神経と一口に言っても、私たちのからだのなかには様々な神経系統が存在します。それぞれの神経系統は、別々の作用によってからだの機能をコントロールしています。ここでは、そのなかでも自律神経系に含まれる交感神経副交感神経について説明します。

目次

からだにはどんな神経があるの?

からだの中には縦横無尽に様々な神経が張り巡らされています。それらの神経は解剖学的に大きく中枢神経末梢神経という二種類に分けることができます。中枢神経には脊髄が含まれ、文字通り全身の機能をコントロールする中央指令室のような役割を果たしています。一方、末梢神経とは中枢神経から出る分枝で、からだの各部に情報を送る仕事をしています。中枢神経が情報を生み出すコンピューター、末梢神経がその情報を送る配線だとイメージすると良いかもしれませんね。

末梢神経はさらに体性神経系自律神経系に分けられます。体性神経系は感覚神経運動神経で構成されます。感覚神経は体の各部で生じた感覚を脳に伝える働きを担い、運動神経は脳の意思通りに筋肉を動かす働きをします。そして自律神経系ははじめに説明したように交感神経副交感神経で構成されています。

自律神経系ってなに?

自律神経系とはいったい何なのでしょうか?普段の生活であまり耳にすることはありませんが、病院やテレビの健康番組などで自律神経失調症などという病気を聞いたことがある方もいることでしょう。

自律神経系とは簡単に説明すると、体内環境のバランスを一定に保つために働く神経系のことです。日々の生活のなかで、気温の変化やストレス、プレッシャーなど様々な要因が私たちのからだを襲います。その都度体内の環境も変化してしまっていては生命を維持することは不可能です。自律神経系は、その様な要因から私たちのからだを守る役割を果たしているのです。

自律神経系には交感神経副交感神経という二種類の神経が存在します。それぞれの神経はからだの各種の臓器を同時に支配しており、相反する作用をバランス良くもたらすようにできています。

交感神経と副交感神経

では、交感神経と副交感神経はどのようにそれぞれの臓器を支配しているのでしょうか?ここでは、代表的な作用について確認していくことにしましょう。

  • 瞳孔:交感神経により瞳孔は開き、副交感神経により縮小します。
  • だ液の分泌:交感神経によりだ液の分泌は減少し、副交感神経により増加します。
  • 心臓の拍動:交感神経により拍動数は増加し、副交感神経により減少します。
  • 血圧:交感神経により血圧は上昇し、副交感神経により低下します。
  • 食物の消化:交感神経により消化は停滞し、副交感神経により促進されます。
  • 排尿:交感神経により排尿は抑制され、副交感神経により促進されます。

これらの作用をみて何か気付くことはないでしょうか?交感神経は緊張を強いられる場面で機能し、副交感神経はリラックスしているときに機能しているのです。実際、緊張するとだ液が出なくなって口が乾き、心臓がドキドキするのは誰もが経験したことがありますよね。食物の消化や排尿も、緊張下で無理して行う必要がない行動であるため、自律神経によって抑制されるのです。

自律神経のバランスが崩れるとどうなるの?

自律神経のバランスが崩れるということは一体どういうことなのでしょうか?交感神経と副交感神経のコントロールがうまくいかず、バランスが崩れてしまうと、様々な不快症状が生じます。これが自律神経失調症です。緊張を強いられていないのに、だ液が出ずに口が乾いたり、心臓がドキドキしてしまうのです。一般的に閉経後の女性などでよくみられますが、これはホルモン分泌など体内環境が大きく変化する影響が、自律神経の働きにも密接に関係していることが原因と考えられています。

また、ある種の神経疾患(パーキンソン病、多系統萎縮症等)や、糖尿病における合併症として自律神経の障害が起こることが知られています。自律神経の症状はある日突然起きるという性質ではなく、徐々に現れ経過が長期間に渡るので、原因になっている病気に気づくことが遅れる場合もあります。自律神経の症状に気づいた時点で神経内科等の専門医を受診されることをおすすめします。

まとめ

わたしたちの体内には、様々なタイプの神経が張り巡らされています。それらのタイプをきちんと分類し、理解することは非常に難しいです。自律神経についてもこの記事によってより理解が深められると良いですね。