女性らしさを増すために女性ホルモンを増やそう!という内容の記事や特集はよく目にされると思います。女性の美と健康=女性ホルモンという認識が広がっていますが、そもそも女性ホルモンとはなにか、説明できる人は少ないかもしれません。ここでは、女性ホルモンの種類や役割についてお話ししたいと思います。

目次

女性ホルモンとは?

女性ホルモンとは、女性のライフサイクルに大きく関わるホルモンで、エストロゲン(卵胞ホルモン)プロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンがあります。

2種類とも、主に卵巣から分泌されるホルモンで、女性らしい体を作る作用や、生理周期の調整作用、妊娠時には妊娠状態を維持する作用などがあり、そのために、それぞれ下記のような役割を持っています。

エストロゲンのはたらき

  • 思春期の乳管(乳汁が通る道)の発育
  • 子宮内膜の増殖・肥厚(排卵に向けて子宮内膜をふかふかにする)
  • 頸管粘液を精子が通過しやすい状態に変化させる(さらっとして量が多くなる)
  • 基礎体温の低下(排卵前の低温期の状態)
  • 骨量の維持で骨粗鬆症になりにくくなる
  • コラーゲンの合成促進、シワやニキビをつくりにくくする
  • 血管や血液の若々しさを保つ
  • 妊娠時の子宮筋の発育・増大、乳管の増殖

プロゲステロンのはたらき

  • 乳腺(乳汁を作るところとその通り道)の発育(生理前に胸が張る原因)
  • 子宮内膜の分泌期様変化(受精卵が来た時のために着床できるように子宮内膜をさらにふかふかにして保つ)
  • 頸管粘液を精子が侵入しにくい状態にする(ドロッとして量が少ない)
  • 基礎体温の上昇(排卵後の高温期の状態)
  • 妊娠時の子宮収縮の抑制、乳腺の増殖

女性ホルモンの調整

エストロゲンとプロゲステロンを分泌するのは主に卵巣ですが、量や時期の調整を行っているのは脳です。脳の視床下部-下垂体という、ホルモンの監視チェック機能を持つ場所が、つねに全身のホルモンの状態を管理しています。

必要な時期に必要な量のホルモンを出させるように、視床下部から脳の下垂体という場所に性腺刺激ホルモン放出ホルモンという指令が出されます。
さらにその指令を受けた下垂体から、性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体化ホルモン(LH)が卵巣に向かって出され、卵巣はエストロゲンやプロゲステロンを分泌するという流れになっています。

生理不順など婦人科疾患の原因に、脳の病気やストレスが関わってくるのはこのためです。

女性ホルモンとがんのリスク

女性ホルモンは女性の体を整えるための良い効果がありますが、バランスが崩れることで婦人科疾患や女性のがんの発生に影響することがわかっています。

エストロゲンの量が多すぎる状態が続いたり、エストロゲンに対してプロゲステロンの量が少ない状態が続いたりすることで、エストロゲン依存性疾患と呼ばれる様々な婦人科疾患やがんの原因となってしまいます。

主なエストロゲン依存性疾患は以下のとおりです。

  • 乳腺症(乳房の良性の病変)
  • 乳がん(乳房の悪性腫瘍)
  • 子宮内膜症(本来、子宮の中にしか作られない子宮内膜が卵巣や腸、膀胱などにも発生し、生理周期に合わせて剥がれて出血を起こす病気)
  • 子宮腺筋症(子宮内膜が子宮の筋肉の中にできる病気)
  • 子宮筋腫(子宮筋の良性腫瘍)
  • 子宮内膜増殖症(子宮内膜が過剰に増殖する病気で、子宮体がんのリスクが高くなる)
  • 子宮体がん(子宮内膜の悪性腫瘍)

エストロゲン依存性疾患になりやすい状態は?

肥満の女性

上記のようなエストロゲン依存性疾患が起こりやすくなるケースとして、下記の項目にあてはまる方はリスクが高くなると言われています。

肥満

エストロゲンは、主に卵巣から分泌されますが、脂肪からも少量分泌されるため、脂肪の多い肥満体の方は必然的にエストロゲンの量が多くなってしまいます。

初経が早い

初経の開始は平均12歳程度とされています。初経が早く来るほどエストロゲンにさらされる期間が長くなるため、エストロゲン依存性疾患になりやすいとされています。

出産回数が少ない

プロゲステロンの量が増える妊娠期と、エストロゲンの量が少なくなる出産後の授乳期の期間が少なくなることで、エストロゲンにさらされる期間が長引きます。不妊や子どもは作らない方針の方は、さらにその期間が長くなります。

また、出産経験があっても30代以降で初めて出産した場合には、リスクになるとされています。

卵巣機能異常

無排卵周期症(生理のような出血はあるが、排卵を伴わない状態)や多嚢胞性卵巣症候群(卵子の発育が抑制され排卵が難しい状態)などの疾患は、排卵がなくプロゲステロンの分泌がない状態や、エストロゲンの分泌がだらだら続く状態を引き起こします。

エストロゲン製剤の長期投与

卵巣機能異常やホルモン補充療法などでエストロゲン製剤が使われますが、長期投与によって、エストロゲンが過剰な状態が続きます。

最近では、妊活サプリやバストアップサプリ、更年期対策サプリなどのサプリメントに、エストロゲンやエストロゲンに似た作用を持つ成分が入っているものが、インターネットなどで簡単に入手できるようになりました。
特に海外のサプリメントには、有効性・安全性が確立されていないものもあり、安易なサプリメントの服用、連用はおすすめできません
国内で認可されているもの(個人輸入でないもの)は薬剤ほどの効果はないものですので、服用用量を守れば継続的に使っても問題ありません。

エストロゲン産生腫瘍

卵巣の良性腫瘍の中には、腫瘍細胞からエストロゲンを産生するものがあります。

まとめ

女性ホルモンは女性にとって必要不可欠なホルモンですが、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のバランスが崩れた状態は、様々な婦人科の病気を起こす引き金にもなります。

エストロゲン依存性疾患になりやすい状態に当てはまった方は、そのリスクを理解して、年に1回は婦人科検診を受けるようにしましょう。
そして、不正出血や月経不順などの異常がある場合には早めに治療を受けるようにしましょう。