「タバコを吸うのは健康に良くない」ということは、大多数の方がご存知だと思います。しかし、「自分の身体のことだからまあいいや」放っておいてと思っている人は多いのではないでしょうか。実はタバコの影響は、吸っている本人以上に周りにいる人に出ています。「自分の身体のことだから」では済まされないことを、これから説明していきます。自分が吸ったタバコが、周りの人へどんな影響を及ぼしているか知ってください。

目次

タバコの煙の種類:副流煙とは

タバコの煙には、以下の3種類があります。

  • 主流煙:本人が吸い込む煙
  • 呼出煙:吸った人が吐き出す煙
  • 副流煙:タバコの先から出ている煙(火を付けた時からゆらゆらと立ち上っている煙のことです)

このうち呼出煙や副流煙は、本人だけでなく周りにいる人達も吸ってしまうことになります。タバコを吸ってはいないのに、副流煙によって煙を吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と呼びます。

タバコには4000種類の化学物質、約200種類の有害物質、約60種類の発がん物質が含まれています。そして副流煙には、主流煙の何倍もの有害物質が含まれていることが分かっているのです。

厚生労働省「喫煙と健康」第2版によると、主流煙より副流煙の方が以下の物質を多く含んでいるといいます。

  • ニコチン(血管を収縮させて血行を悪くする):2.8
  • タール(数十種類の発がん物質を含んでいる):3.4
  • 一酸化炭素(組織の酸素欠乏を起こす):4.7

タバコは身体に悪いといいますが、吸っている本人以上に、周りの人達に大きな影響を与えているのです。

副流煙で起きる病気

立ち上る副流煙

副流煙の問題については1981年に、国立がん研究センターの平山雄博士が、40歳以上のタバコを吸わない妻を持つ喫煙者を追跡調査して論文を出していました。結果は、喫煙習慣と妻の肺がん死亡率に因果関係があるというものでした。

この論文で記されている、受動喫煙と死因とされた肺がんとの因果関係について、病理組織学的な裏付けがなされていない、また家や職場の広さや換気などが考慮されていないために、受動喫煙が悪いというのは「嘘」であるという情報が流れているのを目にすることがあります。でもそれは間違った情報です。平山博士以降も以下のような研究がされており、受動喫煙による健康被害があるのは明らかです。

 タバコの副流煙による急性の症状

受動喫煙とがんに関するデータ

受動喫煙による肺がん・虚血性心疾患での死亡数:年間6800
厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室より)

副流煙とがんとの関係

確実に健康に影響がある疾患 可能性がある疾患
成人 肺がん 脳卒中・副鼻腔がん・乳がん
虚血性疾患 アテローム性動脈硬化症
鼻への刺激 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性呼吸器症状・喘息・肺機能低下
子供 中耳炎 脳腫瘍
呼吸器系症状・肺機能低下 リンパ腫
乳幼児突然死症候群 喘息・白血病
気管支炎肺炎
胎児 低出生体重児・早産 流産
乳幼児突然死症候群 先天性奇形(口蓋裂)
前置胎盤・破水・早期胎盤剥離 子宮外妊娠

出典:厚生労働省/受動喫煙防止対策を参考にいしゃまち編集部が作成

副流煙による被害を避けるには?

「三次喫煙」にも要注意

小さなお子さんがいる家庭でタバコを吸ってはいないでしょうか?違う部屋で吸ったり、換気扇がある場所で吸ったりしているから大丈夫と思っている方もいるかもしれません。ですが、服や部屋のカーテンなどについた臭いでも被害は起こるのです。

これを三次喫煙といいます。タバコを消した後の残留物から有害物質を吸いこんでしまうことで、残留受動喫煙ともいわれます。空気中ではなく、喫煙者の髪や服、室内の家具などに化学物質が残ってしまうことにより起こるので、換気扇や窓を開けることで換気をしたとしてもその危険性は無くなりません。

お子さんがいる家庭なら、できるだけ禁煙するのが望ましいです。どうしても禁煙できず吸うとしても、屋外で喫煙して、服を着替えてから子供と接するようにしましょう。

知らない間に吸ってしまうことを防ぐために

副流煙は、知らない間に吸ってしまっていることがあります。分煙になっている飲食店などでも、煙は完全にシャットアウトできてはおらず、いつの間にか汚れた空気を吸っていることになります。小さなお子さんを連れて外食するのであれば、分煙ではなく完全禁煙のお店にした方が良いでしょう。

まとめ

健康に悪いと言われても、「自分の身体だからまあいいや」ではないことが分かっていただけたでしょうか。喫煙は、周りにも健康の被害を与えてしまいます。タバコを止めるのには努力が必要ではありますが、あなたのその努力によって、周囲の人たちの健康を守ることができるのです。