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小児がんは治癒率の高い病気ではありますが、その治療は身体に大きな負担をかける場合があります。寝たきり状態で、薬を飲んだり点滴を打ったり…という様子をイメージする方もいらっしゃることでしょう。

しかし、「動けるときにはいっぱい動いてもらいます」と話してくださったのは国立成育医療研究センターの作業療法士・深澤 聡子さんです。遊びを使ったリハビリを入院早期から行うことで、子どもたちの活動性低下による障がいを防ぎ、治療に向かう子どもたちの体力の維持につなげるといいます。

国立成育医療研究センター こどもサポートチームの取材連載、今回は、深澤さんに子どもたちのリハビリについて聞きました。

お話を伺った方の紹介

※写真:国立成育医療研究センター リハビリテーション室

作業療法が扱うのは「すべての生活活動」

―まず、「作業療法士」のお仕事とはどういうものなのでしょうか?

作業療法士は「作業活動」を治療手段として使い、失った機能や障がいの改善を目指します。

作業活動とは、人が営む活動のすべてをさします。なかでも子どもの最も主体的な活動である遊びは、作業療法にとって重要な手段のひとつです。作業療法では遊びをはじめ、すべての日常生活活動を使います。なので、遊ぶことは作業療法の目標になる一方でアプローチの手段でもあるのです。

 

―小児がんの場合、日常生活がうまくできなくなる原因としてはどんなことが上げられますか?

小児がんのお子さんたちは、強力な治療を長期的に受けることがあります。その間の必要以上の安静は、活動性や運動能力の低下に繋がってしまいます(廃用症候群)。

以前は、歩けなくなって退院できなくなってから介入することがありました。ベッドから起き上がれない状態が続いて体力がなくなったり、足首が硬くなってつま先歩きになってしまったり、問題が大きくなってからの依頼が多かったのです。今はそれを未然に防ぐために、入院して間もなく、診断がついた頃からほとんどすべての患者さんに介入しています。

成育の小児がんセンターでのリハビリテーションは、患者さんの治療中の活動度を下げないことを目標にしています。「子どもだから、動けるようになったら動くでしょ」と考える方もいらっしゃると思いますが、実際はそんなことはありません。ずっと安静にしていた子が最初に動くときには、苦痛や疲労が伴います。

医師とコミュニケーションを取り、安静度の確認もしているので、寝たきりにはさせずに「動けるときに動く」ことを実現しています。

 

―最初に行うのはどういう介入ですか?

はじめは、身体機能の評価を行います。発達の段階に合わせた日常生活の聴き取りに加え、実際に身体を見せてもらったり、触ったりして評価します。

今どのくらい活動できているのか、筋力がどのくらいあるのか、関節が硬いところはないか、日常生活はどのくらい自分でできているかなど、一通り評価してその子の全体像を掴みます。

リハビリテーション科には、理学療法士や言語聴覚士という仲間がいます。まずは作業療法士が評価し現状を把握するのですが、必要に応じてチームで介入していきます。このことにより、問題を見逃すことなく、適切な時期に適切なリハビリテーションを開始することが可能となっています。

 

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