「肩こり」は、ほとんどの人が経験した事のある症状ではないでしょうか。
日本で「肩こり」を訴える方は、男性では腰痛に次いで2番目に多く、女性では1番というデータがあります(厚生労働省より)。このように、国民病と言える「肩こり」ですが、どのようなメカニズムで起こっているのでしょうか? またその原因は何なのでしょうか?

ここでは「肩こり」について説明していきます。

目次

肩こりとは?

「肩こり」は身近な症状の1つですが、実は、明確な定義はありません
人それぞれが「こり」「張り」「重だるさ」「こわばり」「つっぱり感」「痛み」「違和感」などを表現している言葉なのです。肩の症状とともに、頭痛や吐き気を伴うこともあります。

不思議なことに、欧米では日本で言う「肩こり」と一致する症状名はありません。「肩こり」の概念自体がなく、日本独特の症状名です。

肩こりが起こるメカニズム

「肩こり」に一番関係する筋肉は、首の後ろから肩〜背中にかけての筋肉で僧帽筋(そうぼうきん)と呼ばれている筋肉です。僧帽筋より深い位置には肩甲挙筋や頭・頚板状などがあり、これらの筋肉が重さ5〜6キロの頭を支えています。重たい頭を支え、腕を動かしたりする際にも使われるため、肩の筋肉は常に緊張しているのです。

筋肉は緊張し疲れることで硬くなります。硬くなると筋肉内を通っている血管を圧迫して血液の循環が悪くなります。血流が減り、筋肉に充分な栄養がいきわたらなくなると筋肉疲労がたまります。筋肉疲労がたまることで、ますます筋肉が硬くなり、「肩こり」を起こします。筋肉が硬くなり末梢神経を圧迫すると、しびれや痛みが起こることがあります。

肩こりの原因3つ

では、どうして筋肉疲労がたまり、血行不良や抹消神経障害が起こるのでしょうか。
「肩こり」の原因は大きく下記の3つに分類する事ができます。

1.日常生活で受ける負担

  • 姿勢の悪さ、長時間の同姿勢
  • 運動不足
  • 冷え
  • なで肩・ストレートネック
  • 精神的なストレス

「肩こり」を訴える患者さんの大多数は、姿勢やストレスといった日常生活に関わることが原因となっています。姿勢の悪さや運動不足は、典型的な「肩こり」の原因となります。特にデスクワークの方は、同じ姿勢で作業をしたり、パソコンの画面を凝視したりする事により疲れがたまりやすくなっています。

最近では、スマートフォンの長時間操作によることで、若年から中高年の多くの方に「肩こり」が見られています(スマホ肩・スマホ首)。

その他、精神的なストレスも「肩こり」の原因になる事があります。精神的なストレス受けると、交感神経が優位となり、特に首から肩にかけての筋肉が緊張し、「肩こり」が起こります。

また、冷房による冷えやなで肩であることも「肩こり」の原因になります。

2.整形外科の疾患

  • 変形性頸椎症
  • 頸椎椎間板ヘルニア
  • 頚肩腕症候群
  • 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)

整形外科疾患が原因となり、随伴症状として「肩こり」が起こっている場合があります。
首には頸椎(けいつい)と呼ばれる骨があり、筋肉と共に頭を支えています。この頸椎に変形があったり、頸椎と頸椎の間でクッションの役割をする椎間板に変形が起こったりする事で、変形性頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアになります。首まわりに痛みやしびれが起こり、「肩こり」の症状が起こります。
その他、頚肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)や肩関節周囲炎なども「肩こり」を伴うことがあります。

3.その他の疾患

上記のように、整形外科領域の疾患以外でも「肩こり」を伴う疾患があり、注意が必要です。意外かもしれませんが、高血圧や狭心症など循環器系の疾患でも「肩こり」の症状が見られることがあります。

まとめ

「肩こり」は多くの日本人が症状を訴え、「肩こり」のために病院を受診し、治療を受けている患者さんは少なくありません。原因は姿勢やストレス等、日常生活に関わる事が多いですが、中には重大な病気が原因で「肩こり」が起こっている場合があります。

たかが「肩こり」と放置せず、日常生活に支障が出ている場合や、他に気になる症状を併せ持っている場合は、整形外科か、お近くの医療機関を訪れ医師に相談してみましょう