「褥瘡」というこの文字、皆さんは読めますか?
これは「じょくそう」と読みますが、いわゆる「床ずれ」のことです。床ずれと聞くと、なんとなく聞いたことがあるかもしれませんが、一体どのようなものなのかイメージがつきますか?
ここでは、この床ずれについて詳しく述べていきたいと思います。

目次

床ずれとは?

床ずれとは、自分の力で寝返りや移動ができずに長期間の寝たきり状態などによって、体重で皮膚が長時間圧迫され血流が悪くなり生じる皮膚潰瘍のことです。皮膚の一部が赤くなったりただれたり、悪化すると皮膚の中の骨に近い組織や筋肉にまで潰瘍ができることもあります。

床ずれの症状は?

床ずれができてからの期間によって急性期慢性期に分けられます。

急性期(床ずれができてから1~3週間)

初期には、圧迫されていた皮膚の部分に赤みが出たりかゆみや痛みを伴います。また、ただれ・水膨れなどができたり、内出血になったりします。

床ずれのできた周囲の皮膚も傷つきやすく、出血しやすくなります。

慢性期(床ずれができてから3週間以降)

傷の深さによって症状は異なり、浅い床ずれの場合は死んだ組織はほとんどなく新しい皮膚を再生する力もまだあり、皮膚の赤みや水膨れなどで症状は済むこともあります。しかし、皮膚にできていた赤みが黒色に変わりより深い床ずれになった場合、皮膚の表面だけでなく皮下組織や筋肉・骨にまで傷が広がり大きな潰瘍を作ることもあります。

また感染症を引き起こした場合、全身状態によっては褥瘡部の感染が全身に広がり命に関わる可能性もあります

床ずれの原因は?

人間は、寝ている間や長時間同一の姿勢でいる場合も無意識に寝返りを打ったり、おしりや腰の位置をずらしたりして長時間の皮膚の圧迫を回避しています。しかし、麻痺のある人や寝たきり状態にある人はこの動作を行うことができません。そのため、長時間同じ部位が圧迫されることで、血流が悪くなり床ずれができやすい状態になります。

また、高齢者などで皮膚が弱くなっている場合、少しの摩擦やベッドやパジャマなどとの擦れの刺激でも簡単に床ずれはできやすくなります。

栄養状態が悪い場合も、脂肪や筋肉が減少し皮膚が薄くなったり痩せてしまったりすることで、骨が突出しその部位に床ずれができやすくなります。

床ずれができやすい場所は?

寝たきり状態や痩せている人などは、とくに骨が突出した部分にできやすいです。主な部位としては、肩甲骨・おしり・かかと・肘・腰骨・太ももの付け根・くるぶしなどです。

仰向け・横向き・座った状態など、体位によって床ずれができやすい部分は異なりますが、同じ姿勢で長時間いる場合に圧迫されている部分に床ずれができやすいということになります。

床ずれの予防法は?

看護師と患者

2時間毎の体位変換

床ずれ予防の最も基本ともいえます。寝たきりや麻痺のある人など自力で体の向きや位置を変えることができない人には、2時間毎に寝返りやおしりの位置をずらすなどの方法をとります。

また、在宅で介護している人などには、体圧分散寝具といって体圧を分散してくれるベッドの導入などを検討するといいでしょう。
介護保険を利用すると、エアマットレスやウォーターマットレスを、1~3割(収入に応じて変動)前後の金額で借りることができます。
具体的なレンタル料金や借りられる用具は、福祉用具貸与事業所によっても異なるので注意してください。

寝たきり状態の程度や体型に合わせた寝具を利用することで、より効果的に予防することができます。

摩擦ズレの予防

ベッドなどで寝たきり状態にある人は、シーツやパジャマなどの少しのよれなどでも床ずれを起こしやすいです。そのため、寝返りや寝ている場所を移動させたいときなど、無理に体を引きずって移動させるのでなく、きちんと体を浮かせて行うようにします。

おむつを装着している場合、発汗や失禁によっておむつ内がむれ、湿潤した皮膚は摩擦が生じやすく床ずれの原因となりやすいため、皮膚を清潔な状態に維持することも重要です。

また、ベッドや寝具などはきちんとしわを伸ばし、よれがないことを確認しましょう。

骨が突出している部分を浮かせる

体位変換を行っても、骨が突出している部分が圧迫されているとそれだけで床ずれはできやすくなります。そのため、座布団やクッション、タオルなどを用いて骨が突出している部分をベッドから浮かせるような体位にすることが必要です。

皮膚の清潔スキンケア

上記でも述べたように、皮膚の浸潤は摩擦を起こしやすく床ずれの原因となりやすいです。そのため、入浴や体拭き、おむつの場合はこまめなおむつ交換などで皮膚を清潔に保つことが重要です。また、皮膚が乾燥しすぎている場合も皮膚のズレが生じやすいため、乾燥しすぎている場合はクリームなどで保湿を行います。

栄養状態の改善

低栄養状態は床ずれを起こしやすく、また治癒も遅れがちです。そのため、普段から栄養バランスのとれた食事摂取などで栄養状態を改善・維持するようにしましょう。

まとめ

床ずれは、皮膚の弱った高齢者や麻痺のある人・寝たきり状態の人に多くできやすく、予防するためには周囲のサポートが必然となってきます。

在宅で介護をしている場合は訪問看護・介護などのサービスを受けることで負担を軽減し予防に努めましょう。これらのサービスを受けていない人は、できることから無理なく行える範囲で予防していくことも重要ですが、身体的負担が大きい場合は介護保険の利用やケアマネージャーなどを通してサービスの導入を検討するのがいいでしょう。