子育て中の保護者の方で、小さなお子さんがやたら光をまぶしがったり、眼球が震えたりする(眼振)など気になる様子を見せることはありませんか?その場合、生まれつき虹彩を持たない無虹彩症を発症している可能性があります。虹彩がないとどういった影響があるのか、どういった症状を訴えるのか、また合併症や治療法はあるのかなど、無虹彩症について紹介します。

目次

虹彩の役割

虹彩は茶目の部分で、その中心にある黒目の部分を瞳孔といいます。

外からの光は瞳孔を通って眼の中へと入っていきます。ヒトは明るい場所、暗い場所で入ってくる光の量を調整していますが、そのとき役割を果たすのが虹彩です。虹彩が伸び縮みすることで、瞳孔に入る光の量を変えています。カメラでいう絞りの機能に該当します。

無虹彩症とは

無虹彩症とは、生まれつき虹彩が完全にないか、周辺のみ残っている状態です。先天性の遺伝性疾患で、発症は10万人に1人と稀な病気とされています。ほとんどが両眼に起こります。発症した人の約8割は家族性(遺伝性)で、残り2割は散発性(突発的)に現れます(難病指定センターより)。

原因で分かっているのは、胎児期における眼の組織形成の際に重要な遺伝子(PAX6)に変異が起きることです。この遺伝子変異によって眼では無虹彩症以外に、角膜混濁や眼底の黄斑低形成が発症することがあります。また、特に散発性の場合は、染色体のPAX6遺伝子の近くにある他の遺伝子にも変異が起こることによって、腎腫瘍(ウィルムス腫瘍)、泌尿生殖発育不全、精神発達遅延等の合併症のリスクもあります。

2017年4月、無虹彩症は新たに難病に指定され、医療費助成も始まっています。

無虹彩症の症状

太陽の光に意味ありげにかざされた手

無虹彩症の主な症状と合併症は以下のようになります。

  • まぶしさ(羞明)…虹彩がないため、光を調整できずまぶしさを訴えます
  • 眼振(がんしん)…眼が小刻みに揺れます
  • 角膜混濁…角膜が白く濁ります
  • 黄斑低形成…眼の中で、ものを見る中心部(黄斑)の形成不良が起きます。視力不良の大きな原因となります
  • 緑内障…眼の中の圧力(眼圧)が上がり、視神経が障害されることで視野が狭くなります
  • 白内障…水晶体という、眼の中のレンズが濁る病気です

無虹彩症の治療

無虹彩症の治療では、まずまぶしさを軽減するために虹彩付ソフトコンタクトレンズ(※1)や遮光眼鏡(※2)を使用します。

(※1)虹彩付ソフトコンタクトレンズ…ソフトコンタクトレンズを装用した時、虹彩にあたる部分に特殊な着色がしてあるものです。中心の瞳孔部分は透明になっていて、無虹彩症の代表的な症状でもあるまぶしさを軽減することができます。

(※2)遮光眼鏡…まぶしさの要因となる500nm以下の紫外線や可視光線の一部青色光線などの波長の短い光をカットする医療用のカラーフィルターレンズです。明るさを感じるために必要な光はカットしないため、明るさはそのままにまぶしさのみを軽減することができます。

白内障がある場合は、手術をして少しでも視力の改善を目指します。緑内障を合併している場合は点眼薬で眼圧をコントロールし、点眼薬では効果があまり得られない場合に手術を行います。緑内障は少しずつ視野が失われていく病気ですが、一度失われた視野は二度と戻る事はありません。眼圧をコントロールし、定期的な視野検査が必要です。

角膜混濁は角膜移植しか治療法はなく、また黄斑低形成や眼振は確立された治療法はないのが現状です。これまで紹介した症状や合併症は出生後からあるわけではなく、成長に伴い現れてくるものもあるため、定期的な眼科の受診が欠かせません。

まとめ

無虹彩症は非常に稀な病気ですが、発症している場合は成長するにつれて合併症が現れるなどケアが必要になります。お子さんの眼の様子で気になることがあった場合は、早期に眼科を受診しましょう。