乳幼児がかかることが多いRSウイルス感染症。夏から秋冬にかけて流行のピークを迎えますが、1年中みられる病気です国立感染症研究所によれば1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ全員の子供が感染するといいます。

RSウイルス感染症には特効薬がないため、小さなお子さんのいる家庭ではしっかりと予防を行うことが必要です。しかし2015年の調査では、保育施設に2歳以下の子供を預けている両親のうち、RSウイルス感染症について詳しく知らない両親が7割にのぼりました(アッヴィより)。

大切なお子さんを守るためにも、RSウイルス感染症の流行状況や予防方法をきちんと理解しましょう。

目次

RSウイルス感染症の流行状況

RSウイルス感染症の患者数

上記のグラフは、2013年~2017年のRSウイルス感染症の報告数を示しています(クリックまたはタップで拡大してご覧ください)。

例年、33週(8月下旬)以降に患者数が伸び始め、39週(10月上旬)以降にピークを迎えています。2017年はかなり早い時期から流行が始まっており、35~7週(9月後半)に最多となりました。

従来、RSウイルス感染症は秋から冬にかけて報告が多くなり、夏にはそれほど見られない病気でした。しかし2011年以降、7月頃から報告数が増えるようになってきたといいます(厚生労働省より)。そのため、夏から秋にかけてピークとなりますが、年間を通して注意が必要な病気といえるでしょう。

こんな症状が出たらRSウイルス感染症かも

双子の赤ちゃん

RSウイルスに感染した場合、2~8日の潜伏期間(症状が出ない期間)を経て、はじめのうちは発熱・鼻汁などの症状が数日間起こります。

多くの場合は軽症で済みますが、重症化するとがひどくなるゼーゼーという音(喘鳴)が出る呼吸が早い、全身を使った呼吸をするなどといった呼吸に関する症状がみられることもあり、ひどい時には細気管支炎肺炎につながることもあります。乳幼児(特に3ヶ月以内の乳児)の場合は特に、重症化するリスクが高いです。

この他、合併症として無呼吸発作急性脳症が起こる場合もあります。無呼吸発作は突然死に繋がることもあるため、注意を配る必要があります。

こんなお子さんは特に要注意!

下記に当てはまる場合、重症化したり合併症を起こしたりするリスクが高いと考えられます。予防には十分に気を配ってください。

  • 生後3ヶ月未満の乳児
  • 未熟児
  • 心臓や肺に基礎疾患のある2歳以下の乳幼児
  • 神経疾患、筋疾患、免疫不全などの基礎疾患のある乳幼児

大人と子供で症状は違う?

RSウイルスは、おたふく風邪などとは異なり、一度感染したからといってかからなくなる病気ではありません。子供の頃に感染した人が、大人になって再度感染することも多いです。

ただ、3歳以上の子供や大人が感染した場合、重症になることは少なく、その多くは単なる風邪としてすみますが、障害をお持ちの方などは悪化する傾向があります。

RSウイルスの予防法は?!

日常生活でのRSウイルスの予防法-図解

RSウイルスは非常に感染力が強く、2歳になるまでにほぼ100%の子供がRSウイルスに感染するといわれています。しかし、生後間もないうちに感染すると重症化することが多いため、感染を避けるための注意が欠かせません。さらに、RSウイルスには有効なワクチンがないため、日常生活での予防が重要となります。

RSウイルスは、接触感染(ウイルスがついている手や物を触る・舐めることでの感染)・飛沫感染(感染者の咳やくしゃみなどのしぶきを吸い込むことでの感染)によって広がります。ここでは、日常生活で気をつけられるポイントを3つ紹介します。

1.こまめに手洗いをする

接触感染を防ぐために最も有効なのは手洗いです。

手についたウイルスをしっかり落とすためには、1分間かけて念入りに手を洗うことが必要です。手の表面を水でさっと流すだけでなく、石鹸を使って手首から爪の間までしっかりと洗いましょう。外から帰った後や食事の前、トイレの後など、こまめに手洗いをしてください。

効果的な手洗いについては、「風邪・感染症を予防しよう!正しい手洗い・うがいの方法をご存知ですか?」で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。

2.呼吸器症状がある人との接触を防ぐ

RSウイルス感染症に感染するのは子供だけではありません。しかし、大人が再感染した場合は、風邪や気管支炎のような軽い症状であることが大半です。つまり、自分がRSウイルス感染症であることに気付いていない年長児や大人が少なくないのです。

そのため、鼻水咳や喘鳴などの風邪症状がみられる年長児や大人は、できるだけ新生児・乳幼児との接触を避けるようにしてください。

日常的に乳幼児と接する人は、呼吸器症状がみられたらマスクをするなど、飛沫感染を防ぐための工夫をしましょう。

3.おもちゃの消毒をする

子供は、様々なものを口に入れることがありますよね。しかし、これは間接的な接触感染の原因となる可能性があるのです。

対策として、子供たちが日常的に触れるおもちゃやドアノブなどは、こまめに消毒を行ってください。特に、何人かの子供で共有している物は要注意です。

RSウイルスは様々な消毒剤への抵抗性の低い、弱いウイルスです。消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどが有効とされています。

アッヴィが行った調査によると、「子供に病気の疑いがあっても保育施設を利用したことがある」と答えた両親は約6割もいるといいます。大事なお子さんの健康を守るためにも、特に保育園や幼稚園では共用物の消毒をしっかり行うようにしてください。

最後に

RSウイルス感染症には特効薬がないため、治療は対症療法(症状をやわらげる治療)が基本となります。ですから、感染してからのことを考えるより、感染する前にしっかりと予防することの方が大切なのです。

今回紹介した3つの予防法を参考に、お子さんの健康をしっかり守ってあげてくださいね。