年をとると老化現象として、白髪が増えてきたり、肌がたるんできたりなど、見た目に変化が現れてきます。そして、実は表に出ない部分も老化していきます。今回は人間にとって逃れられない眼の老化「老視(一般には老眼と呼ばれています)」について、老眼になったらどのようにすればよいのか紹介します。

目次

老眼のメカニズム

例えばオフィスで過ごしているとき、壁時計からポスター、パソコンの画面にレジュメの文字、休み時間にはスマホ、といろんなものを見ています。

当たり前の行動ですが、実は、距離の違うものを見るときに、無意識に距離を測って、それにピントがしっかり合うように、眼が無意識に(時には意識的に)ピントを合わせる力を使っています。

それを淀みなく次々と行うことにより、ものがスムースに見えているのです。特に、非常に近くを見るときに、ピントを合わせる力を多く使って見ています。

ものを見るとき、カメラに例えるとレンズの作用を持つ水晶体を、その厚みや位置を変化させることによってピントを合わせます。水晶体はもともと透明でぷよぷよしているので形も変えやすいのですが、歳を重ねると徐々に硬くなり、厚み変化によるピント合わせが難しくなります。

また、細かく水晶体の位置を変える毛様体筋の力も弱くなるため、いわばカメラやスマートフォンでのオートフォーカスができず、昔のピント合わせができない使い捨てカメラ「写ル◯です」状態になってしまいます。そのため、今までできていた「スムースにいろんな距離にピントを合わせきること」ができなくなってくるのが老眼です。

例えば、近くを見ていて遠くに視線をやると、ピントが合うまでに時間がかかる、今まで楽に見えていた近くのものが、目を凝らさないとはっきりしない、もしくは見えづらくなる、などの現象が起こります。

私は近眼だから老眼にはならない?

よく「遠視は老眼になるけど、近視は老眼にならない」という話を聞きますが、正解は☓(バツ)です。近視で裸眼だと、感じにくいだけで、眼鏡やコンタクトレンズ(以下、コンタクト)で遠くが見えるようにした状態では、老眼の状態はやはり現れます。「ならない」わけではありません。

ある程度の遠視の人は、子供の頃から視力が1.5や2.0などで一般には「眼がいい」といわれますが、実は遠くも近くも四六時中、無意識にオートフォーカスを行うよう努力をしています。だからピントを合わせる力が減ってくると、まず最も努力が必要な近くが見えづらくなるわけです。

それに対して、近視の人は裸眼の状態でぼーーっとしていても、何の努力もせずに近くは見えます。従って、年齢が上がりピント合わせの力が減っても残った力を使うため老眼を自覚するのが遅くなります。

ただ、遠くを見るために眼鏡やコンタクトを使用している場合は、遠くにピントを合わせているので、その状態で近くを見るときは、遠視の人と同様に、老眼に気付きやすくなります。

近視の人で眼鏡やコンタクトを装用したまま近くが見にくくなってきたら、それは老眼のお年頃です。

老眼の症状

ピント合わせの力は大人になるに従い下がるため、通常は40才を過ぎたころから感じ始めることが多いです。老眼になると次のような症状が現れてきます。

  • 近くが見えにくい
  • 遠くから近く、又は近くから遠くを見たときにピントが合うまでに時間がかかる
  • 新聞などが見にくく、距離を離すと見やすくなる
  • 近視の人が普段遠くを見るためにかけている眼鏡をかけてものを見ると近くのものがぼやけて見える
  • 近くのものを見ようとすると眼が疲れてくる

また、眼の疲れ(眼精疲労)が重なることで頭痛や肩こりなどを発症することもあります。

老眼になったら

指差し棒

人は誰もが年老いていくので、老いる過程で出てくる老眼にはならないようにする方法はありません。老いに対抗するぞというガッツは素晴らしいですが、眼に関しては老眼とうまく付き合って、生活するほうが楽に生きていけます。

老眼鏡

老眼鏡は、生活スタイルや用途によって処方が変わります。何の目的で使用したいのか(新聞を読むため、仕事でパソコンの作業をするため、など)を医師にしっかりと伝え、目的に合った老眼鏡の処方を受けましょう。

また、老眼鏡を初めて使われた方は、外したときにものがぼやけて見えるため「老眼鏡をかけるとかえって眼が悪くなった」と感じる方がいらっしゃいます。老眼鏡を使うことで眼が無理をしなくなったので、外した直後の見え方は老眼鏡をかけてリラックスしていた状態での本当の見え方なのです。今まで眼がなけなしの調節力を叱咤激励して、ようやく見えるようにしていただけなのです。

老眼に関しては、減ってしまって足りなくなったピント合わせの力を老眼鏡に肩代わりさせていると考えてください。老眼鏡をかけずに頑張る、という根性論では、眼の疲れに眼の奥の痛み、肩こり、頭痛とかえって不調が増えるだけです。若いうちの方が、老眼鏡にも慣れやすいのであまり構えずにトライしてみてください。

また、近視の人で、遠くが良く見えるようにしているコンタクトの人では、コンタクトの上から老眼鏡をかけることで、かなり近くでの作業が楽になります。

老眼は60歳代くらいまでは進行していきます。眼鏡をかけても疲れる、見えづらくなったら眼科を受診し、視力に合った老眼鏡の作り替えを検討しましょう。

遠近両用眼鏡

遠近両用眼鏡は、一つの眼鏡で遠くと近くの両方に焦点を合わせられます。

  • 上が遠くを見る用、下が近くを見る用になっている二重焦点レンズ
  • 多焦点レンズという、上下のレンズの境目がないタイプ

一見とても便利に聞こえますが、一つのレンズでは、遠くと近くをそれぞれ見ることのできる部分が限られるので、例えばパソコンなどを長時間行うなど、近くを見る時間が多いようであれば遠近両用よりも、パソコン用に度数を替えた老眼鏡の方が眼への負担は少なくなります。

遠近両用コンタクトレンズ

遠近両用コンタクトレンズは、遠くを見る部分と近くを見る部分とが一枚のコンタクトの中に組み込まれています。遠近両用眼鏡と同様、レンズの種類は複数あります。

これも一見遠くも近くも見える素晴らしいコンタクトのように聞こえますが、実際は遠く用の見え方と近く用の見え方が混在しており、脳が順応することによりなんとなく遠くも近くも見えるようにするものです。少し暗く感じたり、立体感が鈍く感じたり、視線を変えたときに一瞬ボケるなどがあり、慣れて快適に過ごせる人はいますが、遠くも近くもスッキリハッキリとはいかないのが現状です。

まとめ

40歳過ぎなどに発症する老眼は、私たちにとって避けては通れないものです。人によって生活環境は異なるので、それぞれに合ったベストな方法で、楽に、ストレスを少なくなる方法を探してみませんか?