寝返りをうった際や、上を向いたとき、下を向いたとき、ぐるぐると目が回るようなめまいが生じることがあります。
耳の中の内耳という部分にある、耳石の影響によっておこると考えられている良性発作性頭位めまい症は、めまいの中でもよく見られ、自然に治ることも多いめまいです。

良性発作性頭位めまい症の症状や原因、治療についてくわしくみていきましょう。

目次

良性発作性頭位めまい症とは

良性発作性頭位めまい症では、頭を動かしたときにぐるぐると目が回るようなめまいを生じます。
めまいの程度は軽く、数十秒程度でおさまり、難聴や耳鳴りを伴うことはありません。
めまい疾患の中で最もよくみられるめまいです

めまいはぐるぐると目が回る回転性めまいが起こるといわれていますが、グラグラと揺れている感じがするような動揺性めまいがみられることもあります。

また、眼振(がんしん:眼球が自分の意思とは関係なく揺れ動くこと)や、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

良性発作性頭位めまい症は命に関わるものではなく、自然に治ることもある疾患です。
しかし、めまいが見られた場合には自己判断をせず、耳鼻科を受診してしっかりと診断を受けるようにしましょう。

良性発作性頭位めまい症が起こるのはどんな時?

良性発作性めまい症は目を開けているとき、閉じているときに関係なく見られます。頭の位置が動くときに起こりやすく、以下のようなときに回転性めまいがみられます。

  • 寝るとき
  • 起き上がるとき
  • 寝返りを打ったとき
  • 上にあるものを見るときや上にあるものをとるときなど、上を見上げたとき
  • 下にあるものを見るときや頭を洗うときなど下を向いたとき

良性発作性頭位めまい症の原因

耳の構造は外耳・中耳・内耳に分けられます。内耳の中には音を神経に伝える蝸牛(かぎゅう)と平衡器官をつかさどる前庭(耳石器)、半規管があります。
前庭には耳石といわれる小さな炭酸カルシウムの結晶が存在していて、重力や前方方向へ進む速さを感じ取っています。

良性発作性頭位めまい症は、前庭に存在する耳石の一部が剥がれ落ちて半規管に入り、リンパ液で満たされている半規管の中を浮遊している状態の際に、頭が動くことで引き起こされると考えられています。

良性発作性頭位めまい症の治療

良性発作性頭位めまい症は何もしなくても自然経過で治ることもあるため、場合によっては薬物治療で症状を軽減しつつ、経過をみることもあります。

経過観察をしても自然に治らないときには、半規管内を浮遊していると考えられる耳石をもとの前庭に戻すように、座った姿勢から横向きに寝たり、仰向けから頭を横に向ける姿勢をとったりする頭位治療が行われます。

頭位治療は耳石が半規管のどこにあるかによってとる姿勢が変わってくるので、病院で診断を受けてから適切な方法で治療を受けるようにしましょう。

そのほか、耳石が溜まりにくくなるように、仰向けに寝て右、左と顔を向ける寝返り運動と呼ばれる体操を行うことでもめまいの頻度が少なくなるとされています。首の痛みや障害がある方は身体ごと向きを変える方法で行うこともできます。

寝返り運動についても、めまいがあるからといって自己判断で行わず、良性発作性頭位めまい症と診断を受けてから主治医に相談して行うようにしましょう。なお、耳石は剥がれ落ちてもまた、生成されるので心配いりません。

まとめ

「めまい」の中には難聴がだんだん悪化するもの、脳の病気から起こるもの等もありますが、良性発作性頭位めまい症は自然に治ることも多いめまいです。良性発作性頭位めまい症と病院で診断を受けた場合には、命を脅かすような怖いめまいではないので、おおむね安心してもよいでしょう。頭を動かすとめまいが誘発されるので、頭や身体を動かすことに消極的になりがちです。しかし、運動不足は治癒を遅らせたり、再発の原因ともなるので、過渡に怖がらず、通常の日常生活を送ることを心がけましょう。

良性発作性頭位めまい症は、薬物治療でめまいの症状の軽減を図りながら自然治癒を待ったり、頭位治療によって半規管内に浮遊していると思われる耳石を元に戻す治療を行ったりします。

寝起きの際や上や下を向いたとき、振り返ったときなどにめまいがみられる場合は耳鼻科を受診し、適切な診断・治療を受けましょう。