献血は、患者さんの治療に必要な血液製剤をつくるための欠かせない手段ですが、近年は少子高齢化の影響などもあって、献血者数は減少傾向にあります。

日本赤十字社の「数値で見る血液事業」によれば、2017年の献血者数は477万5648人と、ここ5年間で約10%ダウンしています。

また、人口に対する献血者数の割合を示した献血率(※)を見ると、17年は10代で5.2%、20代で5.8%、30代で5.5%と5%台に留まっていて、40代の7.2%、50代の7.1%と比べると低くなっています。

現在の科学技術では、血液を人工的に造ることはできません。献血は60代までしか協力できず、少子高齢化が進むと、献血可能な人工そのものが減ってしまいます。母数が減っている中で若い世代の献血率も伸び悩めば、必要とされる量の血液を安定的に供給していくことが難しくなります。

今後も血液を過不足なく患者さんに届けていくためには、若年層に向けて協力を呼びかけていく必要があります。そこで若い世代に向けた献血の推進について、日本赤十字社に取材しました。

※献血率…『平成29年住民基本台帳人口要覧(財)国土地理協会・出版』に基づく平成29年1月1日現在の15~69歳の人口から、『平成27年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)』に基づく平成29年の15歳人口を差引いた人口により算出(日本赤十字社|数値で見る血液事業|血液事業の現状 平成29年統計表p.8より引用)。

(本記事内の写真は全て日本赤十字社より提供していただきました)

目次

「献血は特別ではない」意識を持ってもらう

――30代以下の献血者数の減少が目立つことについて、どのように捉えられていますか。

少子高齢化の進展によって、献血可能人口は段々と減っていくことが予想されます。そのため、今後の献血基盤を支える若年層へのアプローチとして、10代や20代、ひいては30代の方々に足をお運びいただけるよう、献血推進活動を強化しています。

※献血の種類については「知っているようで知らない『献血』。一体どんなもの?」をご覧ください。

――具体的に若い世代の方々に対してどのような方法でアプローチされていますか。

献血をまだ経験されたことのない方が、自発的に献血会場へ赴くにはハードルがあると考えています。そのため大学や高校に献血バスがお邪魔して、直接アピールする機会を設けています。また、献血が可能な年齢に満たない小学生や中学生の子どもたちに向けても、意義や仕組みを分かりやすく解説する献血セミナーを開催するなど、まずは知ってもらうきっかけづくりを行っています。

日本赤十字社というと、固いイメージがあると思います。そのため、献血をより身近な存在にしてもらえるよう活動を行っています。具体的には、Love in Action」というプロジェクトの中で、多くの著名人の賛同を得て、アーティストたちによるライブを実施しているほか、「LINE」公式アカウントの開設や、人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」やスマホゲーム「モンスターストライク」とのコラボなどをおこなっています。

このような取り組みを通して、「献血は特別なことではない」と感じていただけた方には、ぜひ献血ルームなどのお越しいただきたいです。

――啓発活動についてさらにお伺いしますが、今のお話にあったように、最近放映中のアニメとのコラボをよく見かけます。こうした取り組みのきっかけはどういったものだったのでしょう。

アニメといったサブカルチャーとの関わりが深まったきっかけは、2011年にコミケ(コミックマーケットの略。同人誌の即売会で、夏と年末の2回開催される)の準備会の方から、献血協力者への配布用にポスター等の記念品を無償でご提供いただいたことでした。

それ以前にもコミケの会場に献血バスを運行していましたが、こちらの企画がだったことから、2013年からはコミケの会場だけでなく、全国各地の固定施設でもポスター等の記念品のプレゼントを開始しており、継続した活動になっています。

最近では「ラブライブ!サンシャイン!!」とコラボして、献血していただいた方にクリアファイルをご用意しました。各血液センターでも、放映中のアニメと独自にコラボし、グッズを配布するなど、全国一丸となって若い年代の方々への献血推進に力を入れています。

一人で行きづらいときは友達と「いっしょに行こう」

固定施設でくつろぐ男性

固定施設でリラックスする男性(イメージ)

――固定施設に特化した若年層の取り組みはありますか。

かつては診療所のようなシンプルなつくりでしたが、近年は施設そのものにも興味を持っていただけるよう、サービス向上を目的とした改修・整備を進めています。場所によって雰囲気が異なるので、色々な施設を巡ることを楽しまれている方もおられるようです。

また、献血に協力してもらった後は休憩が必要ですので、漫画や雑誌をご用意するなど、リラックスできる環境づくりにも取り組んでいます。そのほかにも、以前から提供している飲料やお菓子などに加えて、施設によってはフリーWi-fiやタブレット端末なども整備しています。

――その他に献血によるメリットはありますか。

若い世代の方はあまり気にされないかもしれませんが、希望される方を対象に、血液の検査結果を送付していますので、ご自身の健康管理に役立てることができます。

――最後に、献血をまだ行ったことのない若い世代の方々にメッセージをお願いします。

体に針を刺すことへの抵抗感などもあり、お一人で足を運ばれるのがためらわれる方もいらっしゃると思います。私たちも、ご不安なお気持ちを解消できるよう努めていますので、まずは一度お越しいただければと思います。一人で行きづらければ、友達を誘われるなど、今年の「はたちの献血」のキャッチフレーズである「いっしょに行こう」を実行してほしいです。

理由があって協力できない方も、周りの方に献血のことをお話していただけるだけで、誰かの命を助けるきっかけになります。ぜひお力をお貸しください。

取材後記

献血になかなか足を運べない人、様々な事情があるかと思います。その中でも献血に馴染みがなかったり、どんな施設か分からなかったりする方は、経験者の方にお話を聞いてみてはどうでしょうか。また、献血を呼びかけるイベントやアニメとのコラボも開催されています。「人のために」という気持ちはもちろん大切ですが、関心のある事柄から献血について理解を深めるのも良いかもしれません。

※記事内容は2018年6月15日時点の情報です。