どうしても痩せたいからと、無理なダイエットをする若い女性はなかなか減りません。あまりにも痩せることに執着してしまうと、摂食障害になってしまう場合があります。摂食障害は厚生労働省の難治性疾患(難病)に認定されており、治療の難しい病気です。しかし、克服できないわけではありません。今回は、摂食障害を克服するための方法を、医師・井口 俊大先生による監修記事で紹介します。
摂食障害について
摂食障害には、神経性食欲不振症(拒食症)と神経性大食症(過食症)があります。どちらの場合にも「痩せたい」という願望があり、太ることに恐怖を抱いています。拒食症では極端な食事の制限をし、過食症では食事の後に嘔吐したり、下剤などを使ったりして体重を維持しようとします。
拒食症は10代・過食症は20代に多く、それぞれの患者のうちの90%が女性です。摂食障害になりやすい人は、周りの人からの評価を気にしていて自分に自信のない人、また完璧主義の人とされています。若い世代では、痩せると評価が上がり、体重で痩せ具合が確かめられるため、症状がどんどんエスカレートしてしまうのです。
摂食障害の治療方法は?
拒食症も過食症も、食べないことによって栄養不良を引き起こし、身体的な障害が出てきてしまいます。そのため、身体的・精神的両面から、時間をかけて焦らず治療を行う必要があります。
拒食症(神経性食欲不振症)の治療法
拒食症の場合は、心理的な治療も必要ですが、栄養を摂ることが重要です。少量でも3食、カロリーにこだわらず、本人が食べやすいものを食べるようにします。カロリーが低ければ、薬や栄養補助食品で補いながら、徐々に量を増やしていきます。また、食事摂取で体重が増える恐怖を取り除けるよう、精神的なサポートが取られます。
拒食症の場合、痩せの状態によっては緊急入院・治療が必要になる場合もあります。
緊急入院治療の適応
- 全身の衰弱が激しい(立っていられない・階段が上がれない)
- 重篤な合併症を併発(低血糖による昏睡・心不全や腎不全・感染症など)
- 標準体重(身長×身長×22)に対して55%以下の痩せがある(160cmの場合標準体重は56㎏で、その55%は約30㎏)
外来で栄養指導を受けて治療を始めても、体重がなかなか増えない場合は入院治療に切り替えられます。それでも週に0.5kg以上体重が増えない場合、経管栄養(鼻からチューブを入れて流動食を流す)にするか、点滴にて栄養を入れる方法がとられることがあります。また、絶対安静の名目でベッド上に拘束をされたり、嘔吐していないか観察するため個室に隔離されたりすることがあります。
過食症(神経性大食症)の治療法
過食症の場合は、心理療法が中心になります。患者さんに、過食症について理解してもらい、食事や体重の正しい情報を提供していきます。
また、ストレスが根底にあるため、ストレスを過食で紛らわさない方法を一緒に考えていきます。ストレスに対応していく「コーピングスキル」が未熟だったり、物事の受け止め方に問題がある「認知の歪み」があったりするため、これを修正していくのです。
認知行動療法・対人関係療法・集団精神療法がとられます。
- 認知行動療法:大きく動揺した時でも、考え方や受け取り方のバランスをとり、ストレスと上手く付き合えるように指導していく方法
- 対人関係療法:対人関係の問題がある場合に、良い対人関係になるよう他人とのコミュニケーション能力を高めていく治療
- 集団精神療法:複数の患者が集まり、それぞれの抱える問題を話し合うことで、自分の問題を客観的に見られるように行われる治療
このほか、摂食障害を克服するためには、以下のようなことが必要です。
- 摂食障害は病気だと認識する
- 治療で体重が増え始めても、怖がらず食べるのを止めない
- 体重を測るのは、決まった曜日の決まった時間にする
- 食事はできるだけ30分以内で食べる
- 自分を卑下しないようにする
- 完璧主義をやめる
- 不安や自信のなさを相談できる人を探す
まとめ
摂食障害の治療は、心理療法が主になります。つまり、自分で治していくという思いがなければいけません。
治療には、時間がかかることもあります。ですが焦らず頑張れば、少しずつ良い方向へ向かうはずです。