人は胎内にいるとき、母体から栄養と酸素をもらうために臍帯(さいたい、へその緒)でつながっています。生まれた後には臍(へそ)の部分は引っ込んでいますが、中には「でべそ」と呼ばれる、臍が出ている状態の人もいます。また乳児のときは「でべそ」でも、いつの間にか引っ込んでいる場合もあります。実は「でべそ」には2種類あり、前者は臍突出症(さいとっしゅつしょう)、後者は臍(さい)ヘルニアといいます。今回は臍ヘルニアと臍突出症それぞれについて紹介します。

目次

臍ヘルニアとは?

生後間もない時期で臍の緒が取れた直後は、赤ちゃんの臍の下にある筋肉はまだ完全に閉じていません。そのため赤ちゃんが泣いたり、力んだりしてお腹に力が入ると、筋肉の隙間から腸が飛び出してくる場合があります。これが臍ヘルニアです。

5~10人に1人の割合にみられます(日本小児外科学会より)。また、先天性のものに加え、妊婦や肥満の人などお腹に強い力が加わりやすい人も、臍ヘルニアを発症することがあります。

飛び出してきたもの(でべそ)を指で触ると軟らかく、押してみると簡単にお腹の中に戻っていきます。ただ腹圧がかかればすぐまた出てきます。この現象は筋肉が発達してくる1~2歳ごろまでには治まります。約90%のお子さんで、自然に治るというデータがあります(日本小児外科学会雑誌第49巻7号より)。

成長しても腸が出てきた場合は、手術の対象となります。腹直筋を縫い合わせて閉じ、同時に窪みを形成します。また飛び出したまま筋肉が閉じてしまった場合も、見た目の影響を考慮して手術することもあります。臍突出症も含め女児に多く、形成外科では年間600弱の患者さんが手術を受けています。ほとんどが6歳以下、全身麻酔下に行われます。

注意したい臍ヘルニア嵌頓(かんとん)

基本的には痛みもなく自然に治まる臍ヘルニアですが、非常に稀に、飛び出した腸がねじれてしまう臍ヘルニア嵌頓が起きる可能性があります。

腸管が傷ついたりねじれたりすることで腹痛嘔吐を起こしたり、ぐずついたり食欲が落ちたりすることがあります。そういった症状が見られた場合は早急に小児外科を受診しましょう。

臍突出症とは?

とても可愛らしい赤ちゃん
出産後に臍の緒が取れるとその断端部(切り口)は乾燥して縮み、陥没した形で残ります。ただ臍の緒の名残(瘢痕)が飛び出してしまうこともあり、その状態を臍突出症といいます。

臍ヘルニアと違って臍の下の筋肉は閉じています。そのため腹圧の影響は受けず、引っ込むこともなく飛び出したままです。また飛び出しているものは腸ではなく臍の緒の瘢痕なので、痛みもなく生活を送る上で支障を来しません。

ただ「人前に出るのが恥ずかしい」といった見た目の点で気になるときは、手術で切除することが可能です。この場合は美容上の観点で行う手術であるため、自費診療となります。

まとめ

赤ちゃんの頃に現れる「臍ヘルニア」は、嵌頓を起こさない限りは問題ないため1~2歳ごろまで経過を見ていきます。途中で「赤ちゃんの様子がおかしい」となった場合は早急に医療機関を受診しましょう。また成長しても臍ヘルニアが治らない場合も、医師と相談しながら手術を検討します。

それ以外で「でべそ」の場合は、健康上の問題はありません。ただ見た目が気になってしまう人もいるかと思います。その場合は自費診療となってしまいますが、人目を気にすることなく生活を送る上で手術を考えてもいいでしょう。形成外科などが対象になります。