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私たちの生活において欠かせない「食べる」という行為。もちろん、それは小児がんや病気を抱えた子どもたちにとっても同じです。

小児がんは、治療時の副作用などによって“食べる”ことが難しくなりがちな疾患の一つです。口の中が荒れてしまったり、味覚に変化が生じてしまったりして通常の食事を取れなくなる子どもたちもいるといいます。

そんな子どもたちを食事と栄養の面で支えるのが、管理栄養士の益田 静夏さんです。益田さんの取り組みを通して、子どもたちの生活の一部を知っていただければと思います。

お話を伺った方の紹介

※写真:プレート食(後述)のコリラックマプレート

細分化された食事で、患者さんの「食」を支える

―まず、病院における管理栄養士さんのお仕事はどんなものなのか教えていただけますか。

一言で表すと、患者さんの栄養管理と給食管理です。栄養管理は栄養食事指導や栄養サポートチーム活動があります。栄養指導では、治療上、食事制限が必要な入院・外来患者さんを対象に、どのようにしたらよいかフードモデルや資料、献立表を用いて説明をしています。また、栄養サポートチームは多職種で栄養状態の悪い患者さんの回診やカンファレンス(会議)を行い、栄養評価をしています。その後、適宜食事調整をし、個々にあわせた対応もしています。

給食管理は、必要な栄養量に合わせた献立を作成し、食事の提供をしています。また、必要な材料の発注や食材の管理もしています。成育では、調理は病院の調理師が、配膳は委託給食会社が行っています。

 

―先に、通常の食事について伺いたいと思います。献立は、どのように決めているのですか?

成育の患者さんの多くが子どもですが、産科病棟もあるため妊婦さんも入院されています。そのため子ども受け、妊婦さん受けの良いメニューは何か、季節に応じた旬の食材を取り入れたメニューを栄養士間で相談しながら決めています。

 

―乳児期や離乳期のお子さんには、どのように対応されているのでしょうか?

乳児期ですと、普通はミルク(市販されている粉ミルク)を飲んでいる子が多いですが、不安の強い親御さんにはミルクの説明や作り方についてアドバイスすることがあります。必要な場合には医師と相談しながらミルクの内容を考えることもあります。

離乳期の場合は入院中に離乳食が開始されるケースも少なくないので、開始のタイミングでお会いして進め方や与え方などを説明しフォローしています。その他、必要に応じて親御さんの相談にのったり、摂食訓練が必要な子にはリハ科の方と連携して形態(食材の大きさ)の調整をしたりしています。

 

―病院の食事は「味が薄い」「あまり美味しくない」というイメージを持ちがちです。その点、患者さんが食べやすくするための工夫はされているのですか?

成育では一般食の場合のみ毎食選択食を用意し、患者さんが好きな方を選べるようにしています。例えば、朝食ですと標準食が和食、選択食は洋食、肉料理であれば一方は魚料理といった感じです。メニューも和洋中様々で流行りのメニューを取り入れたりしています。また幼児食であれば食べやすい大きさにし、柔らかく調理するようにしています。

それから、毎月1回、キャラ弁のようなプレート食を提供しています。例えば2月には節分のプレートといったように季節の行事にあわせたり、行事がない月にはお子さんが喜びそうなプレートにしたりしています。

プレートを見て大喜びする子や「本当は野菜を食べたくないけど、この日だけは食べる!」という子もいます。写真を撮ってくださる親御さんも多いです。

こどもの日プレート
こどもの日プレート
スイートポテト
スイートポテト

また、毎月2回、手作りおやつも提供しています。1回は手作りのプリン、もう1回が季節のデザートです。最近ですと鏡開きのときに白玉とあんこを使った白玉スイーツを作ったり、昨年のハロウィンにはパンプキンパイを作ったりしました。

自由に外出することの出来ない子どもたちにおやつを通じて季節を感じてもらえたらなという想いがあります。

 

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