親知らずを残しておくと後で痛みや腫れなどのトラブルが出る、とはよく耳にすることだと思います。実際に、一番奥に生えてくる親知らずは歯ブラシも届きにくく、虫歯や歯周病になるリスクが高いです。しかし、すべての人が親知らずを抜くわけではありません。

今回は早めに抜いたほうがいいケース、抜かなくても様子を見られるケースについてお話していきます。もちろん最後の判断は歯医者さんに任せる方が良いですが、納得して歯医者に行くためにも、ご参考までに読んでみてください。

※本記事に掲載されているレントゲン写真は篠田歯科さまからご提供いただいているため、転載を禁止いたします。

目次

ほんとに抜かなきゃならないの?

「残せるものなら残したい」。こう思う方がほとんどではないかと思います。しかし、残念ながら中にはどうしても残さない方がいい、残しておくとデメリットしかないケース、というのが存在します。その一方残しておいても大丈夫な場合も存在します。なるべく残しておきたい人は「なんとか残せないか?」とどうしても考えますよね。それではどのような場合に抜いたほうがいいのか、抜かなくても様子を見られるのかについて解説していきます。

できるだけ早めに抜歯をした方がいいケース

これは残しておくことによってデメリットしかないケースです。

親知らずが一部露出しているが、これ以上生える見込みがない

親知らずが斜めになっていたり、横に倒れている場合など、手前の歯や骨にひっかかってこれ以上出てこない場合は残すリスクが非常に高いと言えます。虫歯や歯周病にかかってトラブルをおこすことはほぼ免れませんのでできるだけ若いうちに抜いておいた方がよいでしょう。

レントゲン写真

親知らずが骨、歯ぐきの下に埋もれているが、手前の歯を強く押している

親知らずが露出はしていないけれども、手前の歯を強い力で押していて、歯並びを悪くする可能性がある場合や、隣の歯の根っこを吸収してしまう場合です。

そのようなことが起こる前に抜いたほうが良いでしょう。

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親知らずの周りに嚢胞ができている

骨に埋伏した親知らずの周囲にレントゲン上で袋状の影が見えることがあります。これを嚢胞と呼びますが、一般的に症状はありません。しかし、感染を起こすと顎の骨の腫れや痛みを起こし、大きくなると周囲の歯の根っこを吸収したり、歯を圧迫して歯並びがずれたりすることもありますので親知らずとともに摘出が必要となります。また、これはレントゲンで腫瘍との鑑別が難しい為、その意味でも摘出して病理検査を行う必要があります。

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親知らずの噛み合う相手の歯がなく、それによって歯ぐきや頬粘膜を傷つけている

噛む相手のいない歯は相手を求めて移動します。このため向かいの歯ぐきや頬に当たって痛みを引き起こすことがあります。この場合抜かないと症状が改善しないこともあります。

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親知らずがひどい虫歯になっている

ひどい虫歯になってしまった場合、残す方向で治療をするのはかなり困難であるということと、治してもまたプラークコントロールが悪く虫歯になる危険性が非常に高いです。

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抜かなくても様子を見られるケース

親知らずがきれいにまっすぐ生えている、また生える見込みがある

親知らずがまっすぐ生えていてきちんと噛んでいる、またはその見込みがある場合です。

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残す場合のメリット

  • きちんと噛めば、ほかの歯のように役立つことができる。
  • 残しておくことによって、手前の歯などが抜歯になった場合にその部分に移植して使ったり、またはブリッジや入れ歯の支えにすることができる。
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残す場合の注意点・デメリット

  • 歯ブラシが届きにくく虫歯や歯周病になりやすいことがあり、その場合には他の歯よりも丁寧な清掃が必要になります。
  • まだ生えている途中である場合、親知らずは生えるスピードが遅いことが多く、生え切るまでに何度も炎症を起こして腫れや痛みを繰り返しやすい。

親知らずが歯ぐき、骨の中に埋まっている

親知らずが歯ぐきから露出していない場合です。

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残す場合のメリット

  • 口腔との交通がなく細菌感染がない場合はわざわざ痛い思いをして抜く必要がありません。

残す場合の注意点・デメリット

  • 歯ぐきの下に埋もれていても、骨に完全に埋まっていない場合には親知らずの歯冠(頭の部分)に深い歯周ポケットを作っていることがあります。この場合は感染を起こすことがあり、抜歯をした方がよいこともあります。
  • この場合のような深い位置に埋伏しているケースでは、抜歯が非常に難しく時間がかかったり、術後の症状が強く出る、また顎の骨の中の大きな神経や血管を損傷したりする可能性があります。

まとめ

親知らずを抜歯した方がいいかどうかは親知らずの状態だけでなく、その人の置かれている状況、体の状態、口の中の衛生状態、他の歯の状態、年齢などさまざまな条件によって変わってくるものです。親知らずに不安を持ったらまずは歯科医師に状態を確認してもらい、よく話し合ったうえで抜歯するかどうかを決めていくのが良いでしょう。