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「病院でこんなものを食べられると思わなかった」

―お子さんたちに向けて、食事を楽しむ企画などは行っているのでしょうか。

成育に入院している子どもたちは、持ち込みが制限されている分食べたいものを我慢している子が多いと感じていました。何か1つ楽しめるものがあればと思い、昨年から2ヶ月に1回ほどのペースでおやつの出張サービスを始めています。子どもたちに色々選んでもらいオリジナルのおやつを提供したいと思っていたので、初回はパフェを用意しました。トッピングとソースを子どもたちに選んでもらったところ、とても嬉しそうに選んでいて大好評でした。

手作りパフェ
手作りパフェ

また、クリスマスには子どもたちからリクエストのあったお菓子を数種類用意し、好きなものを選んで「myお菓子パック」を作ってもらいました。出来立ての手作りピザを持っていき、目の前で配膳をしたこともあります。普段は最初からお菓子と飲み物をセットにしたものを渡しているのですが、このときは飲み物を何種類か持っていき、「今日は好きなものを選んでいいよ」と伝えています。

子どもたちも、毎回すごく喜んでくれますね。私たちが準備をしにいくともう並んでいて、「栄養士さん、まだ?」「今準備しているから待って」とやり取りをします(笑)。

 

―お子さんたちの喜ぶ様子が思い浮かびます。企画の内容は、どんな風に決めているのですか?

アンケートを取り、できるだけリクエストに応じたものを提供するようにしています。アイスやチョコレート、ポテトチップスのほか、男の子であればドーナッツやラーメンなどのジャンキーなもの、女の子は「ホットケーキを焼きたい」「デコレーションしたい」といった希望が多いですね。

「病院でこんなものを食べられると思わなかった!」「すごく楽しみにしてるんだ~!」と言われると、もっと頑張らなくてはと思います。

また、嚥下障害のために口から食事がとれない子にも、医師やリハ科の方に確認した上で「舐めるだけね」と本人と約束し、提供したことがありました。「すごく嬉しそうにしていた」と親御さんから聞き、舐めるだけでもその日1日の楽しみになるのだなと私自身とても勉強になりました。

 

―お子さんたちと関わる上で、やりがいと感じていらっしゃるのはどんなことですか?

子どもたちに関わったことで「食べられるようになった」「体重が増えた」などと言われると、少しでも役に立てたのかなと思う部分があります。

また、小児がんに限らず、食事療法が必要な子どもの場合、他のご家族との食事の兼ね合いで悩む親御さんも多いです。そこで簡単なレシピの提供や工夫をアドバイスし、「話を聞けて良かった、早速やってみます」と言っていただけると、これからも、子どもたちだけでなくご家族にも寄り添ったサポートがしていけたらと思います。

 

―最後に、お子さんの栄養管理に関して伝えたいことがあればお聞きしたいです。

小児の栄養管理は特殊です。年齢だけを見るのではなく、子ども一人ひとりの成長や発達段階に合わせた栄養のサポートが必要であると思っています。また栄養指導においては多くの子どもの場合、食事管理をしているのは親御さんです。「両親がやってくれるから自分には関係ない」と思ってしまわないよう「今は親御さんが管理してくれているけれど、将来のために自分で管理する力を身につけることが大切だよ」と本人にアプローチすることが重要だと思っています。

そして、その子どもたちを支える家族が負担なく食事療法を続けられるよう支援していくことも必要だと考えています。

編集後記

口から食べることができない、好きなものをなかなか食べられない…。そんな闘病生活において少しでも食を楽しむために、成育では様々な種類の食事や企画を設けているとのことでした。可愛らしいメニューの数々を見ると、子どもたちの喜ぶ顔も目に浮かぶようです。

次回は、作業療法士・深澤 聡子さんの取材の様子をお届けします。

※取材対象者の肩書・記事内容は2018年2月14日時点の情報です。