胎盤は子宮の壁に付着して、お母さんから赤ちゃんに栄養や酸素などを供給し、有害なものを通さないようにブロックするなど、様々な働きを持っています。
赤ちゃんを出産後、胎盤は子宮の縮小に伴って剥がれて体外に排出されるのですが、癒着胎盤という状態になっていると、自然には剥がれず大出血を起こす場合があります
ここでは癒着胎盤になぜなるのか、帝王切開分娩との関連性、治療方法などについてお話ししたいと思います。

目次

癒着胎盤ってなに?

癒着胎盤とは子宮の壁に胎盤が深く付着してしまい、子宮の筋層の部分にまで入り込んでいる状態です。
赤ちゃんを出産すると通常は胎盤も排出されますが、癒着胎盤の場合には出産後、胎盤が自然には剥がれません

発生頻度は非常にまれですが、近年、帝王切開率の上昇によってこの50年で10倍増加したといわれています
また、前置胎盤(ぜんちたいばん:胎盤の付着位置が低すぎ、子宮口を塞ぐ形となっていること)になったことのある方は、次回以降の妊娠で癒着胎盤になる確率が2000倍に増加するといわれているため注意が必要です。

癒着胎盤の分類

癒着胎盤は子宮の筋層への侵入程度から3つに分類されます。下にいくほど重症度が高く、子宮から胎盤を剥がすことで大出血を起こす可能性が高いため、子宮を摘出することもあります。

楔入胎盤(せつにゅうたいばん)

子宮筋層表面までの侵入で筋層内には侵入していないもの。

嵌入胎盤(かんにゅうたいばん)

子宮筋層内へ深く侵入しているもの。

穿通胎盤(せんつうたいばん)

子宮筋層からさらに子宮漿膜面(子宮の表面)に達するもの。膀胱へ浸潤する場合もあります。

癒着胎盤はなぜおこるの?

本来、子宮は子宮内膜で表面が覆われ、子宮筋層にまで胎盤が侵入しないようにガードされています。
しかし帝王切開分娩や前置胎盤などで、内膜の一部が欠損し発育が不十分な箇所がある場合、そのガード機能が有効に働かないことがあります
その結果、胎盤の子宮筋層への侵入を許してしまい、癒着胎盤になると考えられています。

癒着胎盤になりやすい人は?

たばこと妊婦-写真

下記の状態に該当する方は、癒着胎盤になる危険性が高いと言えますので、そのことを知っておきましょう。

  • 前置胎盤
  • 帝王切開分娩の既往
  • 子宮内容除去術(人工妊娠中絶や流産手術)の既往
  • 高年齢妊娠
  • 頻産婦(出産回数の多い方)
  • 多胎妊娠(双子や三つ子以上の妊娠)
  • 喫煙妊婦
  • 子宮筋腫手術既往(子宮筋腫核出術)

特に帝王切開術を受けたことのある方が前置胎盤になった場合、癒着胎盤になる確率が高くなるため、輸血や子宮摘出の可能性がでてきます。

治療方法について

赤ちゃんを出産後30分経過しても胎盤が自然に出てこない場合、癒着胎盤が疑われます
大量出血に備えて輸血ができる太い針で点滴ルートを確保した後、胎盤用手剥離(医師が腟から子宮内に手を入れて胎盤を剥がす方法)を試みます。ここで胎盤が剥がれて出血が落ち着けば子宮を温存することが可能です。

胎盤用手剥離が不可能な場合(無理に剥がすと大出血を起こしてしまうため危険です)や、出血が止まらない場合などは子宮摘出が行われることもあります。
出血を少なくする方法として、経カテーテル的動脈塞栓術で子宮へ血液を送る太い血管を遮断する方法があります。

まとめ

癒着胎盤は、出産後に胎盤が出てこないことで発覚することも少なくないため、出産後に赤ちゃんと対面した後に大出血を起こして緊急事態になるケースもあります。

ある程度リスクを知っておくことは大切ですので、癒着胎盤になるリスクの高い状態をぜひ知っておいてください。