不妊治療には様々な方法がありますが、その目的は妊娠の可能性を高くすること、妊娠までの期間をできるだけ短くすることです。1年間、自然妊娠を試みてうまくいかなかったカップルが、その後治療を受けるなどして、最終的に約6割が妊娠に至ったとのデータもあります。不妊治療について知識を深め、妊娠にむけてのステップを踏み出しましょう。

目次

不妊治療の流れ

不妊症であると診断された場合、その原因にあわせた治療法を選ぶことになります。卵子と精子に受精する可能性が残っているときには、「一般不妊治療」または「生殖補助医療」が行われます。

一般不妊治療には、タイミング法、人工授精があります。
超音波検査や採血検査などで排卵日を特定して行います。
特定した排卵日にタイミングを取るようアドバイスをすることをタイミング法といい、排卵日に調整した精子を子宮内に注入するのが人工授精といいます。この治療法では排卵したことはわかりますが、卵胞内に本当に卵子が入っていたかどうか、排卵した卵子が卵管内に取り込まれたかどうかは不明なまま行われます。この方法でも一定期間(通常はそれぞれ3~6か月)妊娠しない場合は、卵子を体外に取り出して精子と受精させる体外受精(生殖補助医療)を検討します。

生殖補助医療には、体外受精、顕微授精があります。
卵子を体外に取り出すことを「採卵」といい、膣内から超音波下にて卵巣の卵胞内に針を入れ卵子を吸引し体外に取り出します。取り出した卵子をと精子をシャーレの上で受精させることを「通常の体外受精」といい、卵子の中に精子を1個ずつ注入することを「顕微授精」と言います。その後、受精した受精卵(胚)を子宮内に戻すことを「胚移植」と言います。

一般不妊治療

タイミング法

検査によって不妊の原因を特定できないときは、年齢的な余裕がある場合は、まずタイミング法から治療から始めます。最も妊娠しやすい排卵日の2日前~排卵日までに、性交渉のタイミングを合わせる方法です。排卵日を予測するために、経膣超音波検査によって卵胞(卵子が入っている袋)の大きさを測り、尿検査や採血検査によって卵胞ホルモン(E2)値や黄体形成ホルモン(LH)値を調べます。3~6周期程度タイミング法を行っても妊娠しない場合は、人工授精を検討します。

人工授精

人工授精とは、精子を子宮内へ直接注入し、卵子と精子が出会う可能性を高める方法です。まず、精液を採取して雑菌を取り除くために洗浄し、更に濃縮してから、元気な精子を排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入します。受精、着床、妊娠への流れは、自然妊娠と同じです。タイミングを合わせるために、排卵誘発法と併用することがあります。

妊娠に至らない場合、4~6周期を目安に治療を切り上げ、体外受精にステップアップする場合が多いです。

生殖補助医療

通常の体外受精

通常の体外受精とは、排卵近くまで育った卵子を体外に取り出し(採卵)、シャーレの中にある卵子に精子をふりかけ(媒精)、受精に成功した受精卵(胚)を一定期間培養したのち、子宮内に移植する(胚移植)方法です。

採卵の際は、静脈麻酔か局所麻酔を行い(無麻酔のこともあり)、超音波で見ながら腟から卵巣へと針を挿入し、卵胞から卵子を採取します。

顕微授精

顕微授精とは、同じように体外に取り出した卵子1個の中に、1匹の精子を直接注入する方法です。男性の精子が少なかったり、精子の運動率が低いなど通常の体外受精では受精が望めないと予測される男性不妊の場合に行われます。体外受精と同様、受精に成功した受精卵(胚)を一定期間培養し、子宮内に移植(胚移植)します。

排卵誘発法

タイミング法にもAIHにも生殖補助医療にも使いますが、体内の卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度を上昇させ、卵胞の発育を促す方法を排卵誘発法と言います。

本来は排卵のない方に用いる方法ですが、正常に排卵している方に対しても、妊娠率を高める以下のような効果があります。

  • 月経の周期が順調になり、無排卵の場合は排卵するようになる
  • 排卵数が2~4個に増える(自然な周期での排卵数は1個。増えない場合もある)
  • 排卵させる時期によって、卵子の成熟度を調整できる
  • 排卵日を調整することで、性交渉のタイミングが合わせやすくなる
  • 黄体ホルモンの分泌が改善する

多胎妊娠の可能性や、頭痛、吐き気、倦怠感などの副作用が起こる場合があります。

不妊治療への心構え

不妊症_手をつなぐ

不妊治療は、時に十数年にもわたる長期のプロセスとなる場合があります。治療期間中、妊娠への期待と失望を繰り返したり、パートナーとの意思の疎通がうまくいかないこと、経済的な負担や時間が拘束されることなど、大きなストレスを抱えることもあります。

このような問題をなるべく軽くするために、次のようなことが薦められます。

  • カップルの双方が治療方法や妊娠の成功率について知識を深める
  • 治療にかけられる期間(いつ治療をやめるか)について話し合う
  • 治療にかかる経済的負担について話し合う

不妊治療をしている夫婦に対し、経済的負担を軽減するため、特定不妊治療費助成の制度(体外受精および顕微授精の費用を政府が助成する制度)があります。詳しくは自治体のホームページ等をご確認ください。

まとめ

不妊治療についての理解は深まりましたか?原因によって治療法も様々。うまくいくことばかりではありませんが、妊娠するためにストレスは大敵です。赤ちゃんがほしいという思いを大切に、夫婦の絆を深めながら、リラックスした気持ちで治療をすすめられるといいですね。