暑い夏が終われば、秋、冬とどんどん寒くなり、感染症にかかりやすい季節になってきます。この時期に妊婦さんが悩まれるのが、インフルエンザなどの予防接種を受けるかどうかです。
特にインフルエンザは、妊娠していない時でも38℃以上の高熱の他、辛い症状が続きます。妊婦さんがインフルエンザにかかると重症化しやすく、様々な合併症を起こす場合もあります。

ここでは妊婦さんでも接種が可能なワクチンとそうでないワクチンのご紹介、特にインフルエンザワクチンについてお話ししたいと思います。

目次

ワクチンの種類

予防接種に使われるワクチンには、下記の2種類があります。

生ワクチン

生きているウイルスや細菌を弱らせてつくったワクチンです。
主なワクチンとしては、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、BCG、ロタウイルス、生ポリオなどがあります。

不活化ワクチン

ウイルスや細菌を殺処理し、感染力や毒力をなくしてつくったワクチンです。
主なワクチンとしては、百日咳、ジフテリア、破傷風、不活化ポリオ、日本脳炎、インフルエンザ、インフルエンザ菌b型、B型肝炎、肺炎球菌、ヒトパピローマウイルスなどがあります。

妊婦さんが接種できるワクチン

上記の2種類のワクチンのうち、生ワクチンはウイルスが赤ちゃんへ移行する危険性があるため、妊婦さんに接種することは禁忌とされています。

不活化ワクチンは、妊婦さんにも接種可能です。ただし流行が予想されたり、感染症にかかりやすい環境にあるなど、ワクチンを打つ必要性が高い場合に接種することが望ましいです。
不活化ワクチンでも、子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルスの予防接種は、妊娠中に接種する有効性や安全性が確立されていないため、接種できません。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、妊婦さんでも接種が可能です。

インフルエンザワクチンは打つべき?

妊婦さんとワクチン

インフルエンザワクチンは、希望すれば接種することができます。
ワクチン接種は妊婦さんの意思次第ですが、下記のようなことを考慮して選択すると良いでしょう。

1.妊婦さんはインフルエンザに感染すると重症化しやすい

妊婦さんがインフルエンザに感染すると、気管支炎肺炎など重篤な合併症を起こしやすくなります。

特に、妊娠週数が進むに従って、心肺機能への負担はそれでなくても増しているため、出産が近い人ほど重症化しやすく、命の危険を伴う状態になることもあります。

また、重症化すれば赤ちゃんに下記のような影響が出ることもあります。

  • 神経管閉鎖障害や心奇形などの先天奇形
  • 流産
  • 早産
  • 低出生体重児
  • 子宮内胎児発育遅延
  • 胎児死亡

2.ワクチンの有効性

上記のように、妊娠中にインフルエンザに感染することは、赤ちゃんの成長・発達に悪影響を及ぼす可能性があり、最悪死に繋がる恐れがあります。そんなインフルエンザを予防するもっとも有効な手段がインフルエンザワクチンの接種です。

インフルエンザワクチンは、妊婦さんが接種することで、赤ちゃんにもインフルエンザの予防効果があることがわかっており、その効果は生後6か月まで持続するとされています。

3.危険性について

妊婦さんと胎児に対しての危険性は、妊娠全期間を通して極めて低いとされています。

日本のインフルエンザワクチンには、防腐剤としてエチル水銀(チメロサール)を含むものが入っているものと、入っていないものがあります。

水銀と聞くと少し驚くかもしれませんが、インフルエンザワクチンに含まれるエチル水銀の量は極少量で、赤ちゃんへの影響はないとされています。

また、アメリカではエチル水銀が自閉症の増加に関係しているという仮説が提唱されましたが、様々な研究機関が調査した結果、エチル水銀と自閉症の因果関係は否定されました。

しかし、世界保健機関(WHO)ではエチル水銀をワクチンにできるだけ添加しない方向でいくことが決定されたことも事実です。
気になる方は、エチル水銀の含まれていないワクチンを接種してもらうよう病院に相談してみましょう。

すでに周囲でインフルエンザの流行が見られる場合など、緊急性があり、エチル水銀の含まれていないワクチンの入手に時間がかかる際には希望が受け入れられないこともあります。
インフルエンザワクチンを受けるか受けないかも含め、流行する前にかかりつけの産婦人科に事前に相談しておくことをおすすめします。

インフルエンザワクチンを打つタイミング

インフルエンザワクチンは、その効果を発揮するのに接種後2~3週間程度必要になります。その後3~4か月間の予防効果を発揮しますので、ワクチン接種時期は10~11月がベストです

また、産後、授乳中でもワクチンの接種による赤ちゃんへの悪影響はないとされているため、インフルエンザワクチンの接種は可能です。

まとめ

インフルエンザをはじめ、妊娠中にはできるだけ感染症にはかかりたくないものです。
妊娠中にワクチン接種できない感染症については、妊娠前に抗体の有無をチェックすることで防ぐこともできます。

特に風疹は妊婦さんがかかると、赤ちゃんに先天性心疾患難聴白内障を引き起こす危険性が高い感染症です。妊娠前の方でこれから妊娠を希望される方は、風疹の抗体があるかをチェックし、抗体がなければ予防接種を受けることを強く勧めます

インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種できますので、妊娠・出産の時期がインフルエンザ流行時期と被る場合には、予防接種を受けておくことが望ましいです。かかりつけの産婦人科に、接種時期やタイミングを相談してみましょう。