母子感染という言葉をご存知でしょうか?

妊娠中から授乳中にかけては、お母さんの体調が赤ちゃんに影響することがあります。
特に感染症の中には稀ですが赤ちゃんにもうつってしまうもの、うつってしまった場合の赤ちゃんへの影響が大きいものもありますので、お母さんと周囲に方は注意が必要になってきます。

この記事では、母子感染を起こす危険性のある感染症についてお話ししたいと思います。

目次

母子感染って何?

母子感染とは、妊娠中・出産時・授乳を通してお母さんから赤ちゃんに病気が感染することを指します。
お母さんがもともと持っていた細菌・ウイルスのほか、妊娠後に感染した病気が稀に赤ちゃんにもうつることがあり、病気によっては赤ちゃんに重大な影響をもたらすため、検査および予防が非常に大切です

母子感染の経路について

母子感染を起こす感染症は多く存在しますが、感染の時期や経路は以下のように大きく3つに分類することができます。

1.胎内感染

妊娠中にお母さんから赤ちゃんに感染するもので、さらに以下の2つに分類されます。

経胎盤感染

お母さんの血液中に入った病原体が胎盤を通って赤ちゃんに感染するものです。

上行感染

お母さんの子宮膣部や膣に感染した病原体が羊膜や羊水などを介して赤ちゃんに感染するものです。

2.分娩時感染

出産時に、産道内に感染した病原体やお母さんの血液中の病原体が赤ちゃんに感染するものです。

3.経母乳感染

お母さんの母乳を介して赤ちゃんに感染するものです。

妊娠中、特に注意すべき感染症

特に妊娠中に注意が必要な感染症としてTORCH症候群があります。

TORCH症候群は、T:トキソプラズマ、O:Others(梅毒など)、R:風疹、C:サイトメガロウイルス、 H:ヘルペスを指し、赤ちゃんの生死に関わったり、先天性の病気や障害を起こす原因になったりすることがあります。

お母さんはこれらの病気に感染していないかの検査や予防をすることが望まれ、周囲の方も予防接種を受けるなどの対応ができると良いとされています。

1.トキソプラズマ

妊娠中にトキソプラズマに初めて感染した場合、赤ちゃんに死産、流産、脳内石灰化、水頭症、脈絡網膜炎、精神運動機能障害などの、大きな影響を与える可能性があります。

妊娠末期ほど赤ちゃんへの感染率が高いですが、妊娠初期のほうが重症化しやすいとされています。
また、出生時には症状がない場合でも、成人するまでに症状が表れる場合があります。

感染の要因としては、加熱処理が不十分な肉類の摂取や、土との接触、海外旅行、猫との接触が挙げられます。

2.梅毒

胎盤が完成する妊娠4か月以降に、お母さんが梅毒トレポネーマという病原体に感染すると、赤ちゃんにも様々な影響を与えることがあります。

胎内では、流早産、子宮内胎児死亡、子宮内胎児発育遅延などの影響をもたらすことがあるほか、出生後~生後3ヶ月の間、骨軟骨炎、鼻炎、皮疹、肝脾腫、髄膜炎などの症状が出現する場合があり、さらに7~14歳より永久歯奇形,実質角膜炎,内耳神経障害などの症状が出現することもあります。

感染の要因としては、感染者と性行為(オーラルセックスなども含む)が挙げられます。

3.風疹

妊娠初期の妊婦さんが罹ると、胎盤を通過した風疹ウイルスが赤ちゃんに感染し、先天性風疹症候群は、先天性心疾患、難聴、白内障などをもたらすことがあります。

妊娠3か月以内の感染で発生することが多く、妊娠6か月以降での発生はないとされています。

感染の要因としては、感染者からの飛沫感染が挙げられます。

4.サイトメガロウイルス

ヒトサイトメガロウイルスというウイルスが妊婦さんに初感染、再感染・再活性化(以前に感染して潜伏していたウイルスが免疫力の低下によって活動を再開した状態)した場合に、赤ちゃんにも感染することがありますTORCH症候群の中で最も高頻度に赤ちゃんに感染を起こし、障害を残す疾患です。

症状の出方は様々で、子宮内胎児発育遅延、黄疸、出血斑、肝脾腫、小頭症、脳内石灰化などの症状がみられる場合や、出生時には症状がない場合でも、後に難聴や精神遅滞、運動障害、視力障碍、てんかんなどの障害を発症することがあります。

感染の要因としては、感染者との性行為(オーラルセックスなども含む)、尿や唾液などの体液を介しての接触が挙げられます。

5.単純ヘルペス

単純ヘルペスウイルスというウイルスが妊婦さんに感染、もしくは以前感染して潜伏していたものが再発した状態で経腟分娩した場合、赤ちゃんが産道感染によって新生児ヘルペスを発症することがあります。

ヘルペスウイルスに感染して生まれた赤ちゃんは重篤な状態であり、全身に感染の症状が見られたり、脳にまで感染していたりすることもあり、軽視できないウイルスです。

感染の要因としては、感染者との性行為(オーラルセックスなども含む)、キスなどによる接触感染が挙げられます。

検査はどこで受けられる?

妊婦健診を定期的に受けることで、B型肝炎、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒、風疹、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)、クラミジア、B群溶血性レンサ球菌(GBS)は、必要な時期に産婦人科で検査を受けることができます

その他の感染症については、気になる症状があった場合や、感染した人となんらかの接触があった場合は、かかりつけの産婦人科に相談してみましょう。

また、妊娠前に一通りの感染症の検査を受けることや、妊娠後も必ずコンドームを使用することでそのリスクを下げることが可能です。

まとめ

妊娠中、授乳中の感染症は赤ちゃんにも影響をもたらすことがあるため、できる限り避けたいところです。
妊婦健診を定期的に受けることで、必要な時期に必要な検査を受けることができ、なにか異常があれば早期に発見して対処できることができます。
必ず、妊婦健診は医師の指示通りに受けるようにしましょう。

また、外陰部にできものができた、痒みがあるなどの症状が、実は母子感染を起こす感染症に罹っているせいだったということもあります。いつもと違うと感じることがあれば、医師に相談しましょう。
お母さんの気づきが赤ちゃんを守ることに繋がりますので、体調には十分注意しておきましょう。