て治療のタイミングを決定します。

血管腫が急速に大きくなったり、できている部位による症状が深刻な場合には、早い治療が望まれます。

治療方法

治療の主体はプロプラノロール塩酸塩シロップ(一般名:へマンジオル)内服、外科治療(手術)、V-beamレーザー治療の3つです。

まれに気道など外科手術が難しいところにはガスレーザーを使用した手術が行われることがあります。また、他にも薬物療法としてステロイド剤の投与放射線療法も行われる場合があります。

経過と後遺症

苺状血管腫は発症してから1歳くらいまでに大きくなり、その後は徐々に色が薄くなり小さくなっていくのが通常です。5歳までに約50%7歳までに約70%が機能的な問題を残さずに消失するとされています(岐阜新聞webより)。

しかし、一部では小さくなったとしても皮膚の表面に毛細血管のしわ、たるみ、跡を残すことがあるようです。そのため、子供の頃には特別な治療をせずに経過観察をしていただけであっても、大人になってから跡形に対して跡を消すための治療を行うことがあります。

まとめ

乳幼児期に見られる苺状血管腫は、基本的には機能的な問題はないものの、やはり外見の観点から大人になって気になるという人も少なくないかと思います。しかも、顔面や露出部のもので、プロプラノロール塩酸塩シロップの適応となる患者さんは相当数おり、まずは乳児早期に専門医(皮膚科、形成外科)を受診して、方針を決めてもらうのが一番です。

経過観察になる場合が多いですが、最近の治療方針に変化のある病気ですので専門医の受診をお勧めします。