新築住宅に住むようになってから体調が悪くなった…、住まいをリフォームしてから原因不明の体調不良が続いている…。現代の住まいには化学物質が多く使われており、住まいを快適にするためのものに身体が過敏に反応して具合が悪くなってしまう人もいます。今回は住まいが原因となって起こる「シックハウス症候群」について説明します。
シックハウス症候群とは?
現代の住まいでは、気密性の向上、建材、家具や日用品からの化学物質の増加などによる室内空気汚染等とそれによる健康影響が指摘されるようになりました。こういった住まいが原因の体調不良を総称してシックハウス症候群と呼びます。
ちなみに「シックハウス症候群」という言葉は和製英語で、欧米では「シックビル症候群」や「ビル病」と呼ばれています。
症状は?
シックハウス症候群では、以下のような症状が一例としてみられます。
- めまい
- 吐き気
- 頭痛
- 息切れ、咳、くしゃみ
- 目がチカチカする、涙が出る
- 喉の痛み
- 皮膚の乾燥、かゆみ、湿疹
- 疲労、倦怠感
- 腰、膝の痛み
- 手足の震え、冷え
- 耳鳴り
- 集中力や記憶力の低下
- 心臓のドキドキ、不整脈
人によって様々な症状がみられますので、他の原因と区別をつけることは非常に難しいです。
家から離れると症状が治まるような場合には、シックハウス症候群を疑っても良いかもしれません。
原因は?
シックハウス症候群のメカニズムはまだ解明されていません。家具、建材や日用品などから化学物質が放散されており、それがごく微量でも敏感な人は体調に影響を及ぼすようなことが考えられます。
そのほか、一般的な石油ストーブやガスストーブからは一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出されていますし、タバコの煙からも有害な化学物質が排出されています。加えてカビ・ダニ等のアレルゲンなど、様々な要因が人によっては体調不良の原因となると考えられています。
家族の中で一人だけ発症することも
シックハウス症候群は特定の建物にいれば誰もが発症するわけではなく、体内に吸入した化学物質の量が、その人が持っている化学物質の許容量よりも多くなってしまうことによって発生すると考えられています。この許容量は個人によって異なるため、シックハウス症候群を発症するのにも個人差があり、同じ部屋にいても全く影響を受けない方もいれば敏感に反応してしまう方もいます。
また、発症のタイミングには季節も関係しており、例えばホルムアルデヒドは、人体の粘膜に対して刺激が強くぜん息などの気管支炎やアレルギー性皮膚炎などを引き起こすことがあり、高温、高湿であるほどたくさん発散する特徴があるので、冬よりも夏に注意が必要です。
特に注意が必要な化学物質
シックハウス症候群の発生には摘発性有機化合物が関わっていると考えられているので、厚生労働省が13の化学物質に室内濃度の指針値を定めています。指針値とは「現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても健康への有害な影響を受けないであろうと判断される値」のことです。
化学物質 | 主な用途 | 備考 |
ホルムアルデヒド | 合板 パーティクルボード 壁紙用接着剤 防腐剤 |
皮膚、目、鼻、喉等の粘膜への刺激 頭痛 めまい 高濃度の物質を吸い込むと死に至ることもある |
アセトアルデヒド | ホルムアルデヒドと同様、 一部の接着剤や防腐剤 |
鼻、喉に刺激がある 目に入ると結膜炎や目のかすみがおこる |
トルエン | 内装材などの 施工用接着剤 塗料等 |
高濃度になると目や気道に刺激が起こり、 疲労、吐き気、中枢神経にも影響が出る。 重症になると精神錯乱、意識低下は不整脈をおこすことがある |
キシレン | 内装材などの 施工用接着剤 塗料等 |
高濃度になると目や気道に刺激が起こり、 疲労、吐き気、中枢神経にも影響が出る。 重症になると精神錯乱、意識低下は不整脈をおこすことがある |
エチルベンゼン | 内装材などの 施工用接着剤 塗料等 |
高濃度になるとめまいや意識低下等の中枢神経症状が現れる |
スチレン | 内装材などの 施工用接着剤 塗料等 |
濃度が濃くなると不快な臭い、 目や鼻に刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになる |
パラジクロロベンゼン | 衣類の防虫剤 トイレの芳香剤等 |
高濃度になると目や鼻に痛みを感じることがあり、 腎臓・肝臓への障害の可能性が考えられる |
テトラデカン | 灯油、塗料等の 溶剤 |
高濃度で刺激性、麻酔性があるとされている |
クロルピリホス | シロアリ駆除剤 | 倦怠感、頭痛、めまい、吐き気 重症になると縮瞳、意識混濁、けいれんなどを起こすことがある |
フェノブカルブ | シロアリ駆除剤 | 高濃度で倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、腹痛等を起こし、 重症になると縮瞳、意識混濁等を起こすことがある |
ダイアジノン | 殺虫剤 | 倦怠感、頭痛、めまい、吐き気 重症になると縮瞳、意識混濁、けいれんなどを起こすことがある |
フタル酸ジ-n-ブチル | 塗料、接着剤等の 可塑剤 |
高濃度になると目、皮膚、気道に刺激を感じる |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 壁紙、床材等の 可塑剤 |
長時間の接触で皮膚炎を起こす |
まとめ
シックハウス症候群とは、主に住まいが原因となって起こる体調不良のことを呼んでいます。症状を引き起こす要因は様々あり、建材などからの化学物質の放散、暖房器具からの燃焼ガス、室内空気循環の悪化、化学物質に対する感受性の個人差などが挙げられます。症状は、頭痛、めまい、吐き気、皮膚炎など人によって様々あり、風邪などの他の病気と区別することが難しい病気です。