基本的に、妊娠したら飛行機へは乗らないように指導されます。どうしても必要性があって妊娠中に飛行機に乗る場合、週数によっては、医師の診断書が必要だったり、飛行機の搭乗に医師の同伴が求められたりすることをご存知でしょうか?
ご存じない場合、里帰り出産などで、飛行機を利用される際に直前になって慌てることになりかねません。
ここでは、妊婦さんが飛行機に乗ることによる影響や、出産予定日の何日前なら搭乗が可能か、診断書や医師の同伴が必要なのかなどについてお話ししたいと思います。

目次

妊娠中の飛行機は危険?

飛行機内の環境は、地上にいる時と比べて多くのストレスがかかる特殊な環境であると言えます。飛行機内の環境の特徴は下記が挙げられます。

気圧が低い

飛行機は約7,000~13,000メートルの高度を飛行しており、地上より気圧が低い状態になっています。
飛行機内は与圧装置によって、外よりは気圧が地上に近いように設定されていますが、それでも約1,500~2,400メートルの高度の気圧までしか与圧できないため、気圧の低下に伴う気体の膨張作用によってからだに悪影響を及ぼす場合があります。

湿度が低い

機内の温度は空調で管理されていますが、加湿はされないため、湿度が10~20%と非常に低く、乾燥した状態となっています。
さらに、機内の空気は50%がフィルターを通して再循環していますが、ウイルスは微小なためフィルターをすり抜けることができるため、乾燥した空気がウイルスの拡散性を高め、ウイルス感染が拡がりやすい環境となっています。

加速や着陸による負荷がかかる

飛行機の離着陸時の加速度負荷、飛行中の気流による振動などによって、からだにストレスがかかる環境となっています。ガタガタ揺れる振動や、ジェットコースターに乗った時のような浮遊感がある程度連続して起こるため、健康な人でも気分が悪くなる場合があります。

上記のような特殊な環境であるため、デリケートな妊娠中のからだや赤ちゃんのことを考えると、安定期前や出産が近い時期には搭乗を見合わせたほうが安全と言えます。

何週なら搭乗OK?

妊婦さんと飛行機
妊娠中に「飛行機に乗ってい良い期間」はありません。やむ終えない事情でどうしても飛行機を利用しなければいけない場合、比較的適している週数は、妊娠12週~28週までとされています。
ただ、下記の状態に当てはまる場合には、妊婦さん自身や赤ちゃんに危険が及ぶ恐れがあるため、飛行機の利用は見合わせるべきです。

飛行機の利用を見合わせるべき時

  • 性器出血
  • 下腹部痛
  • ひどいつわり
  • 切迫流産
  • 切迫早産
  • 子宮外妊娠(可能性が否定しきれない場合も含めて)
  • 習慣性流産
  • 前置胎盤
  • 頸管無力症
  • 妊娠高血圧症候群
  • ひどい貧血(ヘモグロビン値が5g/dl以下)
  • 血栓症の既往

搭乗の条件が設定されている妊娠時期

妊娠中の飛行機利用について、妊娠時期によって、必要な条件を満たさないと搭乗できない場合があります。

出産予定日から28日以内の妊婦さん

飛行機利用日の7日以内に作成された医師の診断書(JALやANAなど各航空会社のホームページで形式をダウンロードできます)が必要になります。

国際線なら出産予定日から14日以内、国内線なら出産予定日から7日以内の妊婦さん

飛行機の搭乗に産科医の同伴が必要になります。

また、上記の場合以外にも、各航空会社によって、双子以上の妊娠の場合や早産経験のある場合に診断書が必要だったり、2歳未満の幼児の同伴人数に制限があったりと、細かな規約がある場合があります。
そのため、必ず利用する航空会社のサイトを見て、必要な書類や利用条件を確認しておきましょう。

飛行機搭乗中の注意事項

妊娠中の飛行機搭乗の際には、下記の注意事項を守りましょう。

炭酸ガス飲料は避ける

気圧の低下に伴い、腸管内のガスが膨張しやすく、気分不快や嘔吐が助長されやすい状態です。
搭乗前や搭乗中は、炭酸ガスの入っていない飲み物を飲みましょう。

シートベルトは腰の低い位置に着用する

車のシートベルトと同じで、急な圧迫がお腹にかからないように、お腹は避けて腰骨のできるだけ低い位置で締めるようにしましょう。
延長用のベルトもある場合がありますので、無理やりきつい状態で締めないように注意しましょう。

適度に足を動かす

妊娠中は足の血流が悪くなり、血液もある程度固まりやすい状態になっているため、エコノミークラス症候群が発症しやすい状態と言えます。妊娠していない人が飛行機に乗ると血栓症のリスクが約2倍になります。妊娠しただけで血栓症のリスクは6倍になります。つまり、妊娠中に飛行機に乗ると血栓症のリスクは12倍になるのです。
飛行機内では足を動かしたり、1~2時間ごとに通路を歩行したりして、いつも以上に水分補給をしっかり行うようにしましょう。

まとめ

妊娠中の飛行機利用を考えている場合には、週数や時期に関わらず、必ずかかりつけの産婦人科に相談するようにしましょう。全く妊娠経過に問題がない場合でも「乗ってもいいですよ」という太鼓判はもらえません。
逆に「乗ってはいけません」と言われた時には、絶対にダメであるということを認識しておきましょう。

飛行機内でもしトラブルがあった場合、対処できる医師や看護師が乗っている確率は非常に低いですし、適切な対応ができるだけの医療設備や器具があるわけではないので、最寄りの空港に緊急着陸することにも繋がりかねません。
他の搭乗者へ多大な迷惑がかかるだけでなく、自宅からも実家からも遠く離れた病院での入院になる可能性があるため、妊娠中の飛行機搭乗は必要最小限に抑えるのが安全です。

国際線でのトラブルですと、海外で治療が必要になった場合、医療費も高額になる恐れがあります
里帰りの必要がある場合には、出産予定日に近いと上記のように診断書や産科医の同伴が必要になってくるため、臨月に入る前に早めに移動できるよう準備しておきましょう。