皆さんは献血のことを知っていますか?昨年は全国で477万以上の方々が献血に協力しています(日本赤十字社|数値で見る血液事業より)。しかし、経験したことのない方にとっては血液を提供することだと知っていても、献血の種類や所要時間、献血血液の使われ方など、分からないことも多いかと思います。今回は献血に関する基本的な情報を、日本赤十字社への取材などを基に紹介します。

(本記事内の写真は全て日本赤十字社より提供していただきました)

目次

献血とは

人が生きていく上で必要な血液の成分が何らかの事情で不足してしまった場合、輸血が必要となります。その輸血用の血液(輸血用血液製剤)は、すべて献血によって賄われています。また、やけどや感染症、血友病の治療などに使われる血漿分画製剤も、献血で得られた血液からつくられています。

献血の種類・基準

献血には大きく分けて全血献血成分献血の2種類があります。

  • 全血献血…血液中の全ての成分を提供します。その中でも200mL全血献血400mL全血献血に分けられます。
  • 成分献血…血液を構成する成分の中から特定の成分のみを採血し、そのほかの成分は体に戻す方法です。血漿成分献血血小板成分献血があります。

献血の種類によって、年齢や体重といった採血基準が異なります。例えば400mL全血献血の場合、男性は17歳以上・女性は18歳以上、ともに体重50キログラム以上の方が協力できます。基準の詳細は「日本赤十字社|献血の流れについて」の献血基準をご覧ください。

注意点

体調が良くない方や服薬中(ビタミン剤や一般的な胃腸薬などは除く)の方、擦り傷や切り傷といった外傷がある方々は、献血を控えましょう。インフルエンザなどの予防接種を受けたり、ピアスのために耳に穴を開けたりした場合なども、一定期間延期する必要があります。

正確な申告を行わずに献血すると、ウイルスに感染した血液が、輸血を必要としている患者さんに使用されてしまう恐れがあります。採血された血液は、厳しい検査を経たうえで医療機関へ供給されますが、感染直後などウイルスを検出できない期間(ウィンドウ・ピリオド)があるため、検査の網をかいくぐってしまう危険性があります。

実際に採血が行われる前に問診があるので、自分の体調や服薬の状況を正確に伝えましょう。また、献血が可能かどうか、事前に「日本赤十字社|献血をご遠慮していただく場合」をご確認ください。

献血できる場所と実際の流れ

献血バス

各地で運行している「献血バス」

場所

日本赤十字社血液事業本部によると、「献血ルーム」などの献血ができる固定施設は、各都道府県に少なくとも1施設以上あり、2018年4月1日時点で全国に142箇所設置されています。この他に移動式の「献血バス」も稼働しています。施設の場所や献血バスの運行状況は「日本赤十字社|献血する」で調べられます。

献血ルームはかつて、診療所のようなシンプルなつくりでした。しかし近年は、リラックスして採血に臨んでもらうことができるよう、サービス向上を目的とした改修が進んでおり、同じ都道府県内でも場所によって内装に違いがあるなど、工夫が凝らされています。

献血の流れ

献血の流れは、受付→健康状態などに関する質問(これまでにかかった病気や、海外への渡航経験など計23問)に回答→問診・血圧測定→事前の血液検査→実際の採血→休憩となります。

採血はベッドに横になってから開始されます。献血の種類によって時間が異なり、個人差もありますが、全血採血は10~15分程度成分献血は必要となる成分以外を体に戻す関係で40~90分ほどかかります。成分献血用のベッドには、所要時間に配慮してテレビを設置している施設があり、場所によっては読書に使える台座などを置いているところもあります。

採血後は休憩スペースで水分補給など行いながら、最低でも10分以上体を休めてください。固定施設の場合、飲み物は数種類の中から選ぶことができるほか、補食用のお菓子も置いてあります。最近では、雑誌に加えて漫画を陳列している施設もあり、献血中に読むことも可能です。

血液製剤の種類と“有効期間”

提供された血液は、検査を経て輸血用血液製剤や血漿分画製剤の原料になります。このうち、前者の種類は、全血製剤、血漿製剤、血小板製剤赤血球製剤の計4つに分類されます。後者には、代表的なものとして、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤などがあります。

それぞれ有効期間がありますが、輸血用血液製剤のなかには、採血後4日間しか使用できないものもあります。

  • 赤血球製剤…採血してから21日間
  • 血小板製剤…採血してから4日間
  • 血漿製剤…採血してから1年間
  • 全血製剤…採血してから21日間

血液を安定供給するためには

輸血用血液製剤は全国の血液センターで保管されています。多くの方の献血協力があり、また日々必要となる献血量を計算したうえで採血を行っているため、現状では医療機関が必要としている血液を充分に確保することができています。

ただし、天候の影響や災害など、何らかの事情により、献血を受け入れることが困難となる場合もあります。その際には、状況に応じて、日本赤十字社や各血液センターのウェブサイト・SNS等で周知を行うほか、メールやはがき、電話等による依頼、あるいは受付時間の延長を行うなど、様々な方法で協力をお願いし、必要量を確保できるよう対応しています。

輸血用血液製剤を安定的に供給していく上で重要なのは、献血協力者に一時的な偏りが生じないことです。例えば震災などが発生した場合、一般的には「医療現場で血液が足りていないのでは」と想像されがちで、大勢の人が献血会場に足を運びます。このような気持ちや行動は非常に大切で、大きな力を生みますが、これまでに紹介したように、製剤には有効期間があります。また、一度献血した後、次の協力を行うまでには一定の期間、間隔を空ける必要があるため、特定の時期に協力が集中してしまうと、献血できない方が一時的に増加してしまう可能性もあります。

もし、災害などの発生後に献血をしようと思い立った場合は、日本赤十字社から提供される情報を確認しましょう。

まとめ

献血は血液製剤を必要とする患者さんを救う重要な行為です。献血できる固定施設は全国に多数あるほか、献血バスも運行していますので、協力の機会は決して少なくありません。近年は施設の改修が行われているところもあるので、まずは一度会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

※記事内容は2018年6月14日時点の情報です。