注射は、病院の検査・治療で受けることが多い処置のひとつです。実は注射にはいろいろな種類があり、それぞれ特徴があります。また、注射といえば痛いイメージですが、なぜ注射は痛いのでしょうか?注射の種類や、採血が痛い理由、対策を中心に解説します。

目次

注射って何?4つの種類

注射とは、注射器具を用いて皮膚や血管を通して薬剤を直接体内に注入したり血液を採る医療行為をいいます。この「注射」にはいくつもの種類があります。ここでは、特に代表的な注射の方法をご紹介します。

静脈注射

静脈内に直接注射針を刺して薬液を注入する方法です。採血でも行われる方法であるため、馴染みのある人も多いかと思います。注射した薬物が全身にいきわたるのに要する時間が5~10分と迅速であり、全注射法の中で薬剤を全身にいきわたらせるのが最も早い方法です。

多く使用される血管は肘正中皮静脈という肘の手の平側にある血管です。この部分で難しい場合は、尺骨皮静脈手背静脈網といった手の甲の血管や、足背静脈のある足の甲の血管が選ばれます。

筋肉注射

注射器を用いて薬液を筋肉に注入する方法です。筋肉層は血管が豊富にあるため、薬液の吸収速度も速く、静脈注射の次に薬液を体に吸収させる速度が速い方法です。油性の薬液や混濁のある薬液の吸収も容易であることが特徴です。

注射部位は三角筋と呼ばれる肩の筋肉、中殿筋といわれるお尻の筋肉、大腿四頭筋外側広筋といわれる太ももの筋肉が選択されますが、だいたいは肩の筋肉で行い、油性や混濁が強いものはお尻の筋肉を選択することが多いです。

皮下注射

皮膚の下にある皮下組織に薬液を注入する方法です。神経や血管に針が直接触れるリスクが少ないため、注射法のなかでも最も安全といわれる方法です。一方、吸収速度は静脈注射や筋肉注射よりも遅くなります。

注射部位は一般的に上腕(肘より上)が選択されることが多いです。しかし、痩せ型の人の場合や、インスリン注射など長期的に皮下注射を行わなければならない場合は、下腹部お尻が選択されることもあります。インフルエンザワクチンの予防接種もこの方法で行われます(インフルエンザワクチン添付文書より)。

皮内注射

皮膚の表皮と真皮の間に薬液を注入する方法です。アレルギー反応検査やツベルクリン反応検査に用いられる方法です。注射部位は前腕(肘から下の内側)、胸元、上腕(肘より上)などが用いられますが、反応検査では反応が分かりやすいため、前腕を使用することが多いです。

採血の上手い下手?注射が痛い理由って?

採血をされると、すごく痛いときと全く痛く感じないときがありませんか?看護師達は患者さんに採血をする前に、まずはモデル人形と呼ばれる道具で採血の練習をします。モデル人形は、本当の人間の皮膚そっくりな質感をしており、血液のように赤い水が流れています。モデル人形での練習を積むと今度は、新人同士あるいは職員の腕を借りて練習します。

こうした練習を経て、ようやく患者さんに注射ができるようになるのです。とはいえ、痛みを感じるときと感じないときに差があるのはなぜなのでしょうか。

刺す部位も関係がある

肘の正中静脈は、痛点が少ないこと、皮下脂肪が多く筋肉が少ないことから痛みを感じにくいところといわれています。逆に、肘窩部内側の尺骨皮静脈は周囲を比較的太い神経が走行していることもあり痛みを感じやすいものです。

このように、注射針を刺す場所によって、痛みを感じやすい部位・痛みを感じにくい部位があります。採血の際に、看護師が痛みの少ない部位を選ぶことができると痛みが少なくなります。

針を刺した後に血管を探す

針を刺した後に注射針を動かして血管を探すと、これも痛みに繋がります。皮膚や血管にも痛覚があるため、針を刺した後に動かされれば当然ながら痛みがあります。

採血しにくい人っているの?

採血しにくい、血管が見えにくいといわれた経験がある方も多いかと思います。どういった方が、採血しにくいといわれていしまうのでしょうか。

これは、人それぞれ血管の走行、太さ、硬さなどが異なっているためです。こればかりは個人差といわざるを得ません。血圧が低い方や身体が冷えている方も、血管が見えにくい傾向があります(東京都立大塚病院より)。

また、血管は血圧だけでなく温度や緊張、不安などで膨張、収縮を繰り返します。緊張状態のときに採血をしようとすると、血管が収縮しているので採血がしにくくなることがあります(小牧市民病院中央採血室より)。

採血のときに痛みを和らげる方法とは?

泣く子供

採血のときにできることなら痛みを和らげたいものです。痛みを和らげるにはどうしたらよいのでしょうか。

血管を見える状態にする

血管が看護師に見える状態であれば失敗されることも無くスムーズに採血が進みます。採血前は緊張してしまいますが、うまく緊張をほぐして臨むようにしましょう。

腕を温めておくことで、血管が収縮することを防ぐことができます。また、腕を心臓より低い位置にしておくことで、血液が集まるため、血管が膨張して血管が見やすくなります。

子供に対して注意することは…

子供が採血をするにあたり注意しておきたいことは、次の2点です。

  • トラウマを与えない
  • 正しいことを伝える

よく、子供が注射を受けるために「痛くない」と子供に伝えてしまう方がいます。しかし、大人でも注射は痛いものです。痛くないと伝えられていて痛みがあれば子供にとってトラウマとなります。何故採血をしなければならないか、採血は痛みを伴う処置であることをしっかりと伝えたうえで臨んでもらいましょう。

また、注射中は「痛い?」「辛いね」等の言葉を掛けず、全て終わってからねぎらいの言葉を掛けましょう。注射後にご褒美を用意してあげるのも効果的です。

さらに、とある実験の結果では、お母さんが不安そうにしていると子供にもその不安が移ってしまうことも分かっています。お母さんが堂々と、毅然とした態度で臨むようにしましょう(採血に対する幼児 の反応・行動に影 響を及ぼす要因より)。

まとめ

注射が痛い、怖いのは子供も大人も同じです。特に、健康診断などがあると採血は1年1回は受けなければならず、注射が苦手な人にとっては苦痛なものです。

血管の太さなどは十人十色であるため採血のしやすさを改善することは難しいですが、血管をみやすくする工夫はできます。採血を受ける前に、痛みを減らせるようなるべくリラックスして緊張をほぐしたり、採血箇所をあたためることで対策するといいかもしれません。