様々な疫学調査によると、日本人の3人に1人は高血圧である、といわれています(ファイザー|生活習慣病オンラインより)。高血圧自体には自覚症状がないので軽く見てしまう人が多くいますが、血管に負担がかかることで、動脈硬化による閉塞や出血などがおきやすくなります。特に、脳血管に閉塞や出血が生じると重篤な後遺症を残す可能性があるため注意が必要です。今回は、脳の出血の中でも判別の難しいことがある小脳出血について詳しく説明します。

目次

小脳出血とは

「小脳出血」を説明する前に、まず脳内出血について説明します。

脳内出血とは脳の中で血管が破れて血液が出てきてしまう状態のことです。漏れ出た血液は固まり、脳を圧迫します。

脳内出血において、最も多い原因は高血圧です東海大学医学部脳神経外科より)。高血圧になると、脳の奥に栄養を送る細い血管に負荷がかかり動脈硬化になるからです。硬くなった動脈部分に、高血圧によって勢いのついた血液が流れ込み、血管が耐え切れなくなり破れてしまいます。

他の原因として、生まれつき血管の弱い部分をもつ人、血管の奇形の人(脳動静脈奇形海綿状血管奇形)、弱い血管が作られてしまう病気の人(もやもや病)や、血液が固まりにくくなる抗血小板剤や抗凝固剤を飲んでいる人は、脳内出血をおこしやすくなります。

脳内出血のうち、出血した部位が小脳の場合を「小脳出血」とよびます。小脳出血は死亡率が17~27%と高く、少量の出血でも死に至ることがあります(脳卒中J-STAGE 早期公開2016年12月27日より)。

小脳出血の症状

カルテに記入する医師

上記したような生命を脅かすほどの重症小脳出血は、突然の意識低下、昏睡で発症することがしばしばです。その他、小脳出血の特徴的な症状として、下記があります。

  1. 突然の激しい頭痛
  2. 嘔吐
  3. めまい
  4. 麻痺のない起立・歩行障害
  5. 共同偏視(両方の眼が左右のどちらか一方を向いている状態)

激しい頭痛と嘔吐

突然の激しい頭痛」は脳内出血の特徴です。頭蓋骨という閉ざされた空間の中で出血がおこると、脳の中の圧力があがって激しい頭痛・嘔吐が起こることがあります。

めまい

大脳など脳の血管が障害されても、多くの場合めまいはおこりません。しかし、小脳出血では、突然のめまいを自覚することが多いです。

小脳出血によるめまいは様々ですが、30%は回転性のグルグル回るようなめまいで生じると言われています(徳島大学医学部|脳血管障害によるめまいより)。

麻痺のない起立・歩行障害

小脳出血の特徴の一つとして、はっきりとした麻痺が出ないという傾向があります。しかし、小脳は運動を司る部分なので、いつものように歩けない、立つことができないなどの運動障害が現れます。

健側の共同偏視

共同偏視とは両目が同時に左右どちらかに寄る状態をいいます。

小脳が障害されると、傷害された方向へ目を動かせなくなるため、健康な側(健側)へ目が寄るといわれています。

健側への共同偏視は小脳出血の特徴といえます。

まとめ

軽症の小脳出血は頭痛、めまい、嘔吐が主な症状で四肢麻痺が出にくいため、三半規管の障害と鑑別しにくいことがあります。しかしながら、小脳出血を含む脳内出血は一刻を争う病気ですので、「こんなことで救急車を呼んでよいのだろうか」とためらわず、すぐに対処しましょう。そして、まずは小脳出血がおこらないように血圧に十分注意することが大切です。