目次

難病は、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の第一条では「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」と定義されています。

からだの調子が悪くて病院に行ったとき、ご自身もしくはご家族が難病に指定されている疾病と診断されたら、何を思うでしょうか?「これからどうなるのか」「このまま働き続けることはできるのか」など、きっと不安は尽きないでしょう。今はインターネット上で簡単に病気について調べられますが、必ずしも正しい情報にたどり着けるとは限りませんし、不安がますます募っていく可能性すらあります。

そういった難病の患者さんやご家族のために各都道府県に設けられているのが、難病相談支援センターです。東京都には相談の拠点が3箇所あり、それぞれ順天堂医院(文京区本郷)内にある東京都難病相談・支援センタ、都立神経病院(府中市武蔵台)内にある東京都多摩難病相談・支援室、東京都広尾庁舎(渋谷区広尾)内にある東京都難病ピア相談室になります。今回は難病相談・支援センター(以下、センター)の運営体制や、患者さんたちから寄せられる悩みや相談について、センター職員の大野寿枝さん(看護師)にお話を伺いました。

東京都難病相談・支援センターの取組

難病相談・支援センターで企画された講演会

東京都難病相談・支援センターが企画する難病医療講演会・難病医療相談会のチラシ

センターの職員は看護師(2名)、ソーシャルワーカー(1名)、難病患者就労コーディネーター(1名)、事務職員(1名)の5名が従事しています。患者さんからの相談受付、難病に関する資料の提供、介護用ベッドやイスなど日常生活用具の展示・説明を行っています。また、専門医による難病医療講演会(年間約4回)、難病医療相談会(年間約8回)を実施しています。

メーンとなる相談事業(療養相談、就労相談)に関しては、まず相談者から悩みを聞き取ります。そして、情報を整理することや、正確性を確保するため即答が難しい場合は、後日改めて電話や面接で対応することもあります。匿名でも受け付けていて、相談件数は月に300件に上ります。都には大学病院等の専門医療機関が多く集まっていることから、他の道府県から相談が寄せられることもあります。

その内容は様々で、例えば「●●のような病気が疑われるので、確定診断を受けたいがどこに行けば良いのか」「セカンドオピニオンを受けたいので専門医を紹介してほしい」といった医療機関・専門医の情報を希望するケースがあります。この他に、「難病になったら働けないのではないか」と職場から理解が得られなかったり、治療のため退職した後、新たに就労を希望しても、自分の状態に合った職とのマッチングが難しかったりする方からの就労相談、患者さんが利用できる支援制度に関すること等の相談もあります。

相談については、病気のことであれば看護師、病気の方が利用できるサービス・制度についてはソーシャルワーカーなど、内容に応じて対応します。就労支援に関しては難病患者就労コーディネーターがハローワークに付き添いをする出張相談や、都内2箇所のハローワーク(渋谷、立川)に在籍する難病患者就職サポーターとの連携をとり、月1回第3金曜日にセンター及びハローワークとで合同の相談対応も行っています。

また、「同じ悩みを抱える当事者の体験談を聞きたい」といった相談には、難病ピア相談室を紹介しています。ここでは患者さん自身や闘病を支えるご家族が、ピア相談員として対応してくれます。

一人で悩まず、まずは相談を

センターに寄せられる相談は、複雑なものとは限りません。

「どういう疾病なのか」「どう治療していくのか」という、基本的な情報を知りたい方がいます。疾病そのものの情報が限られているだけではなく、「詳しく知りたくても『先生(担当医)に気軽に聞けなかった』『外来で待っている患者さんに遠慮して後からインターネットで調べたが、どれが正しい情報なのか分からない』との相談は多いです」(大野さん)という事情もあります。

また、診断後に「仕事や子育てはどうなるのか」「何から相談していいのか」と疑問が溢れて助けを求める方も多いといいます。こういった方々に対し、大野さんら職員の方は「お話を聞いていく中で、何から進めていけばいいのか優先順位を整理し、一つずつ解決策を一緒に考えていきます。」と、当事者では無いからこそできるフラットな立場で日々の業務に臨んでいます。そうした姿勢は、通院先など日頃利用する病院に聞いていいのか分からなかったり、聞きづらかったりする患者さんにメリットがあります。

 

大野さんは悩みを抱える患者さんに「とにかく一人で悩まず、まずは周囲の方や支援機関など、誰かに話してほしい。話をすることで、自分自身の中でも課題等が整理され、見えてきた問題に対して、どのような方向に進めばいいか、一緒に考え良い方向に進むよう本人の自己決定を支援していきたい。」と呼びかけます。

取材後記

病気にかかったときは、誰であれ不安な気持ちになるでしょう。難病に指定された疾病であれば、原因が分からず、完治するための治療法がないケースは珍しくないので、その不安は増すかもしれません。病院や周囲の人たちに相談できる環境にない場合は、ぜひ連絡してみてください。また、難病でない方も、病気への不安を常に抱えている人がいることをぜひ意識してみてください。

相談を希望される方は東京都難病相談・支援センター(03-5802-1892)まで

※肩書・記事内容は2018年3月5日時点の情報です。