腎臓病と診断されると、基本的には薬の処方と食事療法が必要になります。

腎臓の機能が一度低下してしまうと回復するのは難しいといわれており、早い段階で発見をして治療を開始し病気の進行を遅らせる必要があります。食事療法は腎臓病の進行を遅らせるのにとても重要な役割をします。

目次

慢性腎臓病は糸球体濾過量(しきゅうたいろかりょう:GFR)で評価される腎機能障害の程度によって

  • ステージG1 腎機能正常または高値:GFR 90以上
  • ステージG2 腎機能正常または軽度低下:GFR 60~89
  • ステージG3 腎機能軽度~高度低下:GFR 30~59
  • ステージG4 高度低下:GFR 15~29
  • ステージG5 末期腎不全:GFR 15未満

に病期分類され、それぞれの病期によって食事制限内容が変わってきます。ここでは、その腎臓病の食事療法について説明します。

摂取カロリーの設定

慢性腎臓病では適切なエネルギー摂取が重要です。糖尿病の合併で血糖が高い場合や肥満のある場合はカロリー制限が必要です(とくにステージG1-G3)。一方、タンパク制限下ではカロリー不足になる危険性があります。カロリー不足になると、摂取したタンパク質が体のタンパク合成にまわされず、エネルギーとして燃やされてしまいます。

タンパク制限が必要な場合は、以下のような工夫をしてカロリーを摂取します。

  • タンパク質があまり含まれていない砂糖や油を取り入れて、摂取カロリーを上げましょう。
  • 洋菓子のケーキやクッキーは甘くてカロリーも高いですが、卵や乳製品などのタンパク質も含まれていますので摂りすぎには気をつけましょう。
  • サラダ油やマヨネーズ、ドレッシングなどは少量で高カロリーを摂取できます。

摂取カロリーの計算は運動量によって変わりますが、標準体重1kgあたり25~35kcalが目安です。ただし、 肥満のある方は、肥満は腎機能障害の進行の一因となるため、3ヶ月で現体重の5%減を目指しカロリー摂取量を減らします。また、糖尿病のある方は標準体重1kgあたり25~30kcalが目安となります。

計算例

身長160cmの人の場合

標準体重=1.6(m)×1.6(m)×22=56.3(kg)

56.3(kg)×35(kcal)=1970(kcal)

タンパク質の制限

食事からタンパク質を摂取すると体内で代謝され、不要なものは老廃物となり血液中に溜まります。この血液は腎臓で濾過され、尿中に排泄される仕組みとなっています。このときに老廃物が多いほど腎臓に負担が掛かるため、ステージG3-G5の腎機能軽度~高度低下、末期の腎臓病の人はタンパク質の摂取量を減らす必要があります。

しかし、タンパク質は体にとっては必要な栄養素ですので、全く摂らないわけにはいきません。適量の摂取を心掛けてコントロールする必要があります。

  • 炭水化物と思っていてもご飯やパン、麺類にもタンパク質が含まれていますので気を付けましょう。
  • 制限が厳しくなると食事管理が難しいので、減タンパク質食品を利用するのも良いでしょう。

ステージG3-G5ではタンパク質は通常0.6~0.8gの範囲内で設定します。

計算例

160cmの人の場合:標準体重56.3kg

56.3(kg)×0.6(g)=33.8g

塩分の制限

腎疾患の食事療法でもっとも重要で、食塩を過剰に摂取すると腎臓に大きな負担をもたらします。また、腎機能障害が進行すると腎臓から体外に食塩の成分であるナトリウムを排泄する機能が低下し、体内に貯留するようになってしまいます。その結果体内の水分量が上昇して、血圧の上昇や浮腫などを引き起こします。高血圧のある方は特に気を付けましょう。

1日の塩分摂取量の目安は6g以下です。例えばカップラーメンは平均的に1食あたり5~6gなので、ひとつ食べてしまえば他に塩分を摂取するのは難しいということになってしまいます。ステージG1-G2では高血圧があれば減塩6g/日未満、3g/日以上の制限、ステージG3以上の腎障害であれば高血圧の有無に関わらず同様な制限となります。

カリウムの制限

腎臓 食事療法

全ての方にではありませんが、ステージG4-G5などで血液中のカリウム量が高い場合はカリウム制限の指示が出る場合があります。カリウムは生果物や生野菜に多いため、缶詰の果物を利用したり、野菜は一度茹でこぼしてから摂取したりと工夫が必要になります。

水分の制限

腎機能の低下により水分の排出ができなくなり、浮腫がひどい場合や尿量が減少している場合には水分を制限する必要があります。前日の尿量や不感蒸泄量(人が感じることなく蒸散される水分)から計算されます。

まとめ

腎臓病の食事療法といっても、病態や進行具合によって個別に指示が出されることがほとんどです。医学の進歩によって薬などで腎臓病の進行を遅らせることができるようになってきてはいますが、食事療法の大切さは変わりません。医師からの摂取栄養量の指示に従って、何をどのくらい摂ったら良いかという献立を立てられるように勉強していきましょう。