検査で「腫瘍が見つかった」といわれると、がんになってしまったかと心配になります。
しかし、腫瘍には良性と悪性があります。良性の腫瘍であればそのまま自然に治ることもあります。悪性であれば当然治療が必要になります。

ここでは、しばしば混同されがちな腫瘍やがんの種類について、医師・後藤 宏顕先生による監修記事で見てみましょう。

目次

良性腫瘍と悪性腫瘍

腫瘍は、皮膚が固くなって盛り上がっているなど、周囲の組織とは異なる特徴を持っています。はれもの、おでき、ポリープ、イボなども腫瘍に分類されます。

治療を行わなくても体に害を与えないものは良性腫瘍です。良性腫瘍であっても痛みを伴ったり、脳などの重要な臓器に発症したりした場合は治療を行いますが、切除すれば再発することはありません。

一方、悪性腫瘍は異常なスピードで増殖するのが特徴で、周囲の組織に悪影響を与えます。「がん」と呼ばれているのは悪性腫瘍のことです。

悪性腫瘍は、発症する細胞によって固形がん血液がんに分けられます。

固形がん

がん細胞が集まってできるのが固形がんです。固形がんは、さらに癌(上皮性悪性腫瘍)肉腫(非上皮性悪性腫瘍)とに分類されます。

皮膚の表面や臓器の粘膜を構成する上皮細胞にできたがんを「癌」と呼びます。

胃、肝臓、腸、肺、子宮、腎臓などにできる多くのがんが該当します。

肉腫

肉腫とは上皮細胞以外の骨や筋肉などにできるがんのことで、非上皮性悪性腫瘍とも呼ばれます。骨肉腫、軟骨肉腫などのほか、神経腫、奇形腫、生殖細胞腫などが肉腫に分類されます。

血液がん

造血組織(赤血球や白血球などの血液組織を作る体内組織)の異常によって起こるがんです。白血病悪性リンパ腫などが該当します。

固形がんと違い、抗がん剤治療で治癒を目指せるということが特徴です。

前がん病変とは?

現時点ではがんではないが、今後がん化する恐れのあるものを「前がん病変」といいます。前がん病変が見つかった場合は、あらかじめ切除しておくことでがんを発症するリスクを抑えたり、異常が見つかったらすぐに治療を行えるように経過観察を続けたり、といった対処が行われます。

前がん病変としてよく知られているのが大腸ポリープです。
大腸ポリープの一部の腺腫というものは大腸がんに発展する可能性があるため、大腸内視鏡検査で大腸ポリープが見つかった場合は、検査中の切除も検討されます。

また、子宮頸がんの前がん病変として知られているのが異形成です。
異形成はがんではありませんが、特に高度異形成という段階はがんに発展する可能性が高いため、この段階で治療を行い、将来、がんに発展するのを防ぎます。

がんの早期発見には検診が有効です

若い医師

特に重要度の高いがんに関しては、市町村の支援のもとで検診を受けることができます。厚生労働省が各市町村に働きかけて推進している検査項目は次の通りです。

  • 胃がん(問診、胃部エックス線検査)
  • 子宮頸がん(問診、視診、細胞診)
  • 肺がん(問診、胸部エックス線検査、咳痰細胞診)
  • 乳がん(問診、視診、触診、乳房エックス線検査)
  • 大腸がん(問診、便潜血検査)

こうした検診を有効に活用することで、がんの早期発見に努めることができます。

検診は、人間ドックでも受診することができます。あまり検診を受けたことがないという方は、ぜひ一度受診してみてください。各種がん検診の予約は、こちらからも行うことができます(人間ドックのここカラダのサイトが開きます)。

まとめ

腫瘍の中でも悪性腫瘍のことを「がん」と呼びます。悪性腫瘍には主に癌と肉腫とがあります。
また、前がん病変という、現時点ではがんではないものの、将来がんに発展する可能性があるものもあります。

前がん病変の段階で発見し、適切に治療を進めることでがんを未然に防ぐことができます。がん治療の流れについては、「がんだと言われたら…知っておきたい治療の流れ」にまとめておりますので、こちらをご参照ください。