今回は、「障がい者の性の健康」をテーマに、医師・岩室紳也先生にご執筆をいただきました。「そもそも性とは、性教育とはなにか?」という議論を出発点に、求められている性教育のあり方や、性の健康(Sexual Health)といったテーマを展開しています。
「障がい者の…」と銘を打ちましたが、障がいを持つ方やその保護者・関係者はもちろん、障がいってよくわからない・日ごろ障がい者の方と接する機会がほとんどないといった方にも、ぜひ読んでいただければと思います。そして、自分は性に対してどんな知識を持っているか、どんな価値観をもっているか、どのようにふるまっているか、そしてその知識・価値観・ふるまいをどのようにして身につけてきたのか、いっしょに考えてみませんか?(いしゃまち編集部)
執筆者・岩室紳也先生より
このテーマの執筆を始めてから、実際に原稿を書き終えるまで半年以上かかりました。その間にもこのテーマでの講演をしてはいたものの、「障がい者の性」を考える前に、「健常者の性」を正しく理解していただく必要性を文章でどう表現するかということが非常に難しかったのです。
講演であれば、最初にこちらの意図を伝え、まずは自分自身の問題として「健常者の性」について考えてもらう方向に誘導することはそれほど難しいことではありません。しかし、インターネットの場合、そうはいきません。
インターネットのページは、そこに答えを求めてアクセスしてくる人が集います。その人たちに対して、「まずは健常者の性について理解をしてください」と持ち掛けても、「知りたいのは健常者のことではなく、障がい者のことだから、そこをきちんと説明して欲しい」と思われ、そこでページを閉じられてしまうのです。
今回の原稿について、ぜひ読み手の皆さんの感想、ご意見、ご批判をいただきながら、少しでもブラッシュアップしていければと思っていますので、よろしくお願いします。
1.「性」を考えるうえでの「健常」と「障がい」
①「健常者」と「障がい者」
②自分の体の性との向き合い方
③自分の性欲との向き合い方
④自分の性欲との向き合い方(実践編)
2.「イマドキ」の子どもたちと性。社会・環境による影響
①膣内射精障害という現代病
②アダルトビデオ、インターネットによる刷り込み障害
③犯罪予防は健康づくりから
④性の背景にある価値観の変化
3.知的障がい者の性への対応
- かゆいからおちんちんを触るんです
- 生まれた時から体を清潔に
- できる人が、できることを、できる時に
- 「ダメ、絶対」を繰り返し伝える社会を
- 知的障がいと男の性欲、性衝動
- ネットに刷り込まれる「誤った性意識」
- 褒められてうれしいから
- 性被害防止の観点から
- 確実な避妊のために
- Sexual Health and Rights