前庭神経炎は、熱を出した後や風邪を引いた後に激しいめまいが起こります。
めまいの程度が強いと起き上がることもできず、救急車で搬送されて入院治療を行うことも少なくありません。めまい自体は数日間でおさまりますが、その後もふらつき感が残ります。前庭神経炎とはどのような病気であるのか、症状や原因、治療法についてみていきましょう。

目次

前庭神経炎の症状

内耳神経のひとつである前庭神経に炎症が起こる病気です。前庭神経炎では、突然ぐるぐると目が回るような激しい回転性のめまいがみられます。食事をすることや歩くことができないほどの強い症状のこともあり、救急搬送されて入院治療を行う方も少なくありません。

発熱や風邪などの感染症のあとに見られることがあり、30~50代によくみられます
男女差はやや男性に多く見られるとされています。

めまいは数日間続き、徐々にめまいの症状は軽くなってきますが、歩くときや姿勢を変えるときのふらつきは数か月間残ることもあります。

わかりやすくいえば、左右に一つずつある内耳の片方が機能しなくなる病気ですので、例えれば、二つのエンジンのあるモーターボートの一つが故障した場合にボートが直進できなくなると同じです。このために、まっすぐ歩けない症状がおこり、欠落した機能を補うために、平衡リハビリが必要となり数カ月かかることがあるのです。

一般的には大きなめまいの症状は1回であり、何回も繰り返すことは少ないと言われています。しかしなかには、数年ごとにめまいを繰り返すケースもあります。

吐き気や嘔吐を伴うことがありますが、メニエール病のように難聴耳鳴り耳閉塞感(耳が詰まった感じ)を伴うことはありません。めまい時には眼球が無意識に揺れ動く眼振がみられます。

前庭神経炎の原因

発熱や鼻やのどの感染症の症状が見られた後にめまいが起こりやすいことから、ウイルス感染が原因であることが考えられていますが、はっきりとはわかっていません。

障害が起こる部位も前庭神経に限られず、内耳の前庭(半規管や耳石器)の障害によっておこっていることもあります。

前庭神経炎の治療法

起き上がることもできないほどの強いめまいの症状があり、眼振が認められる場合には入院治療で安静を保ちます
めまいの症状の軽減を図るために炭酸水素ナトリウム(メイロン)の投与や、吐き気や嘔吐を軽減する薬の投与が行われるほか、水分摂取が行えない場合には水分を補給する点滴が行われます。
神経の炎症を抑える目的でステロイド剤が投与されることもあります。

めまいの症状が軽くなって来たら、ベッドから起き上がってふらつき感を軽減し、日常生活が行えるようにリハビリテーションを行います。

眼球運動や頭や首を動かす運動、立位バランスや歩行訓練、階段昇降や動作訓練、協調訓練(身体の動きと眼球の動きが伴って行えること)などを行い、動作時・歩行時の安定性や動作スピード、持久性の向上を促していきます。

まとめ

前庭神経炎は耳の障害で起こるめまいなので、今すぐ命に関わる病気ではありません。まずは耳鼻科を受診して適切な診断と治療を受けましょう。